中国思想と宗教の奔流 (全集 中国の歴史)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062740579

作品紹介・あらすじ

大唐帝国を揺るがせた安史の乱から二〇〇年、五代乱離のあとを承けて宋朝建国。文治主義をとったことの功罪は、いかなるものだったか。北方の異民族王朝に対し絶えず軍事的劣勢にありながらも、後世まで規範となる政治・社会・経済システムを作り上げ、文化の華がひときわ咲き誇った宋朝三〇〇年の歴史を通観する。

感想・レビュー・書評

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  • 来年から、慣れ親しんだ中国古代からいきなり明清時代という「近世」に飛ばされることになったため急遽読み出した本。…唐宋変革以後のことなんて正直わかんないです。

     後半になればなるほど、筆がのってきたのか、文体がお茶目になってきておもしろくなる。

    「朱熹とはつくづく嫌なやつである」とか「桑の葉エキスを毎晩欠かさずのんでいる」とか。文章が普通に上手い人だな〜と思う。しかしその一方なかなか内容が理解できない…。文章が上手い上に簡略だからかなあ。

     

     ただ、時代が唐代までとガラリと違うのははっきり分かった。建国までは、それでもなんとなく分かるのだが、平和な世になると全然違う。

     はっきり言って、政治で人が死なないのだ。基本的に中国の皇帝は、気分によって臣下を殺しまくるし、もちろんいきなりクーデターで違う一派皆殺しとかがよくある。宋では、それがない。

     「失脚した」「郷里にひっこんだ」と書かれて後で、また復活してくる官僚がいっぱいいる。宋以前に頻出する「死を賜った」とか「誅殺された」という表現が全くない。これが、宋の文人政治なのか…とほとほと感心した。限りなく皇帝がシステム化されているようにも思う。まさに「君臨すれども統治せず」の状態。とても、皇帝専制支配の国家とは思えない。宋代って本当に不思議な時代だ。

     これが科挙制度と、儒教的文人支配の完成形なのだろう。しかし中国は、漢文化のみで形成されることが本質的に無理な地形なのだ。これが、閉じられた場所(イギリスなどの島国)では上手くいくかもしれないが。

     政治力、すなわち「文」と両輪となって中国の歴史を動かしてきたのは、紛れもなく「武」、軍事力である。

     宋は、結果として、金・モンゴルという軍事力の前に敗退する。けれど、文・武、華・夷それらが全て解け合っているのが、中国というか、あの大陸なのである。

  • この巻では、日本では平安時代後半から鎌倉時代に中国で繁栄していた「宋」」朝の解説です。

  • 宋というとても面白い時代も、扱う人の筆力によってここまでつまらなくなるという事を十分に見せつけてくれるとても残念な読書経験でした
    数少ない引き出しを持つ著者の本領は後半に十分に発揮されて、嘆息とともに読み終えましたが、 編集者氏の後記を読みたいところです

  • 著者は思想畑の方で、タイトルもそれにちなんだ物となっていますが、思想や宗教の割合が特別多いわけではなく、乖離する部分も。小話を挟む際に、著者の文体が大きく変わるところが気になりましたが、宋代の概説書としては良いです。

  • 思想史や文化史の面で非常に面白くてためになる本です。唐末からはじめ、五代をへて、澶淵の盟、濮議、北宋朝廷の天人相関説をつかった政敵の追い落とし、王安石による『孟子』顕彰、さまざまな新法、朱子学、三教交渉、淫祠邪教の発見、禅宗、天地の発見、宗族形成運動、印刷、喫茶、金石學、鎮市の勃興などなど。歴史の面白さがつまっています。

  • 展示期間終了後の配架場所は、開架図書(3階) 請求記号 222.01//C62//7

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著者プロフィール

1962年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科教授。中国思想史。『儒教の歴史』(山川出版社、2017年)、『近代日本の陽明学』(講談社、2006年)、『宋学の形成と展開』(創文社、1999年)、『中国近世における礼の言説』(東京大学出版会、1996年)、『中国思想史』(共著、東京大学出版会、2007年)、ほか。

「2021年 『東アジアの尊厳概念』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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