寝台特急「北斗星」殺人事件 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750875

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  • 昭和の終わりに登場した寝台特急『北斗星』。まだ携帯電話も無かった時代の話。寝台特急の臨場感は良いが、鉄道トリックが無くて残念。

  • 1988(昭和63)年、念願の青函トンネル開通とともに誕生した寝台特急「北斗星」。前年に国鉄が消滅したばかりの年で、新生JRを印象付ける豪華列車として話題になりました。
    一人用個室ロイヤル、二人用個室ツインデラックスなど、過去に無い居住性を誇る客室が憧れの的となり、たちまちチケット入手難の人気列車になつたのであります。

    その「北斗星」にも、遂に来るときが来たやうです。来年3月のダイヤ改正でいよいよ姿を消すとの報道は、各方面で話題となつてゐます。「トワイライト」同様、乗車率が下つての撤退ではないのがまた口惜しい。車両の老朽化とか北海道新幹線の工事の影響とか述べてゐますが、それは後付の理由でありませう。JR各社の思惑は別のところにある。
    削減される一方の夜行列車を見ると、かつての路面電車を連想します。マスコミのネガティブキャンペーンをも利用し、完全に時代遅れの代物扱ひして世論を形作つたのであります。

    同様に、現在のマスコミもブルトレを始めとする夜行列車の廃止を惜別するふりをしながら、「この高速鉄道時代にあつて、その役割を終へた」などと過去の遺物扱ひするのであります。
    さうぢやない。夜行列車が不要になる時代は、恐らくこれからも来ない。必要とされる列車を走らせないだけの話であります。懐古趣味で言ふのではありません。その便利さ、快適さを知らない人が多すぎるために、皆気付かないのであります。

    などとひとり力瘤を入れても詮無いので、西村京太郎氏の話を。彼は、自らの作品がブレイクしたのは「ブルトレのおかげ」と述懐します。そのブルトレの集大成となり、結果的に最後のブルトレとなつた「北斗星」を題材にしたミステリが『寝台特急「北斗星」殺人事件』であります。「寝台特急「北斗星」」の部分を「ロイヤルトレイン」と読ませるやうです。ふふん。

    「北斗星」を爆破するとの予告電話が入ります。嘘ではない証拠として、4号車の個室でまづ爆発が! 犯人の要求は一億円。グループの一味はあつさり逮捕されますが、こいつが仲間に中止の連絡をしない限り爆破は予告通り実行されるといふが、自衛隊の専門家が車内をくまなく探しても爆発物は発見できなかつたことから、大勢は「苦し紛れの嘘」と見る。しかし我らが十津川警部だけは違つた...

    十津川警部シリーズの中でも秀逸な作品の部類に入ると申せませう。万人向けの、厭味のない文章であります。
    ブルトレはもうミステリの中でしか出逢へぬのかと思ふと、一層いとほしいですな。
    かういふ話題ですと、あまり冷静でゐられないわたくし。ご無礼しました。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-507.html

  • 列車ミステリーの王道みたいな感じ。
    車両の爆破をめぐっての攻防が良い。

    このあたりの時期の作品も面白い。
    携帯電話ではなく自動車電話なあたり時代を感じる。

    寝台車両はいつか乗ってみたいなぁ。

  • 寝台特急にしかけた爆発物。
    十津川と犯人のかけひきが続く。

    予想を少しは覆されるものの、
    最終的には十津川の導く方向へと流れて行く。

    いくつかの犠牲のもと、複雑な仕掛けが解き明かされて行く。
    西村京太郎らしい人間描写が中心になっている。

  • 私が今更紹介するまでもないほど、有名作家の西村京太郎氏。
    その作品数の多さにかけては、以前紹介させていただいた赤川次郎氏に匹敵&唯一肩を並べられる作家です。

    「トラベルミステリー=西村京太郎」
    そう、すっかり定着しているほど、列車絡みのミステリー著作が多いことでも知られています。
    作品の特徴として本屋よりキオスクなどの駅売りが多く、ベストセラーとしてカウントされにくいため「影のベストセラー」とも呼ばれているそうです。

    私も以前、いくつか読み漁りましたが、何を読んだのか覚えていない・・・そのくらい、作品数が多い!
    今回も、どの作品を紹介してよいのやら、かなり悩みました。

    氏の「トラベルミステリー」への方向性を示した「寝台特急殺人事件」を読もうかな・・・と思ったけど、手に入らなかったため(1978年刊行)、同じ寝台特急モノの本書(これも初版は20年前)を読んでみました。

    豪華寝台列車「北斗星5号」に爆破予告!犯人は1億円をJR東日本に要求。
    開通してまもない青函トンネル内で爆発されれば、200人の乗客の生命が奪われ、トンネルや豪華列車に多大な被害が起こってしまう。
    警視庁十津川警部と犯人の攻防が始まる・・・!

    十津川警部&亀井刑事、他おなじみのキャラクターが出てくるので、安心して?読むことができます。
    豪華寝台列車の爆破という派手なシチュエーション、犯行予告の1億円、上野〜札幌&中央高速道という長距離の攻防、愛人の殺害、JR関係者のそれぞれの思惑、十津川警部と亀さんのやりとり・・・
    北斗星の時刻表や列車編成のイラストも挿入されており、大いなるパターンにむしろ喜んでしまう私♪
    十津川警部が丹念に犯人を追い詰める様子も純粋に楽しいですし、非常にエンタメ性に優れていると思います。

    本書は国鉄がJRとなって一年後の話です。
    ノベルスの発行日を見たら、昭和63年!翌年、平成ですからね〜(シミジミ)
    まだ、携帯電話もなく、自動車電話があるくらい。
    そのため、まだるっこしい部分もありますが、それもまた愛嬌ですね。

    豪華寝台列車は「北斗星」のみ、「カシオペア」も「トワイライトエクスプレス」も無かった時代。
    今では、「北斗星」の「5号」という列車はないようです・・・運行本数も減ってしまって寂しい限りです。
    でも、今でも私には「北斗星」はちょっと憧れの電車です。
    1回乗ったことがありますが、食堂車を使ったことが無いし。
    そのうち、ゆっくり乗ってみたいですね〜。

    この十津川警部シリーズ、いまも新刊が出続けています。
    最近では、アキバを舞台にした異色作もあります。その「十津川警部 アキバ戦争」の裏表紙には、おでん缶自販機の前に立っている著者近影が載っています。
    ストーリーは微妙ですが、詳しい著者年譜と全著作リストが巻末についているので、作品をチェックしたい方にはオススメです。

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著者プロフィール

一九三〇(昭和五)年、東京生れ。鉄道ミステリ、トラベルミステリの立役者で、二〇二二年に亡くなるまで六〇〇冊以上の書籍が刊行されている。オール讀物推理小説新人賞、江戸川乱歩賞、日本推理作家協会賞など、数多くの賞を受賞。

「2022年 『十津川警部と七枚の切符』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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