分冊文庫版 魍魎の匣(下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062751131

作品紹介・あらすじ

「あなたは、何でも善くご存じですのね-」。その女は京極堂に向かって、赤い唇だけで笑った。憑き物を落とすべき陰陽師さえ、科学者・美馬坂幸四郎の抱いたあまりに禍々しい夢を前にして、自分の封印した過去に直面させられる。そして訪れる破局…。第49回日本推理作家協会賞受賞の超絶ミステリ完結。

感想・レビュー・書評

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  • 生命と魍魎。
    パズルは完成された。

    ただ、完成図を見ても私には最適解が見出せなかった。

  • ・江戸川乱歩「押絵と旅する男」っぽい印象から、こんなに遠くまで連れてきてもらって、また押絵に戻してもらって、凄い旅だった。
    ・前半の百合描写にときめいたからこそ、後半、……。
    ・人形愛者ピグマリオニストとしては、正直たまらん……。みっしりと……。
    ・冴えない中年としても、たまらん読後感……。
    ・宗教家・霊能者・超能力者・占い師の境界、そしてペテン師の定義。ご講義拝聴賛嘆いたしました。

    • 土瓶さん
      たまりませんよね。
      みっしりと。
      「ほう」
      たまりませんよね。
      みっしりと。
      「ほう」
      2024/04/04
    • knkt09222さん
      土瓶さんへ
      「ほう」も凄い言葉ですね。
      いやー、何だか酷くうらやましくなってしまいます。
      土瓶さんへ
      「ほう」も凄い言葉ですね。
      いやー、何だか酷くうらやましくなってしまいます。
      2024/04/04
  • 【あらすじ】
    京極堂は寺田兵衛と対面し、久保が兵衛の息子であること、悲劇的な家族の歴史と久保の心の闇、そして御筥様誕生の経緯を明らかにする。久保は連続バラバラ殺人事件の犯人として手配されるが、その二日後切断された久保の四肢が発見される。そして美馬坂近代医学研究所に、京極堂、木場、榎木津、関口、そして陽子らが集結する。京極堂は魍魎を退治すると宣言し、一連の事件の真相を語り始める。陽子は美馬坂の娘であり、加菜子は柴田家の子ではなかった。美馬坂は、難病の妻を救えなかった経験から研究所を人間の臓器に変えた。頼子に突き落とされた加菜子は、研究所へ搬送された後ほとんどの臓器を摘出、四肢を切断され、人工臓器につながれた。しかし、生命を維持するための資金は底をついており、陽子はたまりかねて加菜子誘拐事件をねつ造する。それを須崎が利用し、加菜子の生死を不明にして柴田財閥の遺産を手に入れようとする。加菜子を愛していた雨宮は、須崎が運び出した箱詰めの加菜子と出会い、須崎を殺害して箱とともに出奔する。そして、偶然箱詰めの加菜子と出会った久保もそれに憑りつかれ、同じように箱詰めの少女を作ろうと試みるがうまくいかず、美馬坂を訪ねる。美馬坂と陽子は、研究のため箱詰めにされた久保とともに逃走を図るが、美馬坂は久保に噛み殺され、陽子は久保の首を絞めて殺害した。美馬坂と陽子は親子でありがなら愛し合っており、加菜子は二人の間の子であった。こうして、魍魎に惑わされた人々の偶然の繋がりによる一連の事件は終わりを告げた。

    【感想】
    ハコつながりで関連しているようにみえる一連の事件が、実は偶然の繋がりのみだったというところが興味深かった。「犯罪は通り物」という京極堂の言葉がゾクッとした。登場人物のキャラや、一番活躍しない関口の主観が主となっているところも面白かった。
    読了&あらすじ作成に数か月もかけてしまった。このシリーズは手が出しにくいな。

  • 京極夏彦の名作ミステリー『魍魎の匣』、分冊文庫版の下巻。

    「加奈子殺人未遂事件」、「加奈子失踪事件」、「連続バラバラ事件」―――同時進行で発生する不可解な事件たち。そして防ぐことの出来なかった新たな犠牲。「京極堂」こと中禅寺朗彦は、これ以上の犠牲者を出すことを阻止するため、事件の幕引きをするため、"魍魎"に惑わされた人々の心に憑いたモノをふるい落とすため、その腰を上げる―――。

    ついに明かされるおぞましい事件の全貌。"魍魎"に惑わされた人々の、偶然の繋がりによって引き起こされた一連の事件。それは、「偶偶そう云う状況が訪れて」しまった悲劇―――前作に引き続き、素晴らしい作品であった。

    (余談だが、2008年にInnocent Greyから発売された18禁ADVゲーム『殻ノ少女』、発売当時から本作『魍魎の匣』との類似性を指摘されていたのだが、予想以上にそのまんまだった。あまりにもそのまんまだったので、読みながら頭の中で映像化していると、全部『殻ノ少女』のキャラクターで再生されてしまっていた。)

  • 長い。長いし京極堂演説は難解だが、うぶめの夏で「ここは後々大事❗️」ということを学習していたので頑張って読んだ。それでも読み続けられるのはやはり面白いからである。上中下の分冊で読んだが、下は全て伏線回収と真相解明。ページを捲る手が止まらなかった。
    ストーリーは勿論のこと、個性豊かな登場人物が場面場面を盛り上げてくれる。
    榎木津がとても好き。御亀様と、猿と鳥が説明するでしょう、の台詞は笑った。

  • 読み物として秀逸。これぞエンターテイメント!ページを捲る手が止まらなかったのは久しぶり。京極夏彦を推理作家たらしめた百鬼夜行シリーズの、何故か2作目から手をつけてしまったわけだが、特に問題なく楽しめた。題材の印象が先行してしまっているのか、もしくは膨大なページ数のせいか、難解なイメージを持つ京極夏彦作品だが、「死ねばいいのに」「虚言少年」等と同じく読みやすく馴染みやすい文章。京極堂の演説は小難しくもあるけど、一般的にも許容範囲内だと思う。

    ミステリーとしては規格外。人が死んで謎解きがあるのだから大枠はミステリーだとしても、犯罪を追及する論理が非論理的(なにしろ魍魎だし、、、)。その一方で、追い詰める探偵役は冷徹なほどに現実的、理知的、論理的な人間(陰陽師とかいう胡散臭い奴であるにも関わらず)であるという混沌を内包しつつも、破綻することなく一個の読み物として昇華されている。これを可能にするのが、時に冗長にも感じられる京極堂の演説であり、各登場人物の細かい心理描写なのだろう。特に京極堂の演説は、ただの知識のひけらかしでは?作者の主張詰め込んだだけでは?と思うくらい尺取るしクドいんだけど、最後まで読んでしまえば、「論理」と「非論理」の同居を違和感なく受け入れられる状態に読者を引き上げるためには必要な過程であることが分かる。これぞ京極夏彦作品!なのだろうなと思った。

    突っ込みたいことは色々ある。関口の理解力のなさウザイなとか(読者視点の案内役なんでしょうがないけど曲がりなりにも文筆家、、、)、木場の行動を彼の歪んだ恋愛観に結びつけるのはちょっとこじつけっぽくない?とか、皆めっちゃ容易く他人の深淵から"あっち側"に引きずられるやん、そもそも京極堂はどういう立ち位置で関係者集めて演説ぶってんの?とか、加菜子ただのめちゃくちゃ薄幸の美少女だったなもっとキャラクター大事にしてあげて、、、結末もある程度予見できて意外性もないし、、、等々頭の片隅で私の冷静な部分が色々言ってたけど、まあエンターテイメントだしな!で解決。全体通して面白かったから良し。

    それよりも京極堂の演説内容が個人的に興味深かった。
    ・宗教者、霊能者、占い師、超能力の違いの考え方
    ・釈尊は占いを禁じている
    ・神道は元来民族宗教である
    ・オカルトの本来の意味と、その間口の広さ
    ・福来博士の実験と当時の世相
    ・節分の由来
    ・魍魎は鬼より古い
    ざっと挙げただけでもこれだけ。これらを読者に理解させる文章力と物語に過不足なく組み込む構成力、豊富な知識量には舌を巻く。純粋に知識として面白いから是非参考文献を読んでみたいです。

    小説は作者の主義主張を反映しやすいものではあるが、そこに作者の技術や思惑がある以上直接的な意見とは言い難い、という件が本作にあるが、「犯罪は、社会条件と環境条件と、通り物みたいな狂おしい瞬間の心の振幅で成立する」という京極堂の主張はそのまま作者の主張なのではないかと漠然と思う。この意見に懐疑的であった関口が終盤、見事に"通り物"に憑かれそうになる展開は、犯罪者と関口=我々一般読者に線引きなどなく、条件さえ整えば誰でも犯罪に手を染め得るのだという実感を与える仕掛けなのだろう。こんなにページ数も多くて大きな"匣"なのに、中身もみっしり詰められ隅々まで緻密に練り上げられている、とても楽しい読み物でした。今度はちゃんと順番に読む。

  • なんとも贅沢なほぼ一冊謎解き。作品が長いから謎解きもてんこ盛りだねぇ(╹◡╹)う、嘘だろ…そんな…!面白くて夜通し読んでしまった…。実は他の登場人物の言動や気持ちが同じだったり、同じ様で全然違うっていう対比がたくさんあった。これがな、すごい演出だなぁ…はあぁ(感嘆)これが何十年も前に書かれた作品なのもすごい。当時はそれはそれは衝撃的だったろう!とても面白かった!

  • あー面白かった。
    木場修の恋、破れたり。
    しかしなぁ、あの展開は少しズルい気もする。

    1度読んだ事があるにも関わらず、こんなにも記憶が薄ぼんやりとしている理由が何となく分かった。
    一般的なミステリと違って、犯人がバーンと出てきておしまい、という訳ではなく
    色々な事情が混沌とし過ぎている。
    だから印象的な部分ででしか記憶してないのだ。
    (と言う事にしておく。)

    世の中には様々な人が居るけれど、〝好き〟もここまでくると恐ろしい。
    次作の再読も楽しみ。

  • 再読。私が百鬼夜行シリーズの中でも一番に好きな作品がこの「魍魎の匣」である。上・中・下と分冊されている本作だが上・下では複数の事件が絡みに絡みどう収拾するのかと最初に読んだ時は思っていたわけだがそれは下で見事に納まり全ての事件に幕が下ろされる、各々に傷を残しながら。その幕の下ろし方が私はとても好きでたまらない。この事件で最終的に幸せを掴んだ者は雨宮ただ一人だったのだろうが、彼のいった彼岸が私はとても気になって仕方がないがそれも魍魎のせいなのだろうか。

  • がっつり引き込まれた。
    朝と夜、読みふけってしまって降りる駅を間違えた。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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