竹千代を盗め (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062763707

作品紹介・あらすじ

駿府の今川家の人質となっている松平元康の子・竹千代と奥方らを救い出す依頼が、甲賀の忍びの頭目・伴与七郎に舞いこんだ。綿密な算盤をはじき、銭四百貫文で商談は成立したのだが、乗り込んだ駿府で予期せぬ困難が続出する。窮地に追い込まれた与七郎は、甲賀に伝わる「大きな瓶」の話に光明を見出した。

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  • 松平元康(後の徳川家康)の妻子奪還を描いた描いた歴史小説。甲賀忍者の伴与一郎が元康の家臣の酒井雅楽頭(忠次)から元康の正室・築山殿と嫡男竹千代と乳飲み子の姫を今川家の本拠の駿府から岡崎城に連れ帰る依頼を受けた。元康は今川氏に従属し、妻子が駿府で人質となっていたが、桶狭間の合戦で今川義元が討たれ、今川氏からの独立を画策していた。

    NHK大河ドラマ『どうする家康』第5回「瀬名奪還作戦」と第6回「続・瀬名奪還作戦」の復習になる。最初に駿府から奪還しようとして失敗し、その後で別の方法に切り替える。伊賀忍者と甲賀忍者が競う形で取り組む。これらの点は『竹千代を盗め』と『どうする家康』が共通する。

    一方で『竹千代を盗め』は忠次と石川数正が対立関係にある。この描き方自体はオーソドックスである。火坂雅志『天下 家康伝』でも描かれており、それが数正出奔の原因になった。これに対して『どうする家康』では家臣同士の仲が良い。X f/k/a TwitterやInstagramを見ると俳優同士も仲が良さそうである。これは『どうする家康』と同じ松本潤さん主演ドラマ『99.9-刑事専門弁護士』とも重なる。

    歴史のリアルでは忠次と数正は競争関係にあり、足の引っ張り合いもあっただろうが、『どうする家康』は観ていて楽しい。ここは『どうする家康』に対して支持する人がいれば批判する人も出るところだろう。

    甲賀忍者の伴与一郎は銭で依頼を受けて任務を遂行する。一旦受けた依頼を遂行しようとする。保身第一の公務員体質ではなく、民間ビジネスパーソン感覚がある。忠義や天下のために働いていない。ここも公務員的な組織人の欺瞞はない。昭和の歴史小説と異なり、21世紀人が感情移入しやすい。

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著者プロフィール

1958年岐阜県生まれ。一橋大学卒業。1996年「一所懸命」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。98年『簒奪者』で歴史群像大賞、2003年『月ノ浦惣庄公事置書』で松本清張賞、04年『村を助くは誰ぞ』で歴史文学賞、08年『清佑、ただいま在庄』で中山義秀賞、14年『異国合戦 蒙古襲来異聞』で本屋が選ぶ時代小説大賞2014をそれぞれ受賞。『太閤の巨いなる遺命』『天下を計る』『情け深くあれ』など著書多数。

「2017年 『絢爛たる奔流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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