- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062767101
作品紹介・あらすじ
人はいったい体のどこで考えているのか。それは脳、ではなく歯-人並みはずれて健康な奥歯、であると決めた"わたし"は、歯科助手に転職し、恋人の青木を想い、まだ見ぬ我が子にむけ日記を綴る。哲学的テーマをリズミカルな独創的文体で描き、芥川賞候補となった表題作ほか一編を収録。著者初の小説集。
感想・レビュー・書評
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著しくぶっ飛んでるし、タイトルどおり内容は意味不明だが、勢いがあって小気味良い文体がいい。
そして、時折混じる関西弁がステキ。
歯科助手の「わたし」と、「わたし」に小説「雪国」の冒頭の一文の主語を問いかけてきた青木の関係が気になるが…
読み進めていくうち、だんだん「わたし」に対する違和感が大きくなっていく。
そして…
細かいところは解釈とかあまりしないで、感じるままに読む作品だな、と思った。
川上未映子さんのデビュー作にして、第137回芥川賞候補作品。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人並みはずれた健康な歯の持ち主である〈わたし〉は、歯科助手に転職し、忙しくて会えない恋人のことを想い、まだ見ぬ我が子に宛てて延々とつらつらと日記を書く。
いまだかつて味わったことのない、個性にあふれた文章に触れ、何だか古ーい書物を読んだ気分になりました。
これは妄想?主語は何ですか?お母さん?頭の中で思考がぐるぐる回ってて、この勢いに飲み込まれそう。
意味わかんないけど、面白い。
川上未映子の初期作品を突破しておきたかったので、とりあえず読めて良かったです。 -
自分の思考みたいに頭で再生される主人公の思考を楽しむ小説とでも言えばいいのでしょうか?途切れることなくあまりに一方的に展開されるので、油断していると何の話か分からなくなります。今までにないタイプの小説で、読みにくかったのですが、意外と好きでした。
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世界から、私なんてひとつ残らず消えてしまえばいい。
胸がえぐられる。
タイトルの、「歯ー」の部分、
多分奇抜なタイトルをつけようとしたわけじゃなくて、単に、大阪弁で「歯」と言うときこういう発音になる。 -
いい感じに狂ってて好き。
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主語と動詞への執着を感じて、面白かった。
著者があらゆるものの「存在」について考えるための1つの手段なのだと思う。 -
『夢の中で蝶々になってもそれがいったいどないしたんや、蝶々になろうが何になろうがそれそこにある私はいっこもなんも変わらんままや!わたくし率はなんもかわらん、蝶々がなんやの、私は奥歯や、わたくし率はぱんぱんで奥歯にとじこめられておる』
今日の一句です。
いやそこかい!という気もしますが、正直良く判らない文章だらけの中、一番共感できた部分でしたので。
川上未映子さんは2作品目。前回で文章に慣れた気がしていたのだが、本作はさらに癖強で、読破に通常の3倍位の時間と精力を使いました。
「哲学的テーマをリズミカルな独創的文体で描き」と裏表紙にありましたが、そんな軽やかなもんではなくて、哲学的テーマのキッカケは暗く重たいもんでした。
しかしながら哲学的テーマなんぞ現実的な女性の前ではあっという間に吹き飛ばされてしまうのです。現実ってキビシー。 -
デビュー作にして凄すぎた。
とても難しいというか文体がぶっ飛んでるし、構成もわかりづらいように設計されてるので、しっかり読まないと結局何の話?ってなる。構成はしっかり最初からデザインされてると思うけど、実際に書く時は恐らく意思の流れの技法を意識したと思う。というかなりの実験作だと感じた。
こういう書き方は個人的に好みではないけど、消えてほしくはない。文学界に詳しいわけじゃないけど今まであまり出会わなかったので、文学界においては川上さんは貴重な存在だと思う。
凄い所は他にも沢山あって一言では言えないが、1つだけ言いたいのはやはり川上さんの作品ってミステリー要素がある所。つまり最後まで読まない何の話か想像つかないが、最後までちゃんと読むと、言いたいことが急に全てが繋がったみたいな、そんな気持ちになる。後で気づくような伏線的な要素もちゃんとあるので、ミステリーだなぁって今回も思った。最後まで読むととても面白い作品なので、たまにはこういうガチの純文学も読んだ方が文学へのリスペクトも増えてまた色々と読みたくなるので、読んでいる時は大変かもだけど、敢えてお勧めしたい作品だ。
もう一つの短編「感じる専門家 採用試験」
こちらも手法的には同じかな。意識と無意識の間を記録するような、五感の役割を入れ替えながら特別のように見せるが、そこは一文一文どういう意味?って深く考えず、感じるがまま読んでいけばいいと思う。抽象画と似ているかも。妊娠したことがない主婦が自分の人生の辛さから子供を生む意味に対して問いかける、そんなテーマかと思うが、やはり一番面白いのは書き方で、読者に述べるのではなく、頭の中を覗かせるような書き方。
ただ、すらすら読むことは難しいので、たまにはいいけど、文学がみんなこうなると辛いかも知れない笑 -
哲学の自我の問題を、小説でストレートに扱ってて、なんだこれは。はじめは、哲学の問題は哲学でしっかりやったほうが面白いでしょ、って思って読んでたんだけど、だんだん心地よくなってくるという不思議な読後感。
哲学って、学問であって芸術ではない、文学とは異なるものだって考えてたんだけど、こんなやり方あんのかって思って嬉しかったです。