- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062767378
感想・レビュー・書評
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時代小説。
吉岡清三郎の仕事は「貸腕屋」である。
剣客。剣の腕は確かだ。それで用心棒なり何なりで雇われればよいのだが、彼は自分を安売りしない。
その代わり、腕を「貸して」生計を立てている。日に一両取るとしても、それは一日一両で雇われているのではなく、値千両でもきかぬ腕を貸してやって、その元本に対する利息を取っているという理屈だ。利息の額は、仕事の危なさや借り手の懐具合、そして清三郎の気分次第。十両や二十両に跳ね上がることもあるが、いずれにしろ、滞納したら取り立てには容赦がない。
彼の嫌いなものは「二」という数字、お人好し、子供に手を上げる者。いつも苦虫を噛み潰したような顔をしているが、それやこれやには訳がある。
依頼人も訳あり揃い。
商売敵に脅された商家、道場破りを恐れる道場主、金貸しの因業ばあさん、母が疾走してしまった幼女、夫の女を始末しようとする旗本の妻。
依頼人から話を聞き、清三郎が腕を貸してやってもよいと思えば、仕事を受けることになる。
吉岡という苗字、実家は憲法染めで知られる京の染物屋とくれば、読者にも追々事情は知れる。つまりは清三郎の家は、一条寺下り松でかの宮本武蔵に敗れた吉岡一門なのである。京流として知られた剣の一族であったが、これを契機に染物屋に転身、すでに何代かを経た。しかしなお、清三郎は自らの真の道は剣と定め、家業を嫌って江戸に出てきた。
家の再興を図りたいが道遠し。卑怯な戦法で家を潰した二刀流の剣士を叩きのめしたいが、相手は泉下に去って早百数十年。歯噛みをしながら金を貯め、家に着せられた汚名を濯ぐべく、捲土重来を期す。
つまりはそれが「不機嫌」の理由である。
家には1人、下女がいる。名はおさえ。人の好い質屋を助けてやったが、質屋は腕の借り賃を払えなかった。その借金の形に質屋の娘を使っている。娘は清三郎の仕事を嫌い、態度は氷のように冷たい。言いつけられた仕事はこなすし、顔立ちも悪くはない娘なのだが、如何せん、家の中は鬱々と暗い。
連作短編7編、それぞれ、清三郎が受ける依頼を描く。
清三郎は決して善人ではなく、貸した腕で血なまぐさい殺しも起こる。だが彼にはどこか一本筋の通ったところがある。この男の造形を好きになれるかどうかが作品を楽しめるかの分かれ道だろうか。
乾いているが、そこはかとないユーモアと、おさえと清三郎の一風変わった関係性も読ませどころ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ブクログのレビューで知り読んだ本。大当たりの面白さでおすすめです。
主人公の清三郎が剣の達人ながら、不機嫌で偏屈。
貸し腕屋なんて白とも黒ともつかない商売をしているせいで、無頼というか、人を斬ることに躊躇しない。
そんな冷徹な面と時折感情があふれることもあり、じわじわと清三郎の良さにひかれてしまうのであった。
人が倒れ、痛手を負う酷な場もたびたびあるけれど、嫌気がささず読めてしまう。女性、男性ともにおすすめできます。
登場するのは癖のある輩ばかり。
三途の川の脱衣婆やら、艶かしく高飛車な女やら、白髪頭の干し柿みたいなジイさんやら、蝦蟇蛙やらにたとえられ、エンタメ小説のおもしろさだった。容赦ないほどのたとえようは痛快に面白い。
下女おさえの暗さを例える描写もとどまるところを知らず。
楽しみになってくるほど。
落武者のように陰気な下女…って、ほんとに口が悪くてつい笑ってしまった。この文章、はまってしまいそうだ。
おさえの存在がすごくいい。
関係がどうなっていくのか興味深いのでぜひ続編を読もうと思う。
時代物でこんな切り口もあったのかと読むほどに感心した一冊です。
あれあれ、ふつうの庶民はあまり出てこないし、武家の話でもなく、人情ものでもなく、出世ものでもない。裏街道まっしぐらというのでもないけれど、陽のあたる世界ではない。王道でないところに魅力がある。
全く知らない作者でしたが本当に面白かった。
紹介してくれた方に本当に感謝です!-
気に入っていただけてよかったです。\(^o^)/ ホント、王道ではないところにこんなに面白い話が隠れていたなんて、という気持ち。うふふ・・・...気に入っていただけてよかったです。\(^o^)/ ホント、王道ではないところにこんなに面白い話が隠れていたなんて、という気持ち。うふふ・・・本の話って楽しいですね。2012/03/12
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じゅんさん、紹介してくださってありがとうございます。おもしろかったです〜!
第2弾:桜下の決闘も近々読むつもりです。
時代物ですが書いている...じゅんさん、紹介してくださってありがとうございます。おもしろかったです〜!
第2弾:桜下の決闘も近々読むつもりです。
時代物ですが書いているのは現代の作家さん。
話の面白さが新鮮でした。
読みたい本が次々出てきてうれしいです。
2012/03/12 -
面白かったですよね。
清三郎、おさえをはじめ登場人物の造形がいいと思いました。
つづらさんのレビュー、うんうんとうなずきながら読ませてい...面白かったですよね。
清三郎、おさえをはじめ登場人物の造形がいいと思いました。
つづらさんのレビュー、うんうんとうなずきながら読ませていただきました。2012/03/23
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これは剣客物というのかな。
こちらで教えてもらって読んだ初めての作家さんだったのだが、なかなか面白かった。
剣の腕を人に貸してその利息をいただく、というややこしい(私には)剣客商売をしている吉岡清三郎。
そこからしてそのちょっと斜めの性格が感じられる。
剣客だからバッタバッタと人を斬ったりしていくわけだが、それが逆に彼の内にある人間性を浮かび上がらせる道具となっていて、流血ものはちょっと苦手な私でもそれほど嫌な感じはしない。
何よりいいのは清三郎のもとで下女として働くおさえ。
借金のかたに清三郎のもとで働く彼女の存在が、この小説全体に感じられるほんのりとした軽味(かろみっていうのかな)を生み出しているといえる重要な登場人物なのだ。
外面の悪さだけからはわからない清三郎の人としての芯がだんだんわかってくると同時に、今後の展開も気になるところ。
これは続きも読んでみなければ。 -
犬飼さん作品の中ではこのシリーズが一番好き。
ハードボイルドタッチで人斬りシーンも満載なのに、陰湿さがないのでテンポ良く読める。
なんと言っても主人公・清三郎のキャラクターが良い。名前も聞きたくないほどあの剣豪を毛嫌いし、奇妙な理屈の貸腕業で荒稼ぎ。
いつも不機嫌で口数は少ない。しかし貸腕業の報酬(利息)代わりに女中として働かせているおさえは清三郎を更に凍りつかせる対応の冷たい女。
そんな清三郎とおさえの関係が少しずつ変化していくのは気になるところ。
最終話で出会った髑髏男との再会はあるのか。
第二作も楽しみ。 -
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清三郎強い!
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>そよかぜ様
お返事遅れて失礼しました!
気にいっていただけてよかったぁ~~!
“絶賛”した手前、お好みに合わなかったらどうしよう・・...>そよかぜ様
お返事遅れて失礼しました!
気にいっていただけてよかったぁ~~!
“絶賛”した手前、お好みに合わなかったらどうしよう・・と思ってたんですよ。
そうそう!おさえがいいですよね!
続編のほうがむしろ面白いと思いました。
犬飼さんって男前だぁ~~!(*^_^*)
2012/02/23 -
じゅんさん、面白かったです〜!
よくぞ紹介してくださいました。
あまり知られていない作家さんなのに、こんなに面白い作品で、発見の喜びもあって...じゅんさん、面白かったです〜!
よくぞ紹介してくださいました。
あまり知られていない作家さんなのに、こんなに面白い作品で、発見の喜びもあってよけいにうれしい出会いでした。ありがとうございます。2012/03/08 -
tsuzuraさんも気にいってくださいましたか。\(^o^)/ よかったぁ~。かなり変わったテイストの時代ものだと思うのですが、白黒映画のよ...tsuzuraさんも気にいってくださいましたか。\(^o^)/ よかったぁ~。かなり変わったテイストの時代ものだと思うのですが、白黒映画のような、妙なリアリティのある切り口が面白い! ここまで来たら続編もぜひどうぞ!でございます。2012/03/08
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爽快な生きざまを爽快に描いた。