- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062772501
作品紹介・あらすじ
人に優しき稀代の名将・官兵衛
「神の罰より、主君の罰を恐れよ、主君の罰より、臣下、百姓の罰を恐るべし」。戦国の世で、神の愛のため戦うと誓った黒田官兵衛。土牢の幽閉から逃れ信長への謀反に暗躍、秀吉の懐刀となり勇名轟かせた策士でもあった。「民を貴しとなす」とした稀代の名将の真の姿が、新直木賞作家による渾身の筆で現代に甦る。
感想・レビュー・書評
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黒田官兵衛とイエズス会の日本人修道士ジョアンを主人公とした歴史小説。切支丹の視点から官兵衛を掘り下げている。黒田家は目薬を売って財を成した家であった。官兵衛は「武士というより商人のような気分がなにより、身になじんでいた」。民間感覚を持っていた。
官兵衛は卑怯を嫌う。「同じ謀叛でも、信長が昼間、安土から京へ向う途中を襲えば、乱世だけに信長の油断も咎められるのだ。しかし、寝ていたところを襲ったとなると、いかにも卑怯と思われる」。
軍師と言えば陰謀家のイメージがあるが、だまして陥れる卑怯者とは一線を画す。正直さを持っているために荒木村重に正面から会いに行って幽閉されてしまうこともあるのだろう。
織田信長は海外進出を考えていたとする説は多くみられる。それでは豊臣秀吉の朝鮮出兵のような泥沼の侵略戦争に陥る。『信長のシェフ』の明智光秀も、それを予見して避けようとする。これに対して『風渡る』の信長は秀吉のような大陸侵略ではなく、海洋国家を志向していた。『信長のシェフ 34』の信長は、さらに進めて外交交渉による海外進出を考えていた。『信長のシェフ』の信長が多くの作品の信長の中でも最もカッコいいという声があるが、それに恥じない思想である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
全1巻。
黒田勘兵衛とキリシタンの通訳の2人生き方を通して、
戦国時代をキリシタンの視点から見るお話。
きちんと書くタイプの著者だし、
史実ベースなので、
背景説明などが多く、堅い。
ぐあっとした盛り上がりはあんま無く、
手に汗握る展開も無い。
けっこう淡々と事実を重ねていく印象。
終わり方もホワッとしてる。
ただ、信長の神観や、目指した国の形、
竹中半兵衛の造形などは
個人的に目新しく、おっと思った。
大枠はきちんとまとまり、
きちんと目新しいんだけど、
盛り上がりとメリハリに欠ける。
黒田勘兵衛の歴史ミステリーなのか
キリシタンから見た戦国史なのか、
少しボンヤリした印象の物語。 -
評価はよくわからない。新しい説も飛び出して頭がついていけない。官兵衛の話だと思っていたら、キリストもセットでついていて戦国時代の小説を好んで読んでいたけど、キリシタンの事を書いた小説に出くわしたことがなかったので興味深く読む事ができた。
明智光秀がキリシタンの事を好意的に思っていた事を後から知る官兵衛。光秀に加担していたらキリスト王国となって違う日本になっていたかも知れない。なるほどと思う説が多く、また人間臭さもあり新たな戦国時代を読んでいるそんな小説だった。
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長編の歴史小説で戦国時代のキリシタンがおかれた立場が分かったような気がした。
反面、物語の焦点がぼやけて非常に読みづらかった。 -
物語が淡々と描かれているのと、あちこち人物に飛ぶので、なかなか入り込めなかった。黒田官兵衛ということで、期待しすぎたかもしれない。
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一般的に知れ渡っている歴史上のストーリーに対し、武人であることとは別にキリシタンとしての官兵衛の野望、竹中半兵衛との画策を歴史の裏として加えたことなど、この作品のオリジナリティが強く感じられ、司馬遼太郎の播磨灘物語などとも比較しながら興味深く読めた。
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キリシタンを軸に、黒田官兵衛の戦国時代の生き方を再構築したような作品。
これまでの戦国時代を描いた時代小説の中では異質な作品で、とても興味深く読んだ。
キリシタンとしての考え方や、戦略などがストーリーの肝であるため、戦国時代の中心の合戦の描写が少ないので、抑揚がない所は好みが分かれるかもしれない。 -
葉室さんの本は、いつも思うが読みづらい。
ただ、面白い。 -
この方の作品は初めて読みました。人物描写が素晴らしくキリシタンの目線から描く戦国時代モノはとても新鮮でした。