水の柩 (講談社文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778312

作品紹介・あらすじ

「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」。中二の逸夫が同級生から頼まれたこと。大切な人達へ、少年は何ができるのか。

感想・レビュー・書評

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  • とにかく暗かった。
    なかなか入り込めず苦労した。

    始まりは
    20年後の自分へ」よくあるタイムカプセル。
    だけどここにも深い意味があった。、
    吉川逸夫と
    木内敦子、そして逸夫の祖母いく。
    祖母のいくも悲しすぎる〜


    敦子は壮絶ないじめを受けていた
    こんな話をして申し訳ないのだけど〜
    何故いじめを受けている者が
    相手を告発し公にしてやつけることができないのだろうと能天気な私めは思う。

    虐められてることを自分のプライドが許さない
    許せない、そこには複雑な感情がある?
    経験したことのないものか、簡単にいうことはないのだけど
    そこに歯痒さ、なんとかできないものかと
    地団駄を踏む
    根が深い、タチが悪い
    部外者が偏見だけでいうのは憚られるが
    決して敵として言ってない、何かできないかと心から思って言ってる。

    本文より
    敦子が最後の足掻きとして、虐められてる時に
    その者らを前にしてカッターで自分を「?」傷つける
    そして相手らを悪くいうことなく
    ふざけてたら、誤って
    自分を傷つけた〜という。
    あまりに悲しすぎる、壮絶すぎる。

    本文よりー
    何かが解決するのと、何かをすっかり忘れてしまうのと、どう違うのだろう。
    忘れることと、忘れずに乗り越えることの違いはどこにあるのだろうー
    この文面にすごく惹かれた。

    最近は見かけない
    蓑虫が出てくる

    本文より
    その蓑をいくらカラフルに着飾ったとしても、その蓑の中にいる芋虫はなんら変わらないという事実のようにー人間もいくら着飾っても
    その内側には見えない心を持つ生き物である。ー

    最後には希望が見えた。

  • 5,6年程前、初めて読んだ道尾作品。

    この本を読んでから、お弁当を包む布は
    裏が外側にくるように、開いた時に布の
    表を見ながら、食べられる包みかたにと
    私も変えました。逸夫の祖母は、孫のお弁当箱をいつもそんな包み方にしていたのです。

    旅館の女将を引退した祖母。子供時代には、つらい過去があった。そして・・・・
    子供時代を過ごした村は・・・・ダムの底に
    沈んだ。村の貧乏な家の娘という身分を隠し偽り、旅館の女中として働いた。
    そんな祖母は、主人に見初められる・・・・
    結婚するからにはと、祖母は貧乏な
    家の出の娘だと打ちあける。主人は、
    そのことを秘密にしていてくれる。
    幸せな人生を送るわけだが、女将引退後
    認知症になってしまう。

    過去のことを、皆には秘密にして生きてきた。認知症になったしまった理由は、皆に隠して生きてきたことが、重荷になっていたのではないか・・・・・

    認知症の祖母に、今のダムの様子を
    見せて良かったのだろうか?
    祖母には、衝撃が強すぎたのではない
    だろうか。
    「水の柩」という題名の意味を、考える
    作品でした。

  • うーん、上手い、まんまと作者にだまされてしまった。
    (ネタばれにならないように注意して)

    人はだれしも心の中に、人には見せられない暗闇を持つのだろう。ある者は遠く過去の記憶を心深く閉じ込めて、またある者は現実の苦痛から逃れるために死を選択する。

    外観がどれだけ華やかで、幸福そうに見えていても、心の中の葛藤、真の姿を決して理解することはできない。

    読み進めるうち、話の辛さに本を閉じ先に進まない時もあった。しかし、作者は最後に前に進む道を残していた。あれ?と気づいて最初の章に戻ると、あるべきものがそこには描かれていなかった。
    なるほど!騙されてたと初めて気づきました。

    映画監督 川瀬直美の解説も面白い。「映画ではこのストーリは描写できない」なるほど、さもありなん。

  • 自分を平凡すぎると思っている主人公と、虐められ自殺を考えている同級生の少女、そして心に深い悲しみの過去を押さえ込んだ祖母。これは、三人のそれぞれの「解放」の物語だと思った。
    道尾さんの上手い文章と構成で終章が本当に心に響く。そして、この主人公は平凡といえど結構しっかりしていて堅実で。まっすぐ生きている姿が大変好感が持てる。

    生きていると忘れたくても忘れられない出来事や辛い経験が少なからずあるだろう。私も嫌なことはいつまでも心に残り考え込んでしまう。文中の言葉「とにかく全部忘れて、今日が一日目って気持ちでやり直す」全部忘れるのは私には難しいな…(^_^;)でも、全部忘れた気持ちで!新たに歩み始めないとって事だよね。と思うとなんとなく気分も高まり自然と笑みもこぼれた。

  • ダムに沈んだ村、祖母の過去。
    時を経て知った真実と同級生のいじめ。
    祖母の悲しい嘘に心が痛んだ。

    • アールグレイさん
      初めまして、奏悟さん、ゆうママと申します。突然にすみません。フォロワーさんのフォロワーさんでした(^^; 「水の柩」読んだのですね。この本は...
      初めまして、奏悟さん、ゆうママと申します。突然にすみません。フォロワーさんのフォロワーさんでした(^^; 「水の柩」読んだのですね。この本は、私にとって初の道尾秀介作品でした。人に知られたくない過去、育った村がダムの底に沈む・・・・悲しい話でしたが、強く印象に残っています。そして、「カラスの親指」展開がよく良い本でした。・・・・今「ツナグ・・・想い人」を読んでいます。奏悟さんは、何か読んでいますか?良かったら私の本棚、御覧頂けたら光栄です。(^_^)
      2021/04/10
    • 奏悟さん
      ゆうママさん 

      初めまして。
      道尾さんの作品は、悲しいけど最後に救われるものが多くて、大好きな作家さんの1人です。
      最近だと、「いけない」...
      ゆうママさん 

      初めまして。
      道尾さんの作品は、悲しいけど最後に救われるものが多くて、大好きな作家さんの1人です。
      最近だと、「いけない」がお勧めです(*^^*)
      拙いレビューにコメントいただき嬉しかったです!
      ありがとうございました。
      ゆうママさんの本棚もぜひおじゃまさせていただきますね。
      2021/04/10
  • 著者の作品は7冊目の読了となりました。

    本作の主人公は中学2年生の吉川逸夫。

    14歳の中学生が主人公とくればいわゆる青春物が大通ですが、本作は違います。

    かと言っていわゆるミステリーでもありません。

    「絶望」と「希望」、まさにそれがテーマであり、生きる為に「嘘」をついた同級生の敦子と50年もの長きに渡り「嘘」をついてきた祖母のいくを救おうとする物語。

    それぞれの辛い過去がダムでクロスし、「天泣」の輝きが未来の希望を感じさせる。
    ※天泣・・・晴れている時に降る雨(狐の嫁入り?)

    「今」「昔」「ちょっと昔」の3つの時間軸がある為、少し読み辛いと感じたのはまだまだ私自身が未熟だから。

    個人的には敦子の「未来」が希望に満ち溢れていてくれることを祈らずにはいられませんでした。



    説明
    内容紹介
    タイムカプセルに託した未来と、水没した村が封印した過去。時計の針を動かす、彼女の「嘘」。平凡な毎日を憂う逸夫は文化祭をきっかけに同級生の敦子と言葉を交わすようになる。タイムカプセルの手紙を取り替えたいという彼女の頼みには秘めた真意があった。同じ頃、逸夫は祖母が五十年前にダムの底に沈めた「罪」の真実を知ってしまう。それぞれの「嘘」が、祖母と敦子の過去と未来を繋いでいく。


    タイムカプセルに託した未来と、
    水没した村が封印した過去。
    時計の針を動かす、彼女の「嘘」。

    平凡な毎日を憂う逸夫は文化祭をきっかけに同級生の敦子と言葉を交わすようになる。タイムカプセルの手紙を取り替えたいという彼女の頼みには秘めた真意があった。同じ頃、逸夫は祖母が五十年前にダムの底に沈めた「罪」の真実を知ってしまう。それぞれの「嘘」が、祖母と敦子の過去と未来を繋いでいく。

    「今」彼女が手紙を取り替えなくてはならない理由。
    あの二つの出来事がもし、同じ時期に起こらなかったら--。

    「暗闇」から射し込む「光」は、救いなのか、それとも。
    道尾秀介しか描けない、絶望と、それを繋ぐ希望。
    内容(「BOOK」データベースより)
    平凡な毎日を憂う逸夫は文化祭をきっかけに同級生の敦子と言葉を交わすようになる。タイムカプセルの手紙を取り替えたいという彼女の頼みには秘めた真意があった。同じ頃、逸夫は祖母が五十年前にダムの底に沈めた「罪」の真実を知ってしまう。それぞれの「嘘」が、祖母と敦子の過去と未来を繋いでいく。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    道尾/秀介
    1975年生まれ。2004年『背の眼』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。’07年『シャドウ』で第7回本格ミステリ大賞、’09年『カラスの親指』で第62回日本推理作家協会賞、’10年『龍神の雨』で第12回大藪春彦賞、同年『光媒の花』で第23回山本周五郎賞、’11年『月と蟹』で第144回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 旅館を経営をしている家の逸夫
    母と小さい妹と暮らす敦子

    小学生の時に埋めたタイムカプセルの未来への自分への手紙の差し換えの協力を敦子は逸夫にする

    一方で逸夫は祖母の過去を知ってしまう

    敦子の手紙の差し換えの意図
    祖母の過去

    傷ついた過去をどう未来に繋げていくのか

    痛々しい心の動きと描写
    美しい景色の描写
    道尾秀介さんの描写の仕方が好きだ

  • 足湯
    蓑虫
    ダム
    人生で何回口にするかって言うワード。
    面白いですねー

  • いつもうまいと感心する。
    小説でしか表現できないことを探しているような気がする。

    蓑虫。中にいる黒い芋虫が本当の蓑虫。人間だってみんな、外に出てるところばっかりみられる。

  •  ラストの情景が美しい。天泣降り頻り、それぞれの過去を弔う。

     思春期の少年の心情描写に強い作家だな、と改めて思う。少しずつ変わりゆく周囲との関係性の中で、無邪気だったあの頃に戻りたくても戻れない葛藤、または戸惑い。

     『月と蟹』とはまた別のアプローチって感じ。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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