星火瞬く (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
2.93
  • (1)
  • (9)
  • (20)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 171
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778862

作品紹介・あらすじ

その男が、幕末を動かした――
清河八郎 小栗忠順 勝海舟 高杉晋作 動乱の地で会わなければならなかった日本の「革命家」とは、誰なのか?

時代小説の正統派が描く、まったく新しい幕末青春小説

<異人斬り>が横行する幕末。全世界を相手にしたロシアの大革命家が、横浜の地に降り立った。妖しい光を放つその男に、日本の若き革命家たちは吸い寄せられていく。そして同時期、30年ぶりの来日を果たしたシーボルトと、息子アレクサンダーもまた、危険な革命家と出遭う。父から託された一挺のピストルを手に、アレクサンダーは決意する。わたしは、バクーニンと対決しなければならない!

作家・葉室麟がどうしても書きたかった時代、人物、物語がここにある。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • アレクサンダー・フォン・シーボルトの目を通して幕末の日本を描く歴史小説。アレクサンダーはシーボルト事件のフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトの息子である。父親のシーボルトは鎖国下の日本を訪れ、蘭学者達に西洋科学を伝えた。しかし、禁制品の地図等を持ち出したとして国外追放となった。外国のスパイと扱われ、それを冤罪と描いている。

    江戸幕府が鎖国を止めると、シーボルトの国外追放処分も失効した。シーボルトは息子のアレクサンダーを伴って来日し、江戸幕府の外交顧問になる。ロシア軍の対馬占領事件が背景として描かれる。21世紀のロシア連邦のウクライナ侵略と重なる侵略体質がある。

    小栗上野介、勝海舟、高杉晋作らが登場する。勝海舟は出世欲の塊の卑しい人物に描かれる。無政府主義者のバクーニンも登場し、幕末の日本人の思想に影響を与える点は面白い。だまされた人々や虐げられた人々が火炎瓶を投げることで憤りを表明する(220頁)。革命の原動力を感じた。

    本書のバクーニンは自信満々な人物に映るが、終盤では政治犯としてロシアの監獄に収容された際の悲惨な境遇が描かれる。国家権力の弾圧は肉体と精神を蝕む。

  • 正直いまいち
    幕末の時代を下敷きとした物語。

    シーボルトの息子が主人公として、物語を語っていきます。
    小栗忠順、高杉晋作らの幕末の武士がロシアの革命家バクーニンに影響を受けていく物語。
    当時、日本に対して各国が食指を伸ばしている時代、さらに対馬がロシアに占有されようとしているところに対して、どう対応するか?
    また、イギリス公使館襲撃事件が発生。
    それらの事件の背景の真相は?
    といった展開です。

    これまた、史実をベースとした物語の展開ということで、残念ながら、期待した葉室作品とは違っていました。
    具体的には、登場人物の掘り下げや、清廉さ、武士としての信念、熱い思い、そして、爽やかさといったものが感じられず、淡々と語られていく感じでした。
    バクーニンの思いや、その周りの女性たちの気持ちも伝わっては来ますが、どうもすっきりしない。

    ということで、期待が大きい分、ちょっと残念でした。

  • 外国人シ―ボルトから見た明治の日本の移り変わり、昔戦った日本人がいた

  • 題材・切り口がユニークで面白くなるかと期待させられました。ただ、正直訴えかけるものが私には響かず。葉室さんで初めて外した感あり

  •  大河ドラマの影響もあって幕末に注目が集まっているようだが、この小説の中にも攘夷浪人が登場する激動の時代を描いている。
     ただユニークなことに語り訳はかのシーボルトの息子であり、オランダ人の目を通して語られる幕末の風景ということになる。真の主人公は革命家を自認するバクーニンというロシア人である。革命のためには少々の犠牲は仕方ないとする。人間的に嫌悪感を感じたシーボルトはその生きざまに触れるうちに次第に彼の考えを理解するようになっていくという話である。
     ストーリーの中には勝海舟や高杉晋作といった名だたる人物が登場し、バクーニンの振る舞いに大きな影響を受けていく。実在した人物を核にしていることは確かであろうが、詳細には筆者の創作が多分に織り込まれている。
     読みやすい文体で、展開もはやい。娯楽時代小説としてとてもよくできている。

  • 私は歴史がさっぱりなので、そのあたりがイマイチわからず楽しみきれませんでしたが、多分、歴史好きな人からみたら江戸時代の新しい視点での進む展開がとっても新鮮で楽しい、、、はず!笑

    私はよくわからない人ばかりだけど、多分歴史好きからしてみたらあーあの人!!!みたいな感じになるはず。

    あの人こんなことしてたんだーみたいな。

    いや、私は全くわからないんだけどね。

    しかも、オランダ人目線の江戸時代っていうのもものすごい。その主役も日本大好きなオランダ人。出てくる外人、誰〜も知らないけど、ペリー
    が開国させてからの日本っていうのだけは理解できたかなー?笑、?

    というわけで、ある程度歴史に熟知してないと楽しめない一冊でした(-_-)勉強不足ですみません。笑

  • 時代物が好きで読みあさっていますが、思っていたのとちがいすぎました(^_^;
    朝井まかてさんの先生のお庭番が好きで読んでいたのですが、その後の話っぽいかな、と思ったのですが。
    シーボルトの息子からみた動乱の日本、というのには興味をそそられましたが、読んでみると世界史のよう…(^_^;日本史は得意ですが、カタカナばかりの世界史が苦手だった私には…(^_^;
    すみません、脱落です…。

  • 眈々と読み進められる歴史小説。冷静沈着かつ、広い視野を持つ革命者たちの一時代を切り取る♪。

  • 「オランダ宿の娘」の後日譚…というわけでもないのか?
    日本地図を持ち出そうとして国外退去させられたシーボルトが幕末に再来日。その来日同行した息子アレクサンダーの目線で動乱の日本を描いた小説。

    登場人物が豪華、勝海舟に小栗忠順、清河八郎、高杉晋作、外国勢もバクーニン(革命家)にスネルブラザーズ(武器商人)、駐日公使や、画家のハイネまで。同時代にうごめいてい彼らと、ヨーロッパ列強が歯牙にかけようとする幕末日本と、そうはさせまじともがく日本の摩擦によって起こる事件。

    日本人ではなく、大人でもない。ある種無力な安全地帯にいる主人公の目線が、これらの人間模様や事件を捉える体で、葉室麟の筆が史実を小説にしていく。ここらの職人技は見事。

    ただし、葉室小説に求めてしまういつもの清廉さや爽やかさが少々足りなくて、欲求不満になりがちなのは残念。そこら上手いことかさ増ししてくれたらお気に入りの小説になっただろうなぁ。

  • 外国人憎しの異人斬りが横行する幕末、世界を相手にしたロシアの革命家、バクーニンが横浜に現れた。小栗忠順、高杉晋作ら幕末の志士と対峙し革命の本分を説くバクーニン。同時に勃発するイギリス公使館襲撃事件。彼は真の革命家か、ロシアが放った謀略の仕掛人か。革命と維新に揺れる時代の隠された真相が暴かれる。

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

葉室麟の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×