21世紀 仏教への旅 ブータン編

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062802055

作品紹介・あらすじ

チベット密教の王国を行く!
化身と輪廻転生を信じる人びとは死を恐れない。
標高3000mの山道の果てに見た幸福の姿とは?

「死」に対する考えが、ブータン人と日本人とでは大きくちがう。
ブータン人は「死」に対して、恐れということをあまり感じていないように見える。自分が死後、必ず別のものに生まれ変わると確信していれば、死ぬことを恐れることもないのだろう。死は次の生のはじまり、ともいえるのだ。――<本文より>

<ブータンに息づくチベット密教を訪ねた道のり>
パロ―ティンプー―ドチュ・ラ峠―ワンデュ・ポダン―ペレ・ラ峠―
トンサ―ヨトン・ラ峠―中央ブータン―プナカ―ティンプー―パロ

感想・レビュー・書評

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  • やはりプロの文章はしっかりしている。ロポン・ペマラとカルマ・ウラさんの話の内容がさすがすぎる。

    「ブータンは日本に似ている、というその印象は、やがて少しずつ変化していく。同じ仏教の姿が、これほどちがうものか、と衝撃を受けたこともあり、生活習慣のなかに根づく宗教観の相異も痛感させられた」という前書きの一文に代表されるように、日本との違いをたくさん指摘していて、共感できる。


  • ブータンを知るための最初の入門書

    情景が浮かんでくるようで、旅行記も悪くないもんだな、と思った

    quality of death の考え方に感動

  • カルマウラ士が語った日本の近代化について

    近代化という事でいえば、日本は確かに経済的な進歩を成し遂げたと言えます。しかもそれは、太平洋戦争後のごく短い間で達成されました。
    私はあの戦争における配線というものが、日本人の意識をまっぷたつに割ったのではないか、という気がしています。あるいは、日本人の意識にゆらぎというか、
    亀裂のおうなものをもたらしたのではないでしょうか。その事が、現在まで、日本人に非常に大きな影響を与えていると思います。
     戦後の日本人は山の頂を目指してひたすら登り続けました。そして、先進諸国のメンバーになろう、世界に冠たる経済大国になろう、といった目標をすべて短期間で達成
    していしまったのです。現在日本は山の頂上に立っています。けれども、いざそこに立ってみると、これから何をしたらいいのかが見えない、という状態なのではないでしょうか。
     私が受けた印象をいえば、頂上に立つというただ1つの目的のために、日本人は個人が努力しただけではなく、いわば兵隊としての組織を作ったのだと思います。そのお陰で日本は
    大変効率的に、世界の頂点に達する事が出来ました。
     ところが、組織が作られた事によって個人は全員そこに属さねば成らないという結果になりました。
     その中では、個人が心の安らぎを求めるとか、個人が幸福を追求することが難しい状況になっているのではないでしょうか。
     日本は成功し、発展してきました。しかし、その間には失ってきたものもありました。それは個人の充足感であり、あるいは自然であり、あるいは他の人たちとの人間関係だったのではないでしょうか。これらを犠牲にして、その上に築いた発展だったのではないでしょうか。」

    私たちは数値化され、継承化されたものだけにこだわり、目に見えないものの価値や、目に見えない世界というものを見失ってきたのではないか。そのために大きな壁にぶつかっているのではないか。
    仏教に限らず、宗教というものは目にいえないものを大切にする、あるいは重視するという、価値観を持っているものだ。だからこそ宗教には目に見える世界で担うべき役割があるのではないか。
     カルマウラ士と語り合いながら私はそんなことを考えていた。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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