大日本・満州帝国の遺産 (興亡の世界史)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062807180

作品紹介・あらすじ

揺籃の地、満州が生んだ日韓の権力者、昭和の妖怪・岸信介と独裁者・朴正煕の軌跡。

感想・レビュー・書評

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  • ・岸信介と朴正熙の満州を母体とした類似性、統制経済、日韓関係に与えた影響など興味深かった。

  • 1932年、突如として成立し、1945年に消滅した国家:満州が生んだ2人の鬼胎、つまり日本の“妖怪”岸信介と、韓国の“独裁者”朴正煕を中心として、彼らの満州人脈を包摂しながら日本と韓国の近現代史を展開していきます。
    話の前半は、岸や朴の満州での活動を見ながら、日本や日本統治下の朝鮮に住む朝鮮人が満州へどう関わってきたか展開され、後半部分は、彼らの満州で培った人脈などをつたって彼らが政治家として大成し、国家を動かしていった流れ(とくに韓国に重点が置かれている)が綴られています。
    内容は抽象的な言葉と細かい内容とが入り交じっており(著者の一人姜尚中先生(朝生とかで活躍するダンディな声の東大教授)が政治思想史が専門だからか・・・)、難解で読解力の乏しい私は恥ずかしながらほとんど頭に入らなかったので、本書のまとめとおぼしき個所を抜き出して、感想に代えたいと思います。

    「岸の場合、戦争の時代、平和の時代、そのどちらにおいても、それぞれ独自の方法で、国家の安危に関心を注ぎ、国家によって指導された革新主義を実現しようとしたのである。満州国は、まさしく戦前と戦後を繋ぐ岸のような革新官僚の揺籃の地となり、またそのような国家のテクノクラートによって指導された変革の「実験場」になったのである。
     明らかにそうした革新主義を担うパワーエリート(革新官僚)の登場は、天皇重臣を中心とする保守的な帝国の体制にとっては、ある意味でその体制そのものを内側から壊しかねない「異胎」あるいは「鬼胎」だったに違いない。
     さらに他方で満州国は、岸のような「鬼胎」と同じようなDNAを受け継いだ軍人(朴正煕)の揺籃の地となったのである。解放後の分断国家・韓国とそれ以前の植民地の間のパワーエリートの人脈や諸制度の連続性、軍人や官僚の遺産、エリートと大衆というふたつのレベルにおける意識やイデオロギーの入れ替えと変革など、韓国の場合にも、解放以前と以後との間にはダイナミックな連続性が横たわっている。」(293~294頁)

  • 戦後の日本・韓国発展のルーツとして満州を描く。満州は岸信介とパク・チョンヒの政治・軍事キャリアのスタートの地、だからだ。

    どうやらそのシステムの頑丈さはハンパなく、現代日本においても、国家社会主義的傾向は強く残り、結果、企業・国家による搾取システムは未だ継続している。といった印象をずっと持ち続けている。あくまで印象だが。だからこそ、そのルーツを知り、どこがどうなっているのかナゾを解き明かしたいと思ったわけですが、予想以上に情報の羅列感強く、ちょっと残念な内容。
    「日本株式会社を創った男」を読まねばならなさそう。という意識が高まった次第。

  • 戦後の日本および韓国史の起源を満州に見出す、というコンセプトで書かれているが、どちらかというと朴正煕を中心とする韓国史に重点が置かれている。これはこれで珍しい切り口の本なのでそれなりにおもしろいとは思ったがせっかくこの時代を扱うのであればもっと日本・満州本体に視点を向けても良かったのではないかと思った。

  • [ 内容 ]
    揺籃の地、満州が生んだ日韓の権力者、昭和の妖怪・岸信介と独裁者・朴正煕の軌跡。

    [ 目次 ]
    第1章 帝国の鬼胎たち(海を越える満州人脈;若き日の「妖怪」と独裁者)
    第2章 帝国のはざまで(満鮮一体への道;「亡国の民」の満州;満州へ、満州へ;満州が生んだ鬼胎たち)
    第3章 満州帝国と帝国の鬼胎たち(国運転回ノ根本政策;王道楽土の夢と現実;統制経済の実験場)
    第4章 戦後と満州国の残映(甦る「鬼胎」たち;「未完のプロジェクト」;「満州型モデル」を求めて;再選後の危機と独裁への道;重化学工業化と農村振興の起源;鬼胎たちの日韓癒着)

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著者プロフィール

1950年熊本県生まれ。東京大学名誉教授。専攻は政治学、政治思想史。主な著書に『マックス・ウェーバーと近代』『オリエンタリズムの彼方へ―近代文化批判』(以上岩波現代文庫)『ナショナリズム』(岩波書店)『東北アジア共同の家をめざして』(平凡社)『増補版 日朝関係の克服』『姜尚中の政治学入門』『漱石のことば』(以上集英社新書)『在日』(集英社文庫)『愛国の作法』(朝日新書)など。

「2017年 『Doing History』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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