- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062855013
作品紹介・あらすじ
2013年7月発売になり、新聞書評などでも話題になった本が、青い鳥文庫35周年の2015年、青い鳥文庫に!
小学生の子どもたちに大人気の青い鳥文庫。
編集部には日々、
「どうやってつくっているの?」「わたしも小説家になりたい!」「何か月くらいで本ができるの?」
などなど、子どもたちからたくさんの質問がきます。
それならば!と、青い鳥文庫でもノンフィクションをたくさん書いている岩貞るみこさんが取材をはじめました。
おもしろい本をとどけるために奮闘する作家、イラストレーターやデザイナー、編集部。そして、校閲や販売、印刷会社などなど、本作りには欠かせない、でも、子どもたちはよく知らない人々の仕事を追いました。
物語を読みながら、本のできあがっていくさまがわかる、新しい本です。
本が好きなあなたに、ぜひ読んでもらいたいです!
<小学中級から・ノンフィクション・すべての漢字にフリガナつき>
<おもな内容>
累計200万部突破目前の、とある大人気シリーズ。子どもたちへのクリスマスプレゼントにしたい!と最新刊・第14巻の12月発売を決めたものの、先生の原稿は遅れに遅れ……。
果たして12月発売にまにあうのか?
作家、イラストレーター、編集部、そして、校閲や販売、印刷所、取次、書店などなど、青い鳥文庫が書店に並ぶまでの人々の奮闘を描きます。
4ヵ月におよぶ綿密な取材にもとづいた、臨場感あふれる現場の姿。これを読んだら、あなたも本を作りたくなっちゃうかも!
感想・レビュー・書評
-
ノンフィクション作家の岩貞るみこさんが、4か月間「青い鳥文庫」の編集内部を取材して、一冊の本が出来上がるまでを描いたお話。
主人公は編集の「モモタ」という女性。設定は架空だが、プロの仕事と現場の様子が手に取るようにわかり、一緒に仕事をしているかのような臨場感がある。
累計200万部目前の、とある人気シリーズ。
最新刊の発売を12月に決めたが、肝心の作家の原稿が〆切りを大幅に過ぎてもあがってこない。焦る編集部。果たして発売に間に合うのか。。
発売までこんなにもたくさんの手順が必要なのかと、目を見張るようなことばかり。
原稿があがってから先ずは編集さんとふたりで見直し、印刷しやすいデータの状態に揃え、ようやく「ゲラ」が出来たら「校閲」にまわされ、「業務部」で発売までにかかるお金を計算し、カバーと帯のデザインを検討し、イラストを指定し・・
このひとつずつの工程にすべて、様々なひとたちの努力と奮闘がある。
そこに派生するコミュニケーションとチームワークの大切さ。
互いの職分に対する敬意が根底にあって初めて成り立つものなのだ。
子どもたちに、正しく丁寧な日本語を届けること。
それも、子どもたちの小遣いで買えるような廉価で提供すること。
流行を取り入れ、手に取った時に新鮮に感じてもらうこと。
そこまで考え尽されて作っていることを、まるで知らなかった。
なんて手間暇のかかる作業なんだ。
章のたびに表れる「校了まであと○○日」をいう字を見ては、自分のことのように焦った。
編集さんたちが、食事もそこそこに、徹夜までして頑張れるのは、読み手の子どもたちを思い浮かべるからだ。
「大好きなシリーズの新刊を待ちわびて、発売当日に走って書店に行く子たち。
もしも書店になければ、どんなにガッカリするだろう。」
・・青い鳥文庫で育った皆さんなら、ここはよーくお分かりのことだろう。
日ごろ見えにくい編集さんの、お仕事小説とも言える。
登場人物の紹介がイラスト入りで最初に現れ、子供向けかと思っているとその内容の熱さに驚くばかりだ。
これで出版のお仕事に憧れる子もいるかもしれない。
ところで、私にとって青い鳥文庫と言えばムーミンとコロボックル。皆さんは何ですか? -
ジャーナリストでノンフィクション作家の岩貞るみこによる、本の作り方をテーマとした小説。
講談社の児童書レーベルである青い鳥文庫の人気シリーズを出版するという設定で、編集者、作家、イラストレーター、経理担当者、校閲、デザイナー、印刷所、書店員…のみなさんがどのような流れで、どのような気持ちで本を作って読者に届けるか。
完全にフィクション小説ではありますが、綿密な取材を行い、作家やイラストレーターからのコメントがあり、ほぼ事実に基づいています。
お話としても面白いし、本を作るための熱意や心意気が伝わってきます。
仕事というのは、それを誰かが必要としているからあるんですよね。
自分が送っているこの生活がどれだけ多くの人の手を通ってきているか、それぞれの人がどれだけがんばってくれているか。
そして自分の仕事は、全体の仕事の一部が自分の手を通って、そしてそれを必要な誰かのところに届いている。
「本を作る」ということを通して、仕事の事も考えられてとても良い小説です。小学生から大人までお勧め!
青い鳥文庫はこちら
http://aoitori.kodansha.co.jp/
小説で本の作り方のスケジュールが書かれているのでせっかくなので個人メモ。
3月:講談社編集部の企画会議で、年間予定表の進捗確認。
ヒロインの元気女性編集者モモタが担当する『白浜夢一座が行く!』は12月の販売となる。そこで作者の綾小路さくらと、原稿を8月中旬に上げてもらうように打ち合わせをする。
9月末:原稿が大幅に遅れ、やっと1/3できた。スケジュールが押せ押せ^^;。
10/3:青い鳥文庫のお便り『青い鳥通信』の内容決定日。
ここで「12月に発売」と載せたら「書けませんでした」では済まない(-_-;)。12月発売にするか?1月にするか?諸事情により1月にするのはかなり厳しく、12月に決定。
以下日程は、通常のスケジュールより1ヶ月半遅れを関係者全員が特急で仕上げたもの。
10/5:やっと原稿が書き上がった!
ここで編集のモモタと作者綾小路で打ち合わせ。内容の矛盾の書き直しや、漢字の統一など。
そのまま編集者モモタは、作家の原稿を印刷の規格にあった状態に治す「セント・ワーズ」に持っていく。規格を調整しながら、言葉の統一やどこまでルビを入れるか、の確認なども行う。
10/7:委託している印刷会社に渡す。
目次は書体を変えるか、「扉」の空白ページを入れるか、などの調整。漢字や書体は、青い鳥文庫に「この場合はこの漢字を使う」「ここではひらがなにする」のルールがあるのでそれに従う。
10/12:校閲その1(初校)
印刷会社から『ゲラ』(文庫を開いて全部コピーした感じのもの)が仕上がった。イラストレーター、感想を述べてくれる人たち、校閲局に回す。校閲では漢字の変換ミス、外国語表記の調整、事実と間違っていることがないかなどを確認する。ここで大変なのは、変な言葉があった場合に、ミスなのか、あえて統一していないのか、その作家やシリーズの特徴を分かった上でやらなければいけないということ。特に児童文学の場合は、現代の言葉遣いが自然だが、あまりにも日本語を崩すわけにもいかない。
10/14:イラストレーターから、カバーのラフ画が届く。
経理上の確認をするために業務部に。「クリスマスだから金色にしたい」「本の値段がこれだけ高くなるよ。こうしたら安くなるよ?」みたいなやりとりになる。
10/18:カバーデザイン
イラストレーターのカバー絵が決り、カバーデザインを決めるためにデザイナーのところに持っていく。題名の配置、フォント、色を決めていく。(書いていないけど帯もこの段階で決めるのかな?いつもさっさと捨ててしまってごめんなさい。。)
さらに、本文のイラストの配置を考えるのも編集者の仕事。本の全体のページ数から、本文のページ数、目次や扉の空白ページ、奥付の枚数を引いて、どのくらいのイラストを入れるかを計算する。そして何ページ目にイラストを入れるかを指定する。イラストの入れ方は4種類ある。「1ページまるごとイラスト」「ページの縦半分二イラスト」「上下どちらかの半分にイラスト」「小さいイラストをはめ込む」。全体にバランスよく配置する。それによりどの文字で改ページになるのかなど、一つ一つ数えていく…^^;
10/15:イラストの配置が決まったら、イラストレーターに依頼する。イラストレーターの意見が取り入れられて、本文修正になることも。
10/27:完成したイラストを作家に回して最終確認。(小説なので、お互いにわかり合い褒め合ってスムーズに進んでいますが、ここで差し戻しとかになったらどうなるんでしょう…)
10/28:校閲から戻ってきたゲラで、作家と調整。
10/31:「編成表」を持って印刷会社へ。
編成表とは、本全体の中で、何ページ目が目次で何ページ目にイラストが入る…ということを書いたもの。
11/2:印刷会社から再校が出来上がる。そのまま校閲局にもちこむ。
11/4:校閲と同時進行でページのデザインをデザイナーに依頼する。
人物紹介、あとがきは、本文とは別にデザインする。本文の内容にあうように、そして今回はクリスマスとうコンセプトに合うように。
11/11:校閲終了。
通常ではこのように1週間で校閲終了はありえないほどの超特急だそうな。せめて2週間ほしいらしい。
その後作家やイラストレーター、本当に最後の確認。
11/22:印刷会社に再校原稿を戻す。(遅れに遅れに遅れてる)
小説ではここでISBNナンバー取り忘れに気が付き、慌ててナンバーを取っている。
なおISBNナンバーとは日本を含む世界中で取られている本の固有番号。この番号で検索もできるので、いわゆる本の戸籍のようなもの。奥付や裏表紙に印刷されている「978−4−〇〇〇〇」というナンバーで、本のバーコードナンバーでもあります。
11/24:印刷のまえに「下版」というものを作ります。
どのような印刷をして、折り畳んで、カットしていくのか、を初めて知りました。
11/25:印刷開始。
カバー制作。
カバーに薄いセロハンのようなものを貼る。
それぞれ別の会社に下請け。
11/30:製本。
本に表紙を付け、カバーを掛け、栞やはがきや通信などを挟む。(すぐに捨てててごめんなさい…(-_-;))
12/6:講談社に、完成した本が届く。
講談社の本を書店に渡す「取次」という販売会社に回す。
12/9:発売日!
書店に本が届く。書店員が配置やレイアウトを考える。
12/12:セールスパートナーの書店確認
講談社と書店の間をサポートする「セールスパートナー」が書店を回り、お互いの希望を聞いたり、補充数の計算をする。 -
編集者の決まり文句
「そこをなんとかお願いします!」
作家、画家、編集部、校正校閲、販売、印刷所、取次、書店…
発売日に間に合うのか!?
各業界の出版奮闘記
本の出版はチーム戦なんだなぁと
テンポよく読めて楽しい本でした
ミセス閲子が
校閲ガールと重なりました -
2021.8.15読了
原稿が出来上がり、本屋さんに並ぶまでを小学生にもわかるようにやさしく丁寧に説明してくれています。
作家さんと編集さんは一心同体なんですね。 -
子供に大人気の青い鳥文庫の作成工程がわかる本!
ここ半年読んだ本の中で一番おもしろい! -
一冊の本ができるまで、どのくらいの人が関わるかがわかる。作家や編集者はイメージしやすいが、それ以外は注目されにくいので。
本に関わる仕事がしたいと思ったときに参考にできる。 -
第46回アワヒニビブリオバトル「まだ」で発表された本です。
チャンプ本
2018.12.04 -
文庫版も買いたい
私は青い鳥文庫といえば『クレヨン王国シリーズ』でした。(お読みになったことありますか?)
どの本か忘れ...
私は青い鳥文庫といえば『クレヨン王国シリーズ』でした。(お読みになったことありますか?)
どの本か忘れたのですがこんなようなエピソードがありました。
異世界に行った登場人物たちが、ある脅威にさらされる。そこで一円玉をおでこにつければその脅威にさらされない、という話になって、お金持ちが大枚はたいて一円玉と交換し、何十枚もおでこにつけて嬉々としている、、、。
ここが皮肉っぽくて、お気に入りでした。
懐かしいです。
今まで忘れていたのに。
子供のころは本の中の世界に夢中になるか、それを考える作家さんに親しみを覚えるくらいで、手元に届けてくれるいろいろな人の事は考えたこと無かったです。
nejidonさんの【本にまつわる本】カテゴリの本のレビューはそんな方々の貴重なお仕事や熱い思いを知ることができてありがたいです。
コメントありがとうございます!
はい、クレヨン王国、もちろん読みましたよー!大好きでした!
むしろ5...
コメントありがとうございます!
はい、クレヨン王国、もちろん読みましたよー!大好きでした!
むしろ5552さんからそのタイトルが聞けたことに驚いています・笑
レビューの中では「ムーミン」と「コロボックル」と書いてますが、ちょっと不思議で可笑しい話が大好きなのです。
あと、皮肉が効いてるのも好きです。
この本はすごく面白いので、5552さんにもぜひお読みいただきたいです。
手元に本が届くまで、どれほどたくさんの人の手が必要か、いっぱい教えてくれます。
早く読みたいしか思っていなかったのに、そんなにバックに人がいたんだって、目からウロコです。
あらま!「本にまつわる本」として読んで下さっててすごく嬉しいです(#^^#)
今までやってきて良かったと、初めて思いました(涙)
5552さん、また面白い本をたくさん読んでいきましょうね。
この本はたまたま出会いまして、レビュー書いてみたらnejido...
この本はたまたま出会いまして、レビュー書いてみたらnejidonさんがいる!しかも自分が「いいね」していました。^^;
これは本当に良いお話でした。
本をつくる仕事についてだけでなく、自分が誰かのために何かをすることの大切さを思えました。