量子力学の哲学――非実在性・非局所性・粒子と波の二重性 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881227

作品紹介・あらすじ

世界の描き方はひとつではない!?コペンハーゲン解釈、多世界解釈、逆向き因果…知的刺激にあふれる科学哲学の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 「本書では、量子力学のさまざまな解釈を紹介する。これらはいずれも「解釈」であるから、量子力学が経験的に正しいこと(実験事実をうまく予測したり説明したりすること)を認める。つまり、実験的に確かめることができるものについては、どの解釈も一致しているのだ。それゆえ、どの解釈が正しいのかを実験的に確かめることは、いまのところできない。だから、これは「科学」ではなく「哲学」なのである。(p.7)」

     量子力学の非-常識的な性質は、それこそ量子力学が提唱された黎明期において既に指摘されていた。それというのは、本書の副題にあるように、「非実在性・非局所性・粒子と波の二重性」のことである。以降、不可思議な量子の世界を何とか人間が分かる形で言語化しようと様々な「解釈」が考案されてきたが、残念ながら未だ、物理学者や科学哲学者の皆が同意するような解釈には至っていない。
     量子力学に対する批判として最も有名なのはEinsteinらによるEPRパラドックスの議論だろうが、量子力学の非-常識さを定量的に表現できたのはBellの定理が最初らしい。本書も、このBellの定理から始まる。
     Bellの定理の主張は、「(B1)量子力学系における物理量はいつでも明確な値をもっている (B2)量子力学系において局所的な相関しかない (B3)量子力学は経験的に正しい の三つが同時に満たされることがない(p.120)」というものである。現在の標準的な解釈(コペンハーゲン解釈)は、(B1)と(B2)を諦め、状態の収縮を認める射影公理を導入するというものであるが、この「諦め方」は他にも色々な可能性が考えられる。本書では、その様々な解釈がパターンごとに整理されて紹介されている。名前だけ列挙すると、GRW理論、デコーヒレンス理論、軌跡解釈、多世界解釈、裸の解釈、多精神解釈、単精神解釈、一貫した歴史解釈(多歴史解釈)、様相解釈、交流解釈、時間対称化された量子力学…。こうして改めて並べてみると当然というべきか結構沢山あって驚くが、Bellの定理やKochen-Speckerの定理などのNO-GO定理のために何かを守るためには何かを諦めねばならないので、そこに解釈の「個性」が生じるわけだ。
     筆者の一推しが、「時間対称化された量子力学」という解釈である。この解釈によればBellの定理を破ることなく実在性や局所性を守れるので、著者の『アインシュタインvs量子力学』を読んだ時は、どこが悪いのか・なぜもっと支持されないのかが分からなかったのだが、本書では、確かに有力ではありつつ問題点があることも述べられていた。曰く、「ハーディのパラドックス」と呼ばれる状況において、負の確率(みたいなもの)が出てきてしまうそうだ。しかも、それが単なる思考実験にとどまらず、大阪大学の研究チームによって実際の実験として行うことに成功したらしい。この負の確率に対して幾つか説明が提案されてはいるそうだが、取り敢えず留保というのが現状のようだ。負の確率がどのようにして導かれるのか非常に気になるが、本書では数式などは登場しないので分からないのが残念。
     新書にしては、とても難解。多分、常識が通用しないために理屈を積み上げていくしか方法がなく、頭がこんがらがってしまうんだろうなぁ。

    はじめに
    1 量子力学は完全なのか 量子力学のなにが不思議なのか1
    2 粒子でもあり波でもある? 量子力学のなにが不思議なのか2
    3 不可思議な収縮の謎を解け
    4 粒子も波もある
    5 世界がたくさん
    6 他にもいろいろな解釈がある
    7 過去と未来を平等に考えてみる
    読書案内
    索引

  • さわりは良かったのだが、中盤から理解しづらい内容であった。数式が出てくると途端に拒否反応が出てしまうのはなぜだろう。

  • 2023.03.21 『未来の年表 業界大変化』の巻末の現代新書目録から見つける。シュレディンガーの『生物とは何か』と同様、量子力学と生物・人間との間の橋渡しの役割を担うのだろうか?

  • 量子力学は完全なのか―量子力学のなにが不思議なのか1◆粒子でもあり波でもある?―量子力学のなにが不思議なのか2◆不可思議な収縮の謎を解け◆粒子も波もある◆世界がたくさん◆他にもいろいろな解釈がある◆過去と未来を平等に考えてみる

    著者:森田邦久、1971姫路市出身、科学哲学者、大阪大学基礎工学部→同大学基礎工学研究科→同大学院文学研究科、早稲田大学高等研究所准教授

  • サイエンス
    哲学

  • 難しい.
    こんなに読み返したり理解が追い付かない本は久しぶり.

  • 量子力学の哲学――非実在性・非局所性・粒子と波の二重性 (講談社現代新書)
    p.30
    「アインシュタインの議論のどこに欠点があったのか。これにはいくつかの論点がある。ひとつは彼らが局所性を仮定していたことに問題があると言うのだ。」
    そして、
    「この論文では『本質的な事柄がぼやけてしまっている』とシュレーディンガーへの手紙の中で不満を漏らしている。」
    恐らく、アインシュタインが拘っているのは、量子力学の確率解釈の部分であろう。しかし、局所性の問題の方にスポットが当てられてしまったのだ。
    当然隠れた変数が認められていないのであるから、現在の量子力学における確率解釈は、その本丸である。

  • 新書文庫

  • 非常に興味ある分野だが、この類の本を読み進めるほどに量子力学の難しさにも直面していく。
    哲学という分野も同じ。
    ただわからないなりに読んでもやっぱり興味深い分野だしもっともっと知りたいという欲求が出てきます。
    というわけでこの本も難しかったけど面白かったです。

  • 粒子か波か?それが問題だ(笑)

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著者プロフィール

1971年兵庫県姫路市生まれ。現在、大阪大学大学院人間科学研究科准教授。博士 (理学)、博士 (文学)。専門は科学哲学。主な著書に『科学とはなにか』(晃洋書房)、『量子力学の哲学』(講談社現代新書)、『科学哲学講義』(ちくま新書) 、『アインシュタイン vs. 量子力学』(科学同人)など。

「2020年 『時間という謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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