憲法改正のオモテとウラ (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062882514

作品紹介・あらすじ

【憲法改正とは「政治」そのものである】

参議院の圧力、省庁の縄張り争い、
政官業癒着勢力の暗躍……。

小泉政権時に「新憲法起草委員会」事務局次長を務めた
著者がはじめて明かす、改正議論の舞台裏。

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前文に歴史観や思想は必要なの?

天皇を元首ごときにしていいの?

憲法改正を利用して、既得権益を守ろうとする
省庁や族議員が存在する!

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〈本書の主な内容〉

第1章 参議院への配慮と自民党内の政治力学
 ・ 改正論議の裏で繰り広げられた権力闘争
 ・ 読売新聞にスクープさせる「暴挙」
 ・ 「こんなふざけた案は絶対に認めない」
 ・ 秘密を守れない政治家たち
 ・ 反発する参議院への配慮と自民党内力学 ほか

第2章 どうすれば国民に支持されるかを考える
 ・ 安倍氏が全面書き換えを主張した理由
 ・ 前文に価値観はそぐわない
 ・ 天皇は元首なのか
 ・ 「元首ごときにするには畏れ多い」という意見
 ・ 自衛軍か国防軍か
 ・ 目先の問題解決策を憲法に求めてはならない
 ・ 「個人」の重要性をわかっていない「第2次草案」
 ・ 封殺された一院制論
 ・ ポピュリズムの危険性が高い首相公選制
 ・ 最高法規を愚弄する行為
 ・ 財務省 vs. 総務省
 ・ 理論武装させられた族議員によるバトル ほか

第3章 政治の荒波に翻弄された条文化作業
 ・ 諮問会議メンバーを固辞する学者たち
 ・ これが政治力学
 ・ 「総理は今、それどころではないんだ」
 ・ 失敗に終わった「軽井沢工作」
 ・ 自然描写や歴史に触れるのは中国憲法と同じ ほか

感想・レビュー・書評

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  • 東京都知事の座を追われた舛添氏であるが、小泉時代、自民党憲法第一次草案に関わっていたため、野党時代に気楽な立場で書かれた現行の第二次草案を痛烈に批判。「立憲主義」を無視した点。個人を(犬や猫でない)人に変えてしまう点。「良き伝統」など個人が判断すること。天皇を元首とすると政治的責任を伴う恐れがある。憲法を制定するのは主権者国民であり自分で作りながら自分に守らせる条項は不要。なかなか鋭い。今後は自民党から離れた自由の身から積極的に批判していただきたい。

  • 知られざる自民党憲法改正第1次草案成立までのドキュメント。本気で改正を目指した現実路線。立憲主義の堅持。第2次草案に引き継がれている問題点もありますが、なかなかの出来だと思います。少なくともこれは憲法になってます。
    改めて舛添さんの実務能力の高さを感じるとともに、頭の固い悪い意味で学者臭さもプンプンしてます。読み物としてはつまらないとしか言えませんが、貴重な歴史的資料であることは間違いないでしょう。
    これだけの仕事をした人があんなにつまらないことで活躍の場を失ったのは身から出た錆とはいえ、残念です。

  • 配置場所:摂枚新書
    請求記号:323.149||M
    資料ID:95160074

  • 本書の主旨は、元東大助教授の政治学者として立憲主義の重要性を説くと共に、小泉政権時代に憲法改正案作成行い、その際に自民党内ですら大きく意見が分かれて政治的な力学が働き、それによっていかに苦労して作成したかというもの。
    一方、なぜそれほどに苦労したかと言えば、広く意見を聞き、憲法改正要件を満たすような改憲草案をつくろうとしたことによる。
    ちなみに桝添氏が関わった2005年の草案の内容は郵政の政局に飲み込まれ、2012草案のものとは全く別物である。もっと広く読まれて良いと思う本。

  • 4〜5

  • 現在、東京都知事の枡添要一氏が、2005年に発表された自民党の「新憲法草案」(第一次草案)の策定過程とその議論の内容を振り返りながら、2012年に自民党が発表した「日本国憲法改正草案」(第二次草案)を立憲主義に悖る憲法草案として批判している。
    枡添氏は、自民党時代、第一次草案の取りまとめ責任者であり、憲法草案策定の政治過程が克明に記録されている。憲法改正案の起草は純学問的なものではありえず、政治力学抜きには考えられないということが強調されているが、学者が起草するならともかく、政治家が起草する以上、それは当たり前のことではないかとも思ったが、マスコミへのリーク、参議院の影響力、省庁間での対立など、その政治力学が実際どのように働いていたかが顕わになったことに本書の価値がある。
    著者のスタンスは、第一次草案策定の頃の自民党には、まだ政策的な多様性があり、左右両面から闊達な議論が行われ、立憲主義の基本は崩さない憲法草案ができたが、第二次草案は立憲主義に反する憲法草案に成り下がっており、自民党の政策的多様性が失われていることが懸念されるというものだ。第一次草案の内容やその議論の過程がそんなに素晴らしいものだったかには疑問もあるが、第二次草案が右側に偏りすぎ、立憲主義的憲法としてふさわしいものではないことは確かであり、著者の認識には基本的に同意する。
    憲法改正についての個々の論点については、枡添氏と方向性は同じものが多かったが、少し疑問に思う点もあった。例えば、前文に価値観や歴史観を持ち込むべきではないという主張について、中曽根案のような日本賛美調の前文には評者も違和感を覚えるが、価値観や歴史観が皆無の前文は無理ではないかと思う。現行の前文に取り上げられている社会契約説的な考えや平和主義も価値観であることに違いはなかろう。また、地方自治の財源保障にかかる議論を総務省と財務省の権限争いと矮小化する主張にも違和感を覚えた。地方自治体への財源保障は地方自治の仕組みを考えるうえで重要な論点であり、総務省と財務省の議論は単なる権限争いとはいえないと思う。
    実際に憲法改正をなしえようと思ったら、独りよがり案ではなく、国民や野党にも理解される案にしなければならないという著者の主張はそのとおりだと思った。その点で、第二次草案は著者の言うとおり、失格だと思う。評者も憲法改正は必要だと考えているので、自民党、あるいは民主党等の野党には、「現実的」な憲法改正草案を改めて起草してもらいたいものである。

  • 7月新着

  • 323.1||Ma

  • 立憲主義!

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著者プロフィール

舛添要一(ますぞえ・よういち)

 1948年、福岡県に生まれる。1971年、東京大学法学部政治学科を卒業し、同学科助手。パリ大学現代国際関係史研究所客員研究員、ジュネーブ高等国際政治研究所客員研究員などを歴任。1989年、舛添政治経済研究所を設立。2001年、参議院議員選挙に出馬し、168万票を得て当選。 2005年の自民党「新憲法草案」のとりまとめに際しては中心的な役割を務め、2006年からは参議院自民党の「ナンバー3」政策審議会長を、2007年からは厚生労働大臣をつとめる。2014年、東京都知事に選出される。
 著書には、『母に襁褓をあてるとき―介護闘い日々』(中公文庫)、『内閣総理大臣―その力量と資質の見極め方』(角川oneテーマ21)、『永田町vs.霞が関』『日本新生計画』『日本政府のメルトダウン』『憲法改正のオモテとウラ』(講談社)などがある。

「2014年 『母と子は必ず、わかり合える 遠距離介護5年間の真実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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