- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062882743
作品紹介・あらすじ
目に映っている現実は、決して唯一無二の世界じゃない!
目で見ることも、手で触れることもできないけれど、
たしかに存在するあの〈懐かしい世界〉へ読者を誘う
ベストセラー『独立国家のつくりかた』で〈社会〉と対峙した坂口恭平が、
今度は私たちの〈無意識〉にダイブする!
感想・レビュー・書評
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「現実逃避」ではなく、「現実脱出」。似ているようでまったく異なる。
坂口氏は、一般的に言われる「現実」も、自分の周りにいくつかある仮想空間のうちの1つでしかないという。彼の言う「現実を脱出すること」=「思考」であり、「まずは、現実に自分の体を合わせるのではなく、自分自身の思考をちゃんと中心に置くことだ。現実という他者に合わせて生きるのではなく、自分が捉えている世界を第一に据えよう。」と主張する。
思考こそが、生きることそのもの。見えているものが世界のすべてではない。数年したら再読してみたい一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いつ買ったかは覚えていないけど、読了。
「人とズレてる」とか「アブノーマル」とか、はたまた「イかれてる」とか形容されがちだけど、確かに私が感じていて、今も息しているあの感覚を、どうしてこの人はこんなにも見事に言語化できるんだろう。
「現実」とか「常識」とかに対する一種独特の距離感は私にも見覚えがある。というかありまくり。
そういう感覚というか、正確にはある種の「テクニック」なんだけど、言語化も出来なければ、人にも勧められなかった。
坂口さんにとっては、大事な創造の源泉であり、創作活動そのものなんだなということが分かった。俄然、この人についての興味は高まるばかりである。 -
現実脱出論
「独立国家のつくりかた」の2匹目のドジョウのようで、あまり参考にならなかった。
ただ、本書にある「躁も鬱も機械の動作に過ぎない」という言葉。
これを理解するために、自分は進化心理学や脳科学の本が好きなんだと再認識した。 -
時に重苦しくのしかかり、時にゲラゲラと笑わされながら読了した。ともすれば狂気とも捉えられる、大人になったら殆どの人の眼に見えない不思議な感覚、それを大事に保持出来ている著者の感性のオモシロさ。希死念慮は脳の誤作動という言い回しも凄い。田中圭一センセのうつヌケとともに、鬱持ちの方にはオススメします。
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「現実を見ろ」「現実は甘くない」といったような説教でよく使われる「現実」を脱臼させ、がんじがらめになってしまった私たちの生き方に自由の息吹を吹き込もうとする試みです。
現象学や哲学的人間学に通じていれば、もう少し厳密な仕方で同じような発想を扱うことも可能なのかもしれませんが、本書では哲学的な概念に頼ることなく、著者自身の体験に基づいて、言わば素手で議論を切り開いていこうとしています。著者の知性の膂力を感じさせる本だと思います。
ただ、社会のレヴェルの問題を個人のマインドセットの問題に還元してしまうことに伴う危険性にも、目配りしなければならないように思います。何も松本哉を見習ってイデオロギー的な立場を鮮明にするべきだと言うつもりはありませんが、個々人が感じている生きづらさは、同時に政治的な問題でもあるという視点は、必要ではないかと考えます。 -
あるブログで薦められていたので、手に取る。
冒頭から引き込まれ、一気に読めた。論というほとカタくなく、むしろ著者独自の体験に根差した提案であり、エッセイ集という感触だった。また、『独立国家のつくりかた』(未読)の著者とは知らなかった。
文章が美麗。修辞が豊か。単なる麗句ではなくて、その表現である必然を感じる。
広義の創造行為が鍵かな、と。 -
すごい!!!
文庫版の書き下ろしも読まなくちゃ。 -
思考と現実との付き合い方。ついつい現実にのめり込んでしまっている我々は、多くの思考という空間を見失っている。五感が感じるもの以上に我々の思考空間は豊かで、現実以上に認識すべき存在である。現実が全てではないことを痛感した。