飛行機の戦争 1914-1945 総力戦体制への道 (講談社現代新書)
- 講談社 (2017年7月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062884389
作品紹介・あらすじ
大艦主義に隠された戦争の実態は? なぜ国民は飛行機のために人、金、物を提供したのか? 気鋭の研究者が描く総力戦体制への道。
感想・レビュー・書評
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あたかも第1次世界大戦から第2次世界大戦までの航空戦の通史を思わせる書名だがさにあらず。日本において軍部やメディアが戦争における軍用機や航空戦の必然性・必要性をいかに宣伝し啓蒙したか、大衆がいかにそれを受容して航空戦力を主とする総力戦体制の担い手となったか、その変容を多彩な史料から明らかにしている。 単なる戦史、兵器開発史では全くなく、常に「銃後」としての地域社会とそこに生きる人々が視野に入った社会史的な研究となっている。
本書が再三強調するのは、戦後人口に膾炙した「日本軍は時代錯誤の大艦巨砲主義を信奉し、空軍力を軽視した」式の主張は事実ではなく、第1次大戦以降、陸海軍やそれに付随したメディアは航空戦が戦争の主役となったこと、それゆえ飛行機の軍事利用の重要性をことあるごとに喧伝し、大衆レベルでも女性や子どもまで含めて受容していたという点である(むしろ軍艦増強を続けるアメリカ批判の文脈で「大艦巨砲主義」が用いられた)。非合理な精神主義ゆえに対米戦争に突入したのではなく、日本は国力で劣るというリアルな共通認識ゆえに、集中投資的な航空戦力をもって早期決戦を図るという、疑似合理性を装った思考が好戦的世論を形成したとみなす。飛行機の威力が戦局の帰趨を決するという認識が国民的に共有されていたからこそ、戦時期の航空機増産体制は支持され、航空「特攻」も受容されたという見方は説得力に富む。今日の排外的・好戦的世論や政治、あるいはゲームやアニメなど娯楽コンテンツにおける「ミリタリーもの」の「啓蒙」効果を批判的に捉える上で、参考にもなろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
太平洋戦争の敗因として、大艦巨砲主義があげられることが多いけど、それは歴史の塗り替えがあったからだとする。
日本はその生産力の低さからも航空主兵論を早くから訴えてきた。実際に国民もそれを受け入れていたらしい。悲しいのは、貧困からの脱出のために海軍、それも航空部隊に就職するしかなかったこと。だからパイロットは東北出身者が多い。
戦争を遂行する戦略はそう間違ってはいなかった。ただ戦略をたてる前提が間違っていたわけだ。それは損耗率と技術力だと思うのだが、実はこの手合いの本で日本の技術力に因を求める者は少ない。不思議だ。何か理由があるのかな。 -
ジャケ買いして「タイトルに釣られた・・・」と思った一冊。
日本航空戦史・航空技術発達史ではなく、戦前戦中の日本国民が軍用飛行機や航空戦をどのように認識していたか、を書いた本。前者を求めている人にはおすすめしない。
内容は、戦前戦時期の日本国民は大鑑巨砲主義一辺倒でなく航空機・航空戦の認識もちゃんと持っていた、というもの。課題設定は悪くないし、事例も豊富で勉強になるところも多い。
ただ、全体的に読みづらい。例えば、当時どのような媒体で軍事知識が流布していたのかをまず簡潔に整理するなど、読みやすくなるように工夫してほしかった。 -
ん…読みにくいのですね。情報量は多いのですが。なぜ?
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別段日本だけが大艦巨砲主義ではなく、日本も大艦巨砲主義であったわけではなく、戦の趨勢を決定する大きな要因が航空機であることはちゃんと判っていたというはなし。
大艦巨砲主義で負けたわけではなく、根本的な国力の差ですよね。 -
”日本軍=大艦巨砲主義=時代遅れで敗北”
分かり易いからなあ~・・・^^;
おわりに「人とその学問的思考はしょせん同時代の空気と
無縁ではありえないことを理解したうえで、
継承すべきは継承し、改めるべきは改めるのが
後の世代の務め~・・・」 -
日本で、飛行機のパイロットが一番いた時代は、1940年代の戦争のときだろう。第二次世界大戦は、戦艦大和や武蔵という巨艦が建造されたが、その巨艦たちも、小さな飛行機の群れによって、撃沈された。この本は、1914年より1945年までの戦争の飛行機について解説している。ICUは、日本で一番飛行機を作成した中島飛行機の研究所の跡地に作られている。
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東2法経図・開架 B1/2/2438/K