- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062901048
作品紹介・あらすじ
文学への純粋な情熱を胸底に七十八年の生涯を私小説一筋に生きた上林暁。脳溢血で半身不随、言語障害を患った晩年も、左手と口述で一字一句、彫心鏤骨の作品を生みつづけた。川端康成に賞賛された出世作「薔薇盗人」、心を病む妻を看取った痛切な体験を曇りない目で描く「聖ヨハネ病院にて」、生と死のあわいを辿る幻想譚「白い屋形船」(読売文学賞)等、人生の苦悩の底から清冽な魂の言葉を響かせる珠玉短篇集。
感想・レビュー・書評
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私小説と創作両方混ざっているので、区別が付きづらい。
病床の人が多く出て来るので明るい話ばかりではない。
描写が細やかでその場の風景が想像しやすい。
「野」「白い屋形船」川端康成との交流を書いた「上野桜木町」が良い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
単なる私小説作家ではありませんでした。ご自分の身近な人たちを題材にしながらもそこに人間の普遍性を冷静に分析しています。
この短編集には
「聖ヨハネ病院にて」 「大懺悔」 「薔薇盗人」 「野」 「姫鏡台」 「柳の葉よりも小さな町」 「美人画幻想」 「白い屋形船」 「上野桜木町」 「ブロンズの首」
みんないい文章なのですが、その中でも「上野桜木町」は印象的。
自殺した川端康成との交流を追想しているのですが、はじめは編集者としてお付き合いし、原稿取りに苦戦し、後に自身も作家となって敬愛する先輩となります。ノーベル賞作家となった川端康成の人間味のある姿が生き生きと描かれています。 -
2018/2/16購入
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前半は貧乏や病気がテーマのド私小説。その手のテーマについてはやせ我慢した書き方のほうが好みなので、読んでいてあまり楽しくない。「私」が状況にあまりに正面から向き合ってしまっていて、お人よしすぎてつらい。
最後の3編は良い。特に「白い屋形船」は、脳溢血で倒れて混濁した意識から生まれた幻想が独特で、読み応えがある。
「上野桜木町」と「ブロンズの首」は、それぞれ長い付き合いのあった川端康成と久保孝雄との交流が、温かく懐かしく書かれている。