泡/裸木 川崎長太郎花街小説集 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062902496

作品紹介・あらすじ

川崎長太郎には、小田原の花街・宮小路を舞台にした
〈小津もの〉と呼ばれる一連の作品がある。スター的映画監督・
小津安二郎と三文文士・長太郎が、ひとりの芸者を巡り対峙する。
長太郎に勝ち目はない。ひたすら〈純情〉を武器に、小津の
独身貴族的不誠実を衝く。小津自身に読まれることを
見越した如く書かれた挑戦的な戦前・戦中作九篇に、ヒロインの
その後を辿る戦後作を加え全十篇を収録。半数は単行本未収録。

感想・レビュー・書評

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  • 小津ものと呼ばれる作品を集めた本。

    ずーっとそれ。たぶん同じ時間軸のところがたくさんあるんだけど、それを手を変え品を変えて、散々深堀して書いている。途中、割とつらかった(笑)
    ここまでの執念、いったいどこから出てくるのだろう。「何のために生まれて来たのやら」返答に困ると書いている人なのに。

    最後の作品からあとがきにかけて、一人の女性の生涯が見え、自分がいかに生きる力の弱いことかを思い知らされた。
    生きていく、彼女はそこまで強い意志をもって生きてはいなかった、というより、意識をして生きていないような気がする。変な例えかもしれないけれど、生きているから生きていく、犬や猫…そう、長太郎の晩年の作品にある、自殺を知らない牛や馬のように、とでもいうのかな。

    小津や長太郎より一番生きていた、そんな感じのする女性だった。理屈抜きのしたたかさ。
    そこには孤独な生い立ちがあるんだけれどね。
    ちょっと目が覚めた気がした。

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著者プロフィール

川崎長太郎(1901.11.26~1985.11.6) 小説家。神奈川県生まれ。小田原中学を中退して、家業の魚商につく傍ら、同郷の民衆詩人福田正夫に師事、左翼的作品を発表。1920年頃より上京、帰郷を繰り返す。繰り返す。23年、萩原恭次郎、、岡本潤らと「赤と黒」創刊。震災後アナーキズム運動から離れ、25年、徳田秋声の推挽で「無題」を発表、文壇デビュー作となる。私小説家を目指すが、不遇な時代が続く。38年、永住の覚悟で帰郷、実家の物置小屋に棲み、創作に専念。54年、娼婦たちとの関わりを描いた『抹香町』で長太郎ブームが起きる。62年、結婚。私小説一筋の生涯を貫いた。著書に『裸木』『浮草』『女のいる自画像』『女のいる暦』『忍び草』『幾歳月』『淡雪』『夕映え』『老残/死に近く 川崎長太郎老境小説集』『泡/裸木 川崎長太郎花街小説集』など多数。

「2015年 『ひかげの宿/山桜 川崎長太郎「抹香町」小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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