エウセビオス「教会史」 (上) (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
3.33
  • (1)
  • (0)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 50
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062920247

作品紹介・あらすじ

イエスの出現から「殉教の時代」を経てコンスタンティヌス帝のミラノ勅令による「公認」まで、キリスト教最初期三〇〇年の歴史。以後記される教会史の雛形となって著者エウセビオスを「教会史の父」と呼ばしめ、アウグスティヌスの著作とともに現代に至るキリスト教世界の価値観の原点ともなった『教会史』全一〇巻を全訳、詳細な註と解説を付す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最初のキリスト教史とされるエウセビオスの「教会史」。巻末で翻訳者が愚痴っている通り正確な文章という感じではないけど、読みやすさについてはそこまで感じなかったので秦氏さすがだなあと思った。4世紀当時のキリスト教徒たちの認識ってこんな感じだったんだと思うと興味深い。ユダヤ人たちがイエス殺しとキリスト教徒迫害の「報い」を受ける様子、信徒たちが受けた拷問の様子なども誇らしく生々しく、たくさん引用して報告している。ローマ皇帝からの寛容令を勝ち取った当時、長い苦難を乗り越えて輝かしい未来が開けていく実感があったんだろうなあ。
    訳者はエウセビオスについてキリスト教の反ユダヤ人感情をあおり歴史へ乗せた戦犯の一人だというようなことを書いている。その後の世界の歴史から見たら責めたくなるのだろうけど、当時のキリスト教徒たちがあれだけ苛烈な告発と拷問、虐殺にかかわり続けたユダヤ人たちを憎まないでいられるはずもないし、この時点ではそれもやむなしじゃんと思ってしまった。逆に敬虔なユダヤ人からしたら、キリスト教徒は殺したくなるほど憎い組織破壊者、異端者なのも分かるけどもね。

  • 新書文庫

  • 初期キリスト教の概要?を記した本。イエスとされる人物が死んでからどういう風にキリスト教会が興っていったかを最初に綴った本らしい。
    この本を読んでやや意外なのは当初の発展の中心はどうもギリシャ周辺や地中海沿岸だったらしいこと。
    そしてそのため、狭義の解釈等についてはギリシャ哲学がかなり援用されてるっぽいこと。
    多分、ヨハネの福音書の「ロゴス」という概念はその辺りからきてるんだろう。
    後、印象深いのはユダヤに対する憎悪。イエスが殺された恨みからなんだろうが殺されて当然みたいな表現はとても「愛」の宗教とは呼べない。
    「異教徒には死を」みたいな部分は当初からの特色だったというのはユダヤ教を根にしているからなのか。
    しかしキリスト教がユダヤ教の異端であることを思えばキリスト教自体から異端が生まれるのも必然だわな。
    さて、正統教会とやらは異端どもにどんな仕打ちをしてきたのやら。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

多摩美術大学名誉教授
国際キリスト教大学卒、京都大学大学院、ドロプシー大学大学院(フルブライト、Ph.D)、ペンシルヴァニア大学大学院上級研究員、オックスフォード大学客員教授(1999—2000年)、同大学客員研究員(2001年以降)、現在ケンブリッジ大学(クレア・ホール)フェロー終身会員、(ウォルフソン・コレッジ)フェロー終身会員、イェール大学大学院客員研究員

「2016年 『マカベア戦記 下 ユダヤの栄光と凋落』 で使われていた紹介文から引用しています。」

秦剛平の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジョン・ミルトン
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×