死海文書のすべて 新装版

  • 青土社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791761722

作品紹介・あらすじ

イエスの時代を解明する鍵としてセンセーションをまき起こし、近年ようやく全巻公開されたテクストを、精緻に吟味し、その謎に包まれた全貌を犀利にときあかした、定評ある最新の研究。

感想・レビュー・書評

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  • 英語の原本は1994年。日本語版の本書は、新装版として2005年に刊行されている。その当時における、死海文書の最新研究の知見と情報が盛り込まれており、350ページ超の読み応え抜群の本になっている。

    1947年にパレスチナで発見された古代の聖書の写本。それまで写本が見つかったことのなかったパレスチナで、それから1956年までの間に多くの写本が見つかり、その研究が始まった。本書では、発見された古代の巻物の年代特定方法を基礎としてまず押さえ、写本を書いたとされるクムラン・グループと呼ばれる人たちの素性、その中でも有力な説とされる「クムランのエッセネ派」の生活様式や彼らの神学の特徴、発見された写本と旧約聖書や新約聖書との関係性や類似点、相違点などが丁寧に触れられていく。
    特に、ヨハネの洗礼、テクストで使われている言語、所有物に関する考え方の違い、パンと葡萄酒の扱い、終末論やメシア思想など、様々な点からクムランと新約聖書の関係性を紐解く第6章は、史実をもとにした推理小説のようで面白くて仕方ない。

    最終章の最後で、当時、日本語でも翻訳され広く世に出回っていた『死海文書の謎』という本が、事実を正確に記していない読むに値しない本であるということにも触れられている。とはいえ、同署はいまだにAmazonブックレビューを見るとそこそこ高い評価を受けているわけで、インチキ本でも世に出回れば事実無根の妄言がのさばってしまうということの怖さを感じさせる。ちゃんとした考古学の本にしっかり触れることの大切さについても感じさせてくれる。

  • 死海文書の発見・刊行に関するあれこれの状況、解読された内容の丁寧な解説、そこからクムラン共同体の正体、思想についての議論を洗い出し、当時のユダヤ教や初期キリスト教徒の関連まで見るという本。センセーショナルないわゆるトンデモ学説みたいなものにもちゃんと触れて、冷静に根拠を持ってひとつひとつ潰していく姿勢はすごい。解毒剤と銘打たれているだけある。
    安易なクムラン教団との結び付け説を丹念により分けた後の、キリスト教の特色は大工の子イエスをメシアと見たところ、その一点に集約するという美しい結論!「古代イスラエル宗教史」にも当時のユダヤ教徒の間で終末論とか似非メシアみたいなのがめちゃくちゃ流行ったという話があったけど、クムランの共同体もキリスト教徒もその大きな流れのほんの一部で、たまたま現代の私たちの目に触れる形で残っていただけなんだろうか。2000年前の話だからなあ…でも、その一端だけでもこうして知ることができるというのは本当に奇跡のような話だ。そりゃあ皆がみんな血眼にもなるというのが、こうして読んでようやくしみじみわかった。

  • C1014

  • 書評で紹介されていて手に取ったが、キリスト教世界や歴史の知識がなければなかなか読み通すことは難しい。

    (自分のような)門外漢は、簡単な入門書から入るべき

  • 最終章、訳者あとがき以外は、ごくごく真面目な学術報告で素人置いてけぼり。今や全資料にアクセスできる。キリストには一言も言及していない。

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