ツンドラモンスーン The cream of the notes 4 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062932691

作品紹介・あらすじ

なんの脈絡もなく書いているシリーズの四冊めである。著者はあの森博嗣だ――。好みのデザートから安全保障、ミステリィのトリックまで、巫山戯たような表現の中に潜んでいるまったく新たな世界観&考え方。「小説を書くほうがずっと簡単」と断言するほど練りあげられた、目からウロコのエッセィ全一〇〇篇。

感想・レビュー・書評

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  • 尖っていたり、うなずいたり。
    1本2ページ×100本のエッセ“ィ”、だけど読み終わるのに8日かかる…そんなエッセ“ィ”集。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    「ツンドラモンスーン」という耳に残る言葉と、ポストガードみたいにおしゃれな北欧っぽい表紙にひかれて手に取りました。

    小説かな?と思ったら書き下ろしエッセイ集だった!というのが本書です。
    ちなみに森博嗣さんの著書を読むのは、本書がはじめてです。

    ツンドラ(永久凍土)+モンスーン(季節風)という意味のある言葉を2つ足したら、意味のない言葉ができた、というのはおもしろいなと思いました。
    つまりは「ペン バイナッポー アッポーペン」とおなじことですね!
    実におもしろい!

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    この本では、1本の題材につき見開き2ページでエッセィが書かれおり、計100本の書き下ろしエッセィが読めます。

    ですが、それを聞いて「なんだ、見開きで1本か。じゃあサクッと読めるな」と思ったら大間違い。
    1本1本の内容が深かったり、尖ってたり、全然わからない世界だったりと幅が広く、続けて読める本数はせいぜい3~4本が限界でした。
    それ以上読むと、頭のなかで意見と意見とがぶつかり合って混乱してしまうのです。

    一気に読めない、というのはこの本の短所のように思えますが、逆に言えば「隙間時間に読むにはぴったり」ということです。
    お湯がわくまで10分、スマホではなく本書を開いてエッセィ2~3本読む…
    そんな感じでちょこちょこ読んでいたら、8日間で読み終えることができ、スマホ時間も若干減り、隙間時間の使い方もよくなりました。
    ラッキィでした。

    「ストロベリィ」「エッセィ」「メモリィ」などの表現に違和感は感じつつ、尖りすぎているエッセイは程よく読み、ナルホドと思うものにはうなずきながら読みました。
    特に好きなのはこちらの文章です。

    「たとえば、この本は、僕が感じたこと、思ったことを書いているものだが、べつに人に賛同してくれと求めてもいないし、書いていることが正義だとも感じない。ただ、こんなふうに考える人間がここに一人いるのですよ、という意味、それだけである。」(38・39ページ)

    言うなれば、今書いているこの感想もそうです。
    この本を読んでこんな風に感じる人が、ここにいますよ~という、ただそれだけのことなのです。

    小説もエッセィもそうです。
    本を読むこと、人と話すことは「こんな風に考える人がいるんだ」「こんな世界があるんだ」ということがわかる、ステキな出会いです。
    そしてその出会いをどう受けとめるかもまた、自分次第。
    気が合わなければそっと離れればいいし、好きなら大いにその世界を楽しめばいい。
    ただ、それだけでいいのです。

    嫌いなものを思いっきり叩いて、それを好きだという人をも傷つけることは、ナンセンス。
    そんなことをするよりも、自分の好きなものを大切に生きていくほうが、よっぽど人生おもしろくなります。

    森博嗣さんのエッセィもまた、好きなもの、ちょっとな…のものと色々あって、まるで“森博嗣”さんという1人の人と対面しているようで、おもしろいエッセィ集でした。

  • 4作目は背中を押されることが多かったように思う。生活の中の、ちょっとした時間に一つ二つ読むというのが、なかなかに良い時間の過ごし方のように思える。大好きなシリーズ!

  • 欲しい答えはないけど、自分で解決するためのきっかけやヒントをもらえる。
    土屋賢二の解説も素晴らしい。

  • いつも、ハッとさせられた言葉が載っているページは読んでいる最中に折って、読み終わったら別のノートに書き写すようにしているのですが、今回もたくさんのページを折りました。

    特に心に残っているのは、「平和は複雑だ」という箇所。単純さを求め、単純であることを是とする風潮があるけれど、あれは一種の懐古主義なのかもしれません。不安定であること、複雑であることにこそ成熟を感じるという彼の意見に大いに頷きました。

    誰かに面白いですよ!と無理やり渡すのではなくて、個々のタイミングで出会ってほしいなと思う本です。誰かとシェアしたくなるというよりは、自分と対話したくなる本。

  • つぼねのカトリーヌとシリーズだと気付かずに読みました。。

    森さんの思考を想像するのって面白い。
    良し悪しでなく、ただ主張するだけ、というのは影響を受けているかもしれない。

  • 1日1ページのペースで読んでいるため、
    終わる頃にはほとんど忘れています(笑)
    でも、その時心に響いたページは
    印をつけているので…
    読み返すのですが、
    後から読むといまいちピンと来なかったり(^_^;)
    不思議なもんだ…。

  • つぶやきのクリーム→つぼやきのテリーヌ→つぼねのカトリーヌ→ツンドラモンスーン。という意味なしジョークのようなタイトルがじわりと好みのツボにはまってきています。5冊めのタイトルはどうなるのだろう。出してくださると良いな。楽しみです。
    もやもやっと思っていることをすっきり言葉にしてもらえると、嬉しいですね。我が身を振り返り、あっ、と恥ずかしくなる部分もあり。最後の「じゃあ。」が格好良いですね。背中を見せて、さらっと去っていく感じが素敵で、目をハートにしてわたしは追いかけてしまうのです。

  • なんの脈絡もなく書いているシリーズの四冊めである。著者はあの森博嗣だ――。好みのデザートから安全保障、ミステリィのトリックまで、巫山戯たような表現の中に潜んでいるまったく新たな世界観&考え方。「小説を書くほうがずっと簡単」と断言するほど練りあげられた、目からウロコのエッセィ全一〇〇個。

  • 言葉遊びから小説の書き方、アイデアの出し方、哲学的なものまで幅広いジャンルのエッセイ。小説とは違った楽しみがある。森博嗣さんの顔も知らないが面白い人物であるのは間違いない。

  • 森博嗣のエッセイ集『ツンドラモンスーン The cream of the notes 4』を読みました。
    森博嗣の作品は先月に読んだ『つぼねのカトリーヌ The cream of the notes 3』以来ですね。

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    その思考は地球の裏側まで届いていく。「100のつぶやき」シリーズ第4作。
    なんの脈絡もなく書いているシリーズの四冊めである。著者はあの森博嗣だ―。好みのデザートから安全保障、ミステリィのトリックまで、巫山戯たような表現の中に潜んでいるまったく新たな世界観&考え方。
    「小説を書くほうがずっと簡単」と断言するほど練りあげられた、目からウロコのエッセィ全100個。
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    2015年(平成27年)に刊行された文庫書下ろし作品……森博嗣が思いついたことを思いついた順に綴った100篇のエッセイを収録したクリームシリーズ第4作です。

     ■まえがき
     ■1 現代人が求める「気づき」は、「気づきたい」ことでしかない。
     ■2 「あれはカラスだよ」と言ってカラスを見ない子供たち。
     ■3 シャーロック・ホームズって、冒険してますか?
     ■4 安全保障というのは、戦争をすることだったのか。
     ■5 少年Aの手記に対する騒動について。
     ■6 「いいね」「いやだな」は自分の中で留めておいた方が良い。
     ■7 「考えていかねばならない」で結ばれている文章がとても多い。
     ■8 どんなに外れが続いても、当りの確率は高くならない。
     ■9 妬みやひがみは、人を見下した言葉で口から出る。
     ■10 「天才」を描くときの限界は、読者の理解力である。
     ■11 「老後が心配だ」と口にする人に「どうせ死ぬんですから」と言える?
     ■12 この表記はやはり変えよう、と思うことは一カ月に三回くらいある。
     ■13 報道とは、みんなが知りたいことを伝えるだけで良いのか?
     ■14 下から目線に囲まれて育った子供が、大人になって見下される。
     ■15 「未知数」が「大したことない」の意味に使われている。
     ■16 アマチュアほど、制作の途中経過を実況する。
     ■17 金銭的な格差よりも、知恵や楽しさの格差の方がずっと大きい。
     ■18 ドローンが危険だと問題になった理由は、簡単に飛ぶからである。
     ■19 ついに怖れていたことが。「新書」が「古書」の反対だと認識され始めた。
     ■20 おはぎとぼたもちは同じものではないのか。
     ■21 僕の小説を読んだだけで、理系の大学へ行きたくなるという。
     ■22 老年よ、好奇心を抱け。
     ■23 地方への移住者が増えているとのニュースを見て。
     ■24 個人情報について、本当に認識が甘い。
     ■25 「屋台が炎上」のニュースで、「屋台の何が話題に?」と思う。
     ■26 アロマが苦手。
     ■27 たとえば、と一例挙げただけで真実味が出る錯覚。
     ■28 「相手を理解する必要がある」はいつも正しいわけではない。
     ■29 フルーチェを作って感じる孤独。
     ■30 我が庭園鉄道もついに三十号機に至った。
     ■31 昨日の僕が今日の僕にプレッシャをかける。
     ■32 推論は、論理的でなければならない。
     ■33 いろいろ文句を書いているが、愚痴ではない。
     ■34 「憲法を守ろう」には二つの意味がある。
     ■35 知識は無料、発想は有料。
     ■36 自慢か謙遜かという判断はない。相手が興味を示すかどうかだ。
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     ■解説 土屋賢二

    独特な視点やユーモアが楽しめる一方で、著者の人生観や哲学にも触れられるエッセイ……論理的でありながら、ユーモアや皮肉も交えていて、本作品も愉しませてもらえました、、、

    個性が強く出ていて、読んでいて飽きを感じさせないですね……そんな中で特に印象に残ったのは、

    観察を妨げるのは知ったつもり、知らないと思い続けることが知る原動力……という言葉に納得した『2 「あれはカラスだよ」と言ってカラスを見ない子供たち。』、

    死生観が合致した『11 「老後が心配だ」と口にする人に「どうせ死ぬんですから」と言える?』、

    フルーチェ好きの部分に共感した『29 フルーチェを作って感じる孤独。』、

    ジェットエンジンの機関車に思わず笑ってしまった『30 我が庭園鉄道もついに三十号機に至った。』、

    家族ってお互いを支え、それでいてお互いが好きなように生活して、矛盾があれば妥協する……理想的な家族像だなと感じた『83 身近な人たちにも、僕のようにあれ、と言うことはない。』、

    かな……これでクリームシリーズの在庫は全て読了、他の作品も機会があったら読んでみたいな。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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