恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.63
  • (8)
  • (22)
  • (20)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 274
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062932707

作品紹介・あらすじ

2000年春、函館新港に運ばれてきた覚醒剤。その量130キロ、末端価格にして約40億円。"密輸"を手引きしたのは北海道警察銃器対策課と函館税関であり、「銃対のエース」ともてはやされた刑事だった。腐敗した組織にあって、覚醒剤に溺れ、破滅を迎えた男が、九年の服役を経てすべてを告白する――。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 元刑事の告白でした
    内容的には楽しめましたが・・・
    ノルマのためには犯罪も辞さない
    拳銃のためには薬には目をつむる
    警察ってそんなところなのかと
    北海道警察のひどさがわかりました
    まぁでも北海道にかぎらず警察の体質なんでしょう
    今では改善されていることを望みます

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/711381

  • 面白かった。
    手短に説明すると、正義感の強い警察官が汚職にまみれる話。よくある話のようにも聞こえるが、本作の凄さは堕ちていくプロセスが丁寧に描かれていることと、その心理変化に説得力があることだ。

    警察も民間企業と同じで、評価のためには成果が必要。本書の著者の成果とは、拳銃の検挙数だったのだ。評価期間内に都合よく犯罪が起きるわけではない。しかし評価期間は決まっている。どうしても評価を上げたければどうするのか。
    その結果が本書の物語である。

    上層部の設定した無茶なKPIを達成するために疲弊する現場。まさに民間企業で見る風景だ。警察が違うのは、そのKPIが犯罪者に依存している点であろう。

    本書を読んだ後、ストーカー対策の杜撰さについて見え方が変わった。おそらく評価点数にならないのだろう。

  • 『恥さらし』

    映画『日本で一番悪い奴ら』の原作となった、北海道警察史上最大の汚職事件である稲葉事件の犯人、稲葉氏が書いた自省録。

    学生時代は柔道に明け暮れた稲葉氏は今でいうスポーツ枠のような形で北海道警察に就職する。その後、1990年代の銃器摘発キャンペーンの中で、銃器の摘発の過酷なノルマを課され、目標達成のために反社会勢力との交際を始める。稲葉氏は、多数の暴力団にエス(スパイ)のネットワークを形成し、銃器や覚せい剤の摘発に繋がる情報を引き上げていく。次第に、そのようなネットワークを駆使して成績を上げていく稲葉氏は銃器対策課のエースと称されるようになる。一方、多くのエスを養うために資金が必要になった稲葉氏は自分の給料やカードの信用枠などを積極的に貸し出し、文字通り、身を粉にして働く。そして、エスを養うために、稲葉氏自身が覚せい剤のブローキングビジネスをはじめ、潤沢な資金を形成していく。そんな中、次第にエスカレートしていくノルマに対して、稲葉氏を含む銃器対策課は香港マフィアと関東の暴力団を仲介し、大量の覚せい剤と銃器のブローキングを画策すると同時に、泳がせ捜査で一気に大量の銃器を押収する計画を立てる。しかし、本計画は結果として一部のエスの裏切りにより頓挫し、あろうことか日本に大量の覚せい剤を卸すだけで終わってしまう。そのような失態も重なり、当時の銃器対策課のチームは解散し、稲葉氏は閑職を押し付けられる。明らかに斜陽となった稲葉氏は自らが売買していた覚せい剤に手を付け、エスの密告により最終的には覚せい剤取締法違反で逮捕されるという物語である。本書では、当時のノルマの厳しさや、ノルマ達成のためにほとんど多くの道警の人間が反社会的勢力との交際をもっていたことなど、自らの罪を赤裸々に告白していく。同時に、当時の稲葉氏の交際をすべて黙認し、稲葉氏の成果で甘い汁を吸っていた当時の上司が逮捕されていないことへの恨み節を炸裂させている。なぜ上司が捕まっていないかと言えば、稲葉氏の逮捕でこれまでの悪事が表沙汰になることを恐れた別の上司や、稲葉氏を密告したエスも獄中で自殺していることで、自殺した別の上司にすべてを責任転嫁し、自らの関与を否定したからである。
    これだけ大きな汚職事件を容認した上に、最後は部下に責任を押し付け、今でも罪を償わずにいることを考えると、怒りを禁じえない。

    本書、読んでいて何かに通じるものがあると感じたが、それはハンナ・アレントの『エルサレムのアイヒマン』である。アレントは、第二次世界大戦中に、ホロコーストの指導的立ち位置を担っていたアイヒマンの裁判を傍聴し、アイヒマンが何の変哲もない人間であることを報告した。そして、それをもって、アレントは「悪の凡庸さ」という言葉を世界に発信する。つまり、人類史上最大級の虐殺を指導した人物は極めて、凡庸であり、悪というものは誰もが簡単に近づいてしまう危ういものであることに警鐘を鳴らした。また、アレントはアイヒマンについて「愚かではないが、徹底した無思想性」に悪の素因を見出した。
     
     本書を読んでいて感じるのは、稲葉氏の無思想性と、やはり凡庸さである。確かに、実直にノルマ達成を目指し、多くの人が行っていた暴力団員との交際により成果を上げることは、凡庸ではないものの、稲葉氏には一概に、全く異世界の人間とは思えない人間らしさがある。そして、その人間らしさこそが恐ろしさでもある。自ら覚せい剤の取引を行うことや暴力団と交際すること、さらには香港マフィアとの闇取引を仲介することなど、本書では徹頭徹尾異常な行動がとられているが、しかしながら、その目的にはノルマ達成のための銃器摘発という合理性の筋が一本通っている。ここが、まさしく本書の最も恐ろしいところであろう。

    また、このような事件に、オルタナティブを持たない組織の怖さと言うものも感じた。警察組織は、日本に1つしかないため、ノルマ達成ができない場合には、一生警察組織の中で出世できずに閑職でいることに甘んじるしかない。そのような恐怖心が、このような闇取引に手を染めてしまった原因なのかもしれない。そもそも、ノルマとは組織内の取り決めであり、組織が異なれば、別の目標やノルマがあるはずである。一般社会では、転職することにより、別の領域で再出発することもできるだろうが、殊、警察組織ではそのような選択肢がない。画一的な組織目標により、人々は個人の思想性に意味を見出しずらくなる。そして、思想性を失ったとき、規範からの逸脱はすぐ隣まで来ているのだろう。
    昨今、三菱電機等、日本の伝統的大企業での検査不正や隠ぺい体質などが話題に上がるが、その原因の一つはやはり、選択肢を持たない人々が次第に思想性を失っていき、上意下達に倫理が入り込む余地がなくなってしまうことなのではないかと思う。(その意味でも、職の流動化というものは悪いものではないと感じる)

    色々と考えさせられる一作であり、ぜひ多くの人に読んでほしいと感じたために、このレビューを書くことにした。

  • 一度足を踏み外してしまうと、坂道を転がり落ちるように外道に落ちて行く様が克明に描かれています。
    著者の稲葉氏は、自分が外道に落ちて行った要因は警察組織の仕組みにあると訴えていますが、やはり、不正に対して感覚が麻痺してしまった個人の資質が何よりも大きいように感じます。
    この事件を契機に全国規模で不正が明るみになって大問題になった記憶がありますが、現在の警察組織はどこまで浄化されているのか、気になって仕方ありません。
    今後、こんな不正が再び明るみになるようなことがないことを願うばかりです。

  • 「日本で一番悪い奴ら」を観た勢いで読んだ。文章は単調なんだけど、まあ面白かった。当時の銃器摘発はめちゃめちゃだったんだなあと感心した。マンガに出てくるほぼヤクザのマル暴刑事とかあながちウソじゃないんだなあと。

  • 映画・日本で一番悪い奴らの補足として読み始める/ どうやら文中の名前は仮名のようだ/ 事実は小説より奇なり、を地でいっている/ 刑事が拳銃を買い付けて自作自演で摘発する/ ヤクザに頼んで拳銃所持で出頭してもらう/ 中国から200丁の拳銃を発注する為に覚醒剤と大麻を自ら密輸する/ まるきりヤクザである/ 北海道警察、日本で一番悪い奴ら/ もう少し詳細に生々しく書いてくれるとよかったかな/

  • 警察組織の恐ろしいほどの腐敗を告発。

    未だにこれが改善されていないとすれば、日本の刑事司法の展望はまだまだ暗かろう。

  • 170820.映画観てからの購入。実話、北海道の話しということで非常に興味を惹かれたまま読むことが出来た。日本は確かに平和な国なのかもしれないが、薬に関しては本気で歯止めをお願いしたい。しかしこの話を読む限りでは到底警察には期待が出来ないし、変革を求めるにはあまりにも大きい組織になっていると感じる。

  • この本にかかれていることは衝撃的な告発であるにも関わらず、自分が不感症なのか、あまり興味をもてなかった。

    まあそういうこともあるだろうな、という感じだ。
    我が一家全員死刑のド級の日常には及ばない。
    調書のような事実をたたみかける文章(おそらくゴーストだが)も、迫力をそぐ。我が一家全員は、文章は下手くそだが、それゆえの凄みがあった。

    しかし、営業マンじゃあるまいし、警察にノルマは変な話だ。それがすべての元凶。ないものつくるために、不正が横行する。

全23件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1953年、北海道生まれ。北海道警察銃器対策課・元警部。東洋大学を卒業後、1976年に北海道警察に採用され、機動隊に柔道特別訓練隊員として配置される。道警本部機動捜査隊、札幌中央署刑事第二課、北見警察署刑事課、旭川中央署刑事第二課を経て、1993年、道警本部防犯部保安課銃器対策室(後の生活安全部銃器対策課)に異動。道警銃器対策課が主導した「警察庁登録50号事件」や「ロシア人おとり捜査事件」、「石狩新港泳がせ捜査」など、数々の”違法捜査”に関与。捜査費を捻出するため、自ら覚醒剤の密売に手を染めるようになった。2002年、現役の警部としては道警史上初めて覚醒剤使用で逮捕され、懲戒免職。覚せい剤取締法違反、銃刀法違反の罪で懲役9年を宣告される。2011年9月、刑期満了。

「2016年 『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』 で使われていた紹介文から引用しています。」

稲葉圭昭の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×