- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062937108
作品紹介・あらすじ
どちらかの生還者が嘘をついている…!? ヒマラヤの峻厳な高峰に隠された悲劇。日本推理作家協会賞候補となった緊迫のミステリー!
感想・レビュー・書評
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『生還者』
緊張感 ★★★★★
ラストシーン ★★★★★★
意外性 ★★★★★
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(小説より)
「山では自分の命を預け、相手に命を預けられる。絶対的な信頼がなきゃ、相棒はつくれない。人と信頼を繋げないなら、いつか死ぬ。」
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舞台は「山」です。しかも冬山です。この冬山で遭難事故が起こり、亡くなるひと、そして生き残ったひと(生還者)が生まれます。
生還者が抱く気持ちは「助かった・・・。有難い」という単純なものではありません。なぜならば、一緒に山にアタックした仲間が、目の前で命を落としているのですから・・・。
行間から、すさまじい吹雪、そして氷点下のつきさすような気温があふれてきます。
これでもか・・・というくらいに。
そして、過酷すぎる環境のなかで主人公たち歩みつづける姿は緊張感そのものです。
ミステリー好き、スピードある展開が好き、意外性ある結末が好きな方は是非にご覧ください。
ラストシーン。わたくしは、★5個ではたりなく、6個評価となりました。
読み終えての感想は「参りました・・・」です。
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【主人公】
標高5000m越えカンチェンジュンガで遭難事件が発生しました。
生還者は2名です。そのほかのパーティーは残念なことに帰らぬ人になりました。この帰らぬ人の肉親、弟が主人公です。彼は、兄と同じ大学の山岳部出身です。
そして、もうひとりの主人公が女性記者です。彼女も、彼と同様に山に魅せられた一人です。
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【物語のはじまり】
生還者2名に対して、マスコミは「奇跡の生還者」と称し、報道を行います。なぜならば、遭難した場合の生存確率が極めて厳しい山だからです。
さて、この2名(A,B)の発言が大きく異なることが「事件性」を帯びることになります。
Aは、Aが助かった理由が遭難中・行方不明のCのおかげだと発言します。Cから食糧含めて援助を受けたと・・・。だから、CはAにとっての英雄であると。
一方で、Bはまったく異なる発言をします。Cは、Bを含めたパーティーの一員であったが、途中でひとり離脱をし、迷惑をこうむった。Cは英雄でもなんでもないと・・・。
A,Bの発言の真相はいかに? なぜ食い違うのか?
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【兄の不審死】
兄は、雪崩で亡くなりました。
弟は、兄の遺留品から兄の死に対して疑問を抱くことになります。それは、兄がもっていたザイル(綱)に「切り込み」が入っていたのです。明らかに「人為的」なものでした。
兄は殺されたのでは? パーティーの誰かに・・・。
弟は、調べはじめます。
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【真相に近づく記者】
今回の遭難ならびに生還者2名の発言の差異について、ひとりの女性記者が真相を追いかけ始めます。
彼女は、山岳経験者です。「山に対して嘘をついているどちらか1名を赦すことはできない」の想いを胸に、調べ始めるのです。
この過程で、もう一人の主人公/弟と協力する体制となります。
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【二つの遭難事故の重なり】
主人公の兄は、婚約者とともに冬の白馬岳ツアーに申し込みをしました。残念なことに、悪天候も重なり、婚約者含めた女性パーティーは全員亡くなり、男性陣だけ生還することとなりました。
これを機会に兄は、登山をやめたのでした。
しかし、今回、兄は冬山、しかも世界第3位の山に登頂アタックを試みています。
なぜ、急に登山を?
弟と女性記者は、調べを進める中で、今回の遭難と数年前の白馬岳の事故に「重なり」があることに気づきます。
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【タイトル「生還者」】
周囲は生還者に対して「生還できてよかった」と安寧の気持ちを抱きます。
しかし、当の生還者たちは、筆舌しがたい感情と戦っています。
或る者は「なぜ自分が生き残ってしまったのか?」と悔恨を抱きます。
また、或る者は「死に場所を求めて山に登りつづけ」ます。
生還者が苦しみ続ける途方もない闇に対して「光」が差し込んだとき、涙が頬をつたうのでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
雪山で婚約者を亡くし山を離れたはずの兄がヒマラヤの山で雪崩に巻き込まれて亡くなった。関係者全員死亡と思われたが、奇跡的に生き残った生還者2人が帰国する。しかし2人が語る山での出来事は全く食い違っていた。どちらかが嘘をついているのか、それとも真実は全く別なのか、亡くなった兄の遺品の中に不審な点を見つけた増田は、雑誌記者恵利奈とともにヒマラヤで起こった真実を求めて動き出す。
ミステリーとしては、やや弱い感じがする。特に終盤。高瀬がようやく真実を語ったあとで、恵利奈が東からの2通目の手紙の内容を明かす………え?え?知ってたの?!という感じが…。
しかしながら雪山でのシーンは、とてもリアルで真夏に読んでいるのに寒さが伝わってくるようだった。少しのミスで命を失う緊張感や大自然の凶暴さ、死を意識したときに現れる人間の本性、読むのが止められず一気読みでした。 -
本作はBOOKOFFで購入!
以前から読みたいなぁと思っていたところ目についたので手に取りました♪
さて、私にとっての山登りは小説の中だけでの話で実際に登山をしてみた事はありません。
→湊かなえさんの小説を読んで登りたいと思ったことはあります。
本作の主人公達は山に登る理由があり、困難に挑もうとしております。
私的には命を賭ける事と登山の面白味には吊り合いを取る事は出来ませんが、危険な事が色々と取り除かれていく世の中に、未だそんな趣味が残っていてもいいだろうと思います。
ヒマラヤの雪崩で兄が死亡した!?
兄の遺品を整理しているうちにザイルに施された仕掛けに気付いた、弟の増田直志は兄の死が本当に事故であったのかを疑う。
時同じくして兄と同じ時期にヒマラヤに登り雪崩の生還者となった二人の登山家はまったく違う事を言い出した!!!?
下村敦特有の捩れ問題、今回も読み手は翻弄される。
最初の場面の2人の登山家は一体誰なんだろう?
という思いが、種明かしされるまでずつと引っ掛かります・・・ -
サバイバーズ・ギルトがテーマの山岳ミステリー。山岳の中でも厳冬期ヒマラヤ登山を描いた筆者の登山知識には驚きです。まるで登山家が書いた小説のようです。最後、恵利奈じゃなく、葉子で良かった。
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下村敦史『生還者』講談社文庫。
これまで数多くの山岳小説やドキュメントを読んできたが、これほどレベルの高い作品と出逢う機会はそうそう無いだろう。しかも、本格的な山岳ミステリー小説である。デビュー作の『闇に香る嘘』にも驚かされたが、本作ではさらに驚かされた。
ヒマラヤで雪崩に巻き込まれ、死亡した兄の遺品を整理するうちに主人公の増田直志はザイルに施された細工に気付く。兄の死は仕組まれたものだったのか…直志が疑念を抱く中、兄の登山隊に関係する二人の男と奇跡の生還を果たす…
緻密に計算されたパズルのピースのような謎が散りばめられ、そのピースが次々と繋がっていく。ピースが繋がる度にパズルの全貌は姿を変え、なかなか本当の姿を見せてはくれないのだが…
これまでに読んだ山岳小説やドキュメントの傑作を比較的阿多らしいところからざっと挙げれば、夢枕獏『神々の山嶺』、沢木耕太郎『凍』、山野井泰史『垂直の記憶』、谷甲州『単独行者』などがある。本作はこれらに肩を並べてもおかしくない傑作だと思う。 -
ネパールの山で雪崩に巻き込まれて死亡した兄の遺品を整理していて、弟の直志は兄の死因に疑惑を抱く。
そんな折、兄の登山隊に関係する二人の男が相次いで生還を果たす。
だが、二人の証言は全く違った。
単独登山者だった高瀬が登山隊に出会って助けを求めた時「足手まといになる」と一蹴されたのだが、登山隊の加賀谷が高瀬を追ってきて助けてくれた。
その後、行方不明だった東が生還。
彼は「加賀谷はみんなの荷物を奪い、一人逃げた」と。
閉ざされた環境の中で何が起こったのか。
その謎を追うジャーナリストと直志。
次から次と生まれる謎。 -
2転3転する展開に夢中になる。
普段は1冊読むのに数日にかけて読むのですが思わず一気読み。
文句なしの星5個評価です! -
山の話は切迫感あり良かった。終わり方が疑問