新装版 頼子のために (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.63
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本棚登録 : 492
感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062938112

作品紹介・あらすじ

「頼子が死んだ」。十七歳の愛娘を殺された父親は、通り魔事件で片づけようとする警察に疑念を抱き、ひそかに犯人をつきとめて刺殺、自らは死を選ぶ――という手記を残していた。しかし、手記を読んだ名探偵法月綸太郎が真相解明に乗り出すと、驚愕の展開が。著者の転機となった記念碑的作品。長く心に残る傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 法月綸太郎はシリーズとしても著者としても初読(面倒だな…)
    所々独特な言い回しがあって面白かった

    ■イヤミス
    叙述トリックと知った上で読んでたから、父親が頼子を愛してるのは多分嘘だろうと思って実は血が繋がってないのか?と勘ぐったけど…
    血は繋がってるけど奥さんの方が大事なんかい!
    むしろそんなに大事な人との間に産まれた子なんだから何故愛情を向けられなかったのか…
    じゃあ妙子にもなびくなよ…
    気持ちがわからん…

    ■犯人の自殺
    犯人が自殺するとわかっていて黙認した法月。
    日本の探偵でそういう展開読んだこと無い気がするなぁ(自分が知らないだけかも)
    そんなに沢山読んで無いけどホームズとかポアロとか海外の探偵は罪を暴いた後は犯人の好きにしろというか判断に任せるみたいな風潮なのかな?
    日本は罪を償わせるために自殺はさせないし、必ず捕まえるのイメージ。
    お国柄なのかな?


    著者の別作品もオススメでよく見かけるので読んでみたい

  • 確かに意表を突いた展開、というかどんでん返しではあろうが、話が長い。後書きを読んで納得したが、元々が中編で会った小説を加筆したらしい。前半の”遺書”から真実を導いていくという過程は面白いのだが、とにかく文章が無駄が多いし、キャラも魅力が無いだけでなく、不要な設定・登場人物が多い。何より文章がまだるっこしくて退屈だった。

    これは中編のままの方が面白かったのでは?

  • ☆4.0

    「頼子は死んだ」から始まる娘を亡くした父親の手記。
    それには、娘の死は殺人なのに警察の捜査はどうも様子がおかしく、まともにされているとは思えないことや、自らの手で犯人を見つけ出し殺すことを決めていた心情が書かれていた。
    父親の西村悠史はある男を殺害し、その後すぐに自殺を図ったが、辛くも一命をとりとめ昏睡状態であるという。
    推理作家の法月綸太郎の元へ、この一連の事件の再調査の依頼が舞い込んだ。
    手記を読み事件について調べ始めた綸太郎は、この事件に隠された真実と真っ向から向き合わされることとなる。

    この作品は最初に手記が配置されたことが肝要だったと思う。
    読者がどんな立ち位置で事件を見るか、何を前提に思考するかを上手く作品に乗せている。
    頼子は本当はどんな娘なのか。誰が何を考えて、本当は何を望んでいたのか。
    すべての真実が見えたとき、決定的な敗北感に打ちのめされた。

    これはちょっともう一度読まねばならんと、ページを捲った。
    読み返したときの各所に漂うエゴイズムがこちらの心を苛んでくる。
    二度目は全然精読じゃなかったけど、苛まれすぎてちょっと吐き気がするくらいだった。
    なのにタイトルは『頼子のために』なんだよなぁ。
    これしかないってタイトルなのでは。

  • 私は最後まで全く真相を見破れなかった
    なのでとにかく夢中で読んだ。

    最初の父親の日記を鵜呑みにしては
    いけないと思いつつも、やはり絶対的に愛すべき娘だと疑いようがなく騙された。

    真実はあまりにも悲しくてやるせない。

    大好きな父親の姿を道路の反対側でみつけ
    思わずかけよってしまう幼い娘を助けようと母は車に轢かれ
    半身不随、妊娠中の息子は亡くなってしまう。

    そこから幸せは崩れて父親は妻を愛するあまり娘をそこから一切愛することをやめて憎んでしまう。

    最後まで切ない。頼子がただただ可哀想。
    父も母も親を放棄していつまでも
    自分たちの恋愛を楽しんでいたのだろう。

    読了後 気持ちは下がるが
    すごく夢中で読めた。

  •  ミステリーというのは様々な形が色々あると思うんです。今回は復讐も重なってきますね。 家族を殺されたら自分だったらどうしますか? 復讐は基本的にありですか?ミステリーって色々面白いですよね。 '233/27 '2311/20

  • 傑作だと思います。
    犯罪悲劇的な作品ですが、それが苦手な方は読後感がよろしくないかもですね……。
    私はフィクションにおける犯罪悲劇で好きな作品が多いので、高評価です。

    元ネタ(小ネタですが)であろうものを少し。

    作風→ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』のロス・マクドナルド風味(これには法月さん自身の言及もありました)。

    手記について→ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』の手記の最終日の翌日から始まっていますね。

    「フェイル・セイフ作戦」→ジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の「ウィッチクラフト作戦」「テスティファイ作戦」のオマージュだと思います。

    『頼子のために』→ニコラス・ブレイクは本名がセシル・デイ=ルイスで、英国の推理小説作家であると同時に桂冠詩人でもありましたが、彼が詩人のために書いた本の献辞が「鈴子のために」です。

    元ネタをわかるために小説を読んでいるわけではありませんが、わかるとニヤッとできる程度の意味はあると思います。作品の面白さとは関係ありませんが、ミステリ好きの遊び心なんだと思います。

    もっとオマージュがありそうですが……。

  • 惜しい。何が一番惜しいって、タイトルにもなっている頼子の人物像がぼやっとしているから。

    まず、ミステリー小説はミスリードにまんまと引っかかっていたことに気づく瞬間が楽しいと思っているタイプなので、序盤の手記を読んでいる時点でおかしな点が複数あることに初読で気づき、「ミステリーなのにこんなに推理がガバガバでいいのか」と正直途中で積むところだった。(読み進めるうちに手記のおかしな点から事件の真相を明らかにする話だとわかった)
    また、ページ数が内容に対して多すぎる。多分半分から3分の2くらいの分量でまとめた方が話的にも綺麗にまとまったように思える。
    そして何より頼子の人物像がぼやっとしすぎている。頼子に二面性があることまでは理解できたが、その二面性が上手く結びつかず分断された2人の記号化されたキャラクターを見せられているみたいだった。
    頼子の心情の揺れがこの話で起こる事件の引き金となっているので、他者の口から語られる頼子ではなく、頼子自身の心情が直にわかるもの(例えば頼子の手記をそのまま載せるなど)を組み込めば、頼子をよりリアルで魅力的な人間として理解出来たのではと感じた。
    頼子に限らず登場する女性全般が誇張された人物像だったり言動に無理があったりするので、女性を書くのがそもそもそんなに得意でないのではと思う。
    一方で主人公は非常に個性が立っていて印象的なので、アニメ化などされたらウケそう。

    ハードボイルドと言われているが、どちらかといえば厨二感のほうが強い。

  • 愛する娘を殺された父親が復讐を果たしたうえで自殺を図るがギリギリ救われる
    父親の手記でその背景が分かるが内容の一部に疑問を抱いた綸太郎は調査に乗り出す

    タイトルは手記のだよなぁ
    ただ真相は‥

    事故の原因はそういうことか
    頼子の立場になったら‥
    真相が悲しすぎる

    綸太郎が調査に乗り出さなかったら結末は変わったんだろうけど父親は一生苦しむことになったんだろうな

    綸太郎の考えが正しかったら母親の生活は変わらないか
    でも意に沿わないのがもう1人いるのか

  • ハードボイルド風味が苦手だった。登場するどの女性の描き方にも違和感を覚えてしまった。

  • 面白かった。
    解説にもあるが、ある一家の一人娘の死の真相に迫るというミステリ要素のみならず、政治家などの有力者にも屈せず行動する硬派な側面、あるいは人間という存在の複雑さやそれが抱える業を主題に組み入れていることによって、たんにミステリを読み終わった時とは異なる読後感がある。
    トリックに感心した、という部分もなくはないが、小説を読んだな、という感じの方が強い。
    星の数は多くはないけど、やっぱり法月綸太郎は良いなと思った。

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著者プロフィール

1964年島根県松江市生まれ。京都大学法学部卒業。88年『密閉教室』でデビュー。02年「都市伝説パズル」で第55回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。05年『生首に聞いてみろ』が第5回本格ミステリ大賞を受賞し、「このミステリーがすごい! 2005年版」で国内編第1位に選ばれる。2013年『ノックス・マシン』が「このミステリーがすごい! 2014年版」「ミステリが読みたい! 2014年版」で国内編第1位に選ばれる。

「2023年 『赤い部屋異聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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