倒叙の四季 破られたトリック (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062990714

作品紹介・あらすじ

完全犯罪を目論む殺人者は
どこでミスを犯したのか?

犯行現場で「物証」を見つけて下さい!

『最後のトリック』『ミステリー・アリーナ』の
メフィスト賞作家が放つ新たな「本格」の傑作!

懲戒免職処分になった元警視庁の敏腕刑事が作成した
〈完全犯罪完全指南〉という裏ファイルを入手し、完全犯罪を目論む4人の殺人者。
「春は縊殺」「夏は溺殺」「秋は刺殺」「冬は氷密室で中毒殺」。
心証は真っ黒でも物証さえ掴ませなければ逃げ切れる、
と考えた犯人たちの練りに練った偽装工作を
警視庁捜査一課の海埜刑事はどう切り崩すのか? 
一体彼らはどんなミスをしたのか。

感想・レビュー・書評

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  • 多分シリーズものなのかな。古畑のように最初から犯人が分かっていて、その犯人も最後の話以外は自己中心的考えの典型的タイプなので、心痛めずに読めます。

  • 倒叙ものの本格ミステリ連作集です。
    四作品入っていますが、いずれも、実行から始まり、捜査の過程でサスペンスが盛り上がり、解決編で終わる。美しいミステリ連作集でした。最後はすべてを瞬一郎が解決しますが、海埜の優秀さを示した好作品ですね。
    久々に芸術探偵シリーズも読みたいですね。

  • 連作倒叙ミステリ。完全犯罪の手口を詳しく解説した「完全犯罪完全指南」を手にして完全犯罪に挑む犯人たち。でももちろん、タイトル通りそれはことごとく破られてしまうわけですが。いったいどこにミスがあったのかを考えながら読むのは、探偵よりもむしろ犯人に移入して楽しめるかもしれません。
    そして各事件の謎解きだけかと思いきや。「完全犯罪完全指南」に潜む謎もまた……! なんにせよ、完全犯罪っていうのは夢のまた夢なのかもしれません。現実には、その方がぐっと平和でしょうけれどね。

  • 4編全て面白かったが、特に1編目の犯人を追い詰める場面が良かった!ところどころ鍵になる伏線には気付けたものの、どれもどのようにトリックを破るのかまでは見えず、そのロジカルさに舌を巻く。また、ラスト数ページまでどんでん返しに次ぐどんでん返しで、楽しめた。

  • 完全犯罪の手引きを手にした犯人が仕掛ける偽装工作に海埜警部補が挑む4作を収録。偽装を予想外の物証でひっくり返す『春は縊殺』はトドメの海埜警部補のセリフも含めて好き過ぎる。エピローグでの〆も爽快でお見事。

  • タイトル通り、倒叙ものを集めた短編集。
    海埜刑事がコロンボ的な位置かな。
    犯人の独白が、どれも鼻持ちならないから、全然共感できない。殺しの動機も身勝手だし。
    ま、共感する必要なんてないんだけど。
    共通して登場する「完全犯罪完全指南」
    そんなものを作る人間も鼻持ちならない。
    なので、どうやって犯人が捕まるかを楽しみながら読むことができた。
    四季の順番のタイトルもいい。
    最後の作品が、それまでのパターンを踏襲していないのにびっくり。あのラストは、本当にびっくり。
    見事にやられた。

  • インターネット上に不定期に配信される『完全犯罪完全指南』を読んだ人物が完全犯罪を試みる連作短編集。海埜刑事と犯人の対決が地味めですし、ミスした部分がバレバレなので多少不満はありますが、殺人の手段や場所にバリエーションを持たせているところは好印象。
    ベストは倒叙ものの体裁を取りつつもトリックは読者に伏せている【冬は氷密室で中毒殺 雪の降りたるは言ふべきにもあらず】。しらばっくれる犯人に対して海埜刑事がしつこく推理を開陳していく展開は読み応えがあります。

  • タイトルの通り倒叙もの四つを纏めた連作集。
    インターネット上に不定期に配信される〈完全犯罪完全指南〉を読んだ人びとが、事故・自殺などに見せかけて殺人を試みる、という話。
    著者の本はこれで4冊目になるが、非常に文章力のある作家で、どの本でもうまく文体の書き換えができていると感じた。
    ただ今回の本、面白いんだけれども、文章があまりにするするーっと読めてしまうのでインパクトに欠く気がしないでもなかった。
    最後の方はこれまでの著作をもっとちゃんと読んでないと楽しめない趣向が凝らされており、そこがちゃんと味わえなかったのも残念(自分のせいだけど)。
    しかし非常に地力があり、面白い作家だと思うので、折に触れこの人の作品は読んでいきたい(何冊か積ん読もあるしね)

  • いわゆるコロンボ式、倒叙ものの連作短編集。
    このスタイルのものは、犯人と探偵役の対決がみどころになると思う。反抗過程で起きた小さなミスを、いかに引き出し、突き詰めるかが盛り上がりどころ。
    構図自体は外れていなかったが、どちらかといえば超人然とした刑事が、犯人の見えないところで解決してしまっている、という印象があったのが少しマイナス点。
    また途中までは、共通して登場する「完全犯罪指南書」の扱いがちょっと中途半端だなぁ、と感じていたが、これについては最後にひっくり返ってよかった。ただ、エピローグではなく、もっと拡大した続編の長編でも書いて、そこで著者の別シリーズの探偵と対決してくれての結末なら、さらによかったのだが。
    3

  •  久々に講談社ノベルスから刊行された、深水黎一郎さんの新刊である。全4編とも、いわゆる倒叙ミステリで構成されている。裏ファイルを入手し、完全犯罪を目論む4人。やがて、警視庁捜査一課の海埜刑事が訪ねてくる。抜かりはないはずだったが…。

     細心の注意を払い、殺人を自殺や事故に偽装した犯人を、どう切り崩すのかが読みどころなのだが、それだけなら『刑事コロンボ』シリーズなど先例は多い。本作の売りとは、ずばり、科学捜査の薀蓄。そう、やはり本作は「薀蓄」シリーズなのだ。

     春。男が恋人を殺害。首吊り自殺に見せかけるつもりが…。警察が着目するのは、首の痕だけではなかったのだ。そして、奇妙な採取の目的とは。でも、その決定的証拠がなければ、言い逃れされたかもしれない。ギリギリの駆け引きだった。

     夏。夜釣り中の転落事故に見せかけるつもりが…。なるほど、それだけの情報量が、含まれているとは、よく勉強したものだ。しかし、友人はメッセージを残していた! それは故意なのか、天の配剤なのか。ここまでやっておいて、詰めも甘かった。

     秋。ミステリー慣れした読者なら聞いたことがある、あの反応。被害者が残したダイイング・メッセージに間一髪気づいた犯人は、除去したつもりが…。まさに後悔先に立たず。最後の皮肉も効いている。理解のある上司で、幸いだった。

     冬。来たぞ密室トリック。科学実験の定番として、そのネタは聞いたことがあったが、海埜がヒントを得たきっかけとはっ! この環境条件が、トリック実現の前提だが、同時に仇にもなってしまった。恐るべし○○○○のパワー。

     これらの犯罪に、面倒な動機や背景などない。現実にもありそうな事件を、すべて科学で切り崩すというのが、個人的にはポイントが高い。最後の最後に、海埜の甥の瞬一郎が登場。全編の結末もまた、一ひねりが効いている。

     本作が気に入ったなら、『世界で一つだけの殺し方』もお薦めだ。

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著者プロフィール

1963年、山形県生まれ。2007年に『ウルチモ・トルッコ』で第36回メフィスト賞を受賞してデビュー。2011年に短篇「人間の尊厳と八〇〇メートル」で、第64回日本推理作家協会賞を受賞。2014年、『最後のトリック』(『ウルチモ・トルッコ』を改題)がベストセラーとなる。2015年刊『ミステリー・アリーナ』で同年の「本格ミステリ・ベスト10」第1位、「このミステリーがすごい!」6位、「週刊文春ミステリーベスト10」4位となる。

「2021年 『虚像のアラベスク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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