天皇の歴史6 江戸時代の天皇 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065116401

作品紹介・あらすじ

講談社創業100周年企画として刊行され、高い評価をえたシリーズの第6巻。徳川幕府の支配のもと政治的には無力だった江戸時代の天皇が、なぜ幕末に至って求心力をもち急浮上したのか。後水尾天皇、霊元天皇は、学問や和歌を奨励し、権力者の徳川将軍に対抗して権威を高める一方、現皇室の直系の先祖に当たる光格天皇は、天明の飢饉に際して飢えた民衆のため幕府に救い米を放出させた。尊王思想のもと孝明天皇が幕末に政治権力の頂点を極めるまで、天皇は武家や民衆からどのように見られ、どんな役割を果たして実質的な君主に大きく変貌したか、その軌跡を明らかにする。
〔原本:『天皇の歴史06巻 江戸時代の天皇』講談社 2011年刊〕

感想・レビュー・書評

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  • 260年という長い江戸時代、歴史の裏舞台とされた天皇と朝廷にもいろいろな動きがあったのだ。後陽成、後水尾は徳川家康・秀忠・家光との権力闘争を繰り広げた。禁中並公家諸法度による幕府の統制により、天皇、そして134家の堂上家(公家)は学問、管弦、その他雑芸、詩、能書に励むことを義務付けられた。その中での天皇はそれらの公家への統制を行う闘い。江戸中期は中御門、桜町、桃園、後桃園と続く天皇夭折により、皇統断絶の危機があり、閑院宮からの光格天皇の即位(1779年)があったことは今の危機を思い起こさせる。江戸時代を通じて天皇の権威が高まっていくその動きが良く分かった。寛政期の老中・松平定信が天皇は神国の主であり、幕臣も天皇の配下である将、軍は天皇から政務を委任されていると認識していたことは興味深いところである。江戸時代に徐々に天皇の権威が高まっていた証左だと感じた。新居白石、荻生徂徠が官位制度が天皇との君臣関係を大名に想起させるので危険だと警告していたということも面白い。光格から現在に至る天皇家の伝統が出来上がったことを感じた。明正、後桜町の2人の女性天皇については肖像画がないことに象徴されるようにその特殊性、天皇としての神事・儀礼を務める上での限界があったことも、今後の女性天皇を考える上で、古代の女帝以上に参考になると思う。

  • 江戸時代の天皇なので儀式についての記述が多く、その点では少々退屈であった。しかしながら、その中でも天皇は制度として一貫して権威を保ち続け、幕末にそれが一気に爆発することとなる。その過程が非常に興味深い。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2022年 『もういちど読みとおす 山川 新日本史 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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