QJKJQ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065125908

作品紹介・あらすじ

17歳の女子高生・市野亜李亜は、猟奇殺人鬼の一家で生まれ育った。父は血を抜いて人を殺し、母は撲殺、兄は噛みついて失血させ、亜李亜はスタッグナイフで刺し殺す。それでも、猟奇殺人の秘密をお互いに共有しながら、西東京市の家でひっそりと暮らしていた。ところがある日、兄が部屋で殺されているのを亜李亜は発見する。もちろん警察は呼べない。そして翌日には母がいなくなった。残されたのは父と亜李亜。彼女は自分の父親に疑いの目を向けるが……。

感想・レビュー・書評

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  • 最近激ハマりしている佐藤究さんの江戸川乱歩賞受賞作品。
    「テスカトリポカ」「Ank」を読んで知性と狂気の入り交じった世界観に引き込まれている。

    今作品もやはり知性と狂気の飛び抜けた物語で、新しい未知の知識が自分に入り込んで来るかのような感覚を覚える。
    それは深層心理のだいぶ奥深い所を刺激させられる物で、異物感、狂気を含んだある意味では触れない方がいいもののような激情とも感じられる。
    一言で表すと「不気味」
    それを圧倒的な文章力で描ききっている。
    天才だと感じている。

    人間という生物を怖いくらいに知っている方だと感じる。生物学(人間学)的にも理学的にも精神学的にもあらゆる方面から人間を炙り出してくる。
    知ってたのに知らなかった事に、見ていたのに見なかった事に、この作品を読んで恐ろしくなった。
    知らなければよかったかも、知った上で考えなくてもよかったのかも。
    知れば知る程、考えれば考える程、ドツボにハマる。そしてまた読み進めるの繰り返し。一つ一つ感情が沸き起こるが考えては静まっていく。
    作者の言葉を借りるならばそれこそが自分にとって絶後の畏怖(ダムナティオ•メモリアエ)。
    考えては静まり落ち着きまた次に進む。
    読後総合的に考えてみれば気味が悪い後味、不気味さが多面的に黒々と光を吸収する黒曜石のような作品だった。

    読者の自分からすれば作者こそ恐怖。天才という畏敬。知性と狂気を同時に持ち合わせ同時に展開している。
    そこに惹かれる自分。自分も知性と狂気を望んでいるのに違いない。

    そんな気持ちのまま、書店にて作者の「幽玄F」に手を伸ばしている、なんだか恐ろしい。

  • 著者初読み。苦手な〝グロくて凄惨〟な表現が多いにもかかわらず殺人鬼一家の紹介から引き込まれて一気読み。主人公の女子高生に最後神々しささえ感じた。こういう世界観の話は他にもあるかもしれないがいつも読んでるミステリーと違い新鮮だった。

  • シリアルキラーのファミリーが登場する。
    その世界観は西尾維新の「戯言シリーズ」「人間シリーズ」かと思うものだった。
    しかし、話が進むとそんな単純な話ではなくどんどん引き込まれていく。後半は真実と虚構が入り乱れる。
    久しぶりの乱歩賞受賞作だったが面白かった。

  • 江戸川乱歩賞受賞作。
    探偵小説を奨励するために制定されたという江戸川乱歩賞を受賞したことには賛否あったりするのかなあとは思いますが、個人的にはとても楽しめました。
    崩れ落ちてゆく現実の中、手探りで進んでゆく亜李亜は「信頼できない語り手」で、犯人を見つけ出すという探偵的な目的から打って変わり、中盤以降は自己の内面を掘り下げるような、不確かなアイデンティティを確立していく、あるいは逆に破壊していくような哲学的なテーマへと話は移っていきます。
    ミステリであり、哲学書でも成長譚でもあり、ある種生まれ変わりの話でもある。一言で言い表せないジャンルと魅力があり、一気に読んでしまいました。

    また、文章にも独特のリズムがあって好きです。

  • 人間の脳というのは、こんな風に判断を狂わせるものなのか?

    後半の議論は興味深いものだったし、嫌いではない。

    読み終えた時にもやっとしたものがなかったわけじゃないけど、うーん⁈

  • 物語に漂っている薄暗くて胸にずしっと重りを乗せられたような黒い雰囲気が好きです。この本が抱く謎が明らかになった瞬間、黒色の濃さはピークに達して、私はどん底に落とされた気分でした。気持ちいいくらいに深く落とされたので、この作者に病みつきになりそうです。個人的には中村文則さんと同じ空気を感じました。(どん底への落とし方は全く違うけれど)

  • ネットで書影を見た瞬間惚れたカバー。
    マックス・エルンストの「カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢」だ。
    ただ雰囲気のあるイラストだからカバーに採用したということではなく、作中でコラージュという概念が重要だから。

    で、一旦手にとってみたが、……うーん、文体があんまり好みじゃないなー……、この文体は綾辻行人で十分かな……、メフィスト系かな……と逡巡していた。
    そしたらなんと、押井守がぴあアプリで連載している「あの映画、なんだっけ?」の第27回(ウイルスものでオススメの映画を教えて下さい)で、
    「もうひとつ、小説では『Ank : a mirroring ape』(佐藤究/講談社文庫)というのが面白かった。チンパンジーの研究から始まる、ウイルスのパンデミックもの。面白くて、久々に朝まで一気読みしたくらい」
    と言っているではないか。
    しかも最新作「テスカポリトカ」で直木賞候補になっているではないか。
    読み終えようとした当日に直木賞受賞のニュース。おめでとうございます。

    「Ank」より先に本書を読むつもりになったのは、参考文献にジャック・ラカンの本が挙げられていたから。
    「私の家族は全員、猟奇殺人鬼」という帯の文句を、中盤で軽々と超え、思索的な局面まで読者をグイグイ引っ張ってくれる。
    深層心理学精神分析形而上学認知論について、個人的にはかつてカブれた分野なので読んでいて楽しかった。
    が、ミステリ好きからの評判は決して芳しくない様子。それもわかる。
    結局※オチじゃんとか、言葉での説明多すぎだろとか、近場ウロウロという乱歩賞の選評とかも、確かに。
    ミステリには疎い自分でも島田荘司や笠井潔と同種の危うさを感じた。
    スラヴォイ・ジジェクの遣り口を小説に落とし込んだらこんな感じだろうとも思う。
    (未読だが久保田泰考「ニューロラカン:脳とフロイト的無意識のリアル」を読めばこの危うさに対峙するきっかけがつかめそうな気がしているが)

    だが細い橋の上を強引に手を引っ張っていかれたような局面は、引っ張ってくれた作者の熱量も合わせて、嬉しい。読書の醍醐味だとも感じた。
    一歩踏み込んで考えれば、「見ているだけの存在」なのは何十も何百も小説の中の人死にを読んで楽しんでいる読者のことでもあるのでは、と。
    文体はやはり最後まで馴染めなかったが、他の作品の題材も面白そう。

  • グロいところもあったけれど、個人的には非常に好みな設定だった。
    文章が上手いのでするする読める。
    他の作品も読んでみよう。

  • シンプルにかっこいいタイトルと、マックスエルンストの『カルメル修道院に入ろうとした少女の夢』から抜粋された装丁に惹かれ「なんじゃこの中二病心を擽られる本はぁ!!」と勢い勇んで手に取りました。
    結果、「封印された左腕が疼く!!」とまでは行かずとも、ダークなサスペンス好きの私は夢中になって読んだ次第。

    冒頭はグロ描写が凄く、始まったぞぉ!と覚悟を決めたのですが途中からどうも様子が変わってきます。
    もしかするとこれは、私が思っていた殺人鬼一家の話とは全く違うのでは…?
    もうそこからはノンストップです。

    皆さんは殺人鬼一家の話、とだけ聞くとどんな物語を想像しますか?
    恐らく、そのどれとも違う話になって行くと思います。
    『QJKJQ』の意味が分かった時、「かっこよすぎるだろ!!」と天を仰ぎました。(お家芸)

    まさにThe江戸川乱歩賞。
    刺激的な世界に足を踏み入れたい方は冒頭とクライマックスのグロには目を瞑り、是非読まれてみてはいかがでしょうか。(こんな事ばかり言っている気がしますが、小説のグロ描写は本当に想像力を掻き立てられるので、無理な方にはとことん無理なんだろうなぁ)

    佐藤さんの『テスカトリポカ』がよりダークみを増しているらしいので読む予定です。楽しみだなぁ。

  • 『テスカトリポカ』で直木賞を受賞した佐藤究さんのデビュー作。佐藤さんは一度群像新人文学賞でデビューし、それから江戸川乱歩賞に応募して本作『QJKJQ』で受賞したとのことで、正確には再デビュー作とのこと。たまたま本屋で手に取って面白そうだったので読んだが、経歴だけでなく話も凄かった。

    話は家族全員が殺人鬼の猟奇一家に生まれた主人公亜季亜(アリア)がある日、兄が自室で殺されているのを発見する。翌日母が失踪。兄も母も殺しのプロなので、並の人には彼らを手にかけることはできない。やがて亜季亜は残った父を疑うことに…。ここから話が急展開して国家や社会、あるいは人類規模の壮大な話になっていく。

    殺人とはなんなのか、ということを突き詰めた話はいい意味で異様だった。殺人の考察、哲学、遺伝子、脳科学、社会学、著者の豊富で雑多な知識がフィクションにリアリティを与えていた。突拍子もない物語なのだが、もしこういった話が本当にあって、自分が亜季亜だったとしたら?と考えたら背筋が寒くなった。佐藤さんの他の著作も読んでみたいと思った。

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著者プロフィール

1977年福岡県生まれ。2004年、佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、デビュー。2016年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。『Ank: a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞、第39回吉川英治文学新人賞を、『テスカトリポカ』で第34回山本周五郎賞、第165回直木賞を受賞。

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