牟田口廉也 「愚将」はいかにして生み出されたのか (星海社新書)

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  • 星海社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065127285

作品紹介・あらすじ

日本人の愚かさが最悪の将を生んだ。太平洋戦争、インパール作戦で日本陸軍の「白骨街道」を敷いた愚将・牟田口廉也の生涯を辿る。

感想・レビュー・書評

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  •  名将、知将、現代だったらビジネスリーダーとか、言い方違えどトップに立つ人間になるには、という本はもちろん多い。
     逆に、愚将はいかにして生み出されたのかという逆の本。

     牟田口廉也はインパール作戦の愚将として知られる。
     なぜ誰もが失敗を予感する作戦を強硬に進めようとしたのか。

     盧溝橋事件での牟田口の先走りと、それを追認した男、河邊の存在があった。
     その二人は南方軍司令と、軍司令長としてビルマに立ち、二人に対するザ・忖度が続く。

     上に向かってNOと言えない組織がトップの暴走を加速させる。
     崩壊する組織の特徴を学ぶ。

  • 牟田口廉也 「愚将」はいかにして生み出されたのか。広中 一成先生の著書。インパール作戦を失敗に導いたことで知られる牟田口廉也陸軍司令官。終戦記念日の時期になると毎年のように牟田口廉也陸軍司令官の名前が出てくる。牟田口廉也陸軍司令官が失敗したことは事実かもしれないけれどほかのだれかが牟田口廉也陸軍司令官と同じ立場にいたら失敗を防げたかどうかはだれにもわからない。インパール作戦を失敗に導いた牟田口廉也陸軍司令官に自分可愛さあまっての無責任な言動があったとすればそれは批判されても当然のことなのかも。

  • 近代史を少し深掘りした人には有名な人物。
    彼を中心に無謀な作戦が立案され実行し、大勢の命が散ったのは歴史的な事実。
    彼が歩んだキャリアと紐解きながら、なぜ愚将として有名になってしまったかを分析&解説した本。

    結論から言うと不適材不適所なのだろう。しかし、そうなった背景には日本陸軍のカルチャーが深く関係していることもわかる。
    個人の責任だけでなく、日本陸軍という組織としての責任も大きい。日本陸軍の組織的な欠陥は、「失敗の本質」という書籍に詳しく書かれているのでそちらも参照するとわかりやすい。

    個人の責任という意味では、戦後も裁かれるものの罪に問われることなく日本で病気による最期を迎えたという点を指摘するコメントも多い。
    しかし終戦後60年以上経っても愚将として語り継がれており、本人の性格や資質について今も尚、研究対象になっているという事実は不名誉であり、魂という側面においてはかなり重い罰を背負っているというのが、私の所感である。

  •  牟田口廉也の評伝だが、関連する戦史まで広めに扱う。焦点は盧溝橋事件、シンガポール島攻略作戦、インパール作戦の3つ。シンガポールの作戦は、他の2件とは異なり牟田口は「常勝将軍」とのあだ名を得るが、それでも著者は、牟田口の人命軽視や作戦遂行への焦りからの被害拡大を指摘している。
     盧溝橋事件とインパール作戦に際し著者が指摘するのは、「不適材不適所」の派閥人事。2.26事件後、皇道派の牟田口は実戦経験が乏しいのに支那派遣軍に「左遷」される。この人事がなかったら盧溝橋事件の拡大は抑えられたのか、考えてしまう。
     同時に著者は牟田口個人だけの責任とはしない。両件で上司だった河邊はじめ上位組織が支持や承認したことも指摘。そして、人事と合わせ、日本軍の組織としての不合理性が原因としている。

  • 牟田口だけの問題ではなく、その意志決定をとどめることができなかった日本陸軍という組織の問題、責任と権限が不明瞭な点ほんと日本という国は一向に変わらない。
    下部軍人の多くが、インパール作戦について否定的な見解を示しているのに、その意見に耳を傾けず(耳を傾けることが負け犬根性とか言われるんだろう)、結局多くの将兵を死地に追いやったのだ。

  • 文献の丹念な研究に裏付けられた名著。文章も、論理立てて書かれていて、読みやすい。
    物事はすべて、人間の判断の積み重ねによって起きる。1人の人間の判断は大きくないが、決して小さくはない。インパール作戦の責任は、日本軍の組織全体にある。しかし、牟田口のプライドが、多くの人間を死に至らしめたことも否定できない。やはり、多くの人間の生死を人の判断に委ねることになる、戦争という行為そのものを無くさなくてはならない。

  • いかに日本陸軍が酷い組織であったことがよくわかる本である。また改めて牟田口が無能な軍人であったことがよくわかる。この組織と牟田口のせいでどれだけの若い命が戦場で失われたことか。無駄死にである。戦後も反省することもなく、自分の正当性を疑わず、のうのうと生きたことに怒りを覚える。

  • 東2法経図・6F開架 289.1A/Mu91h//K

  • 単に愚なだけであったら、指揮官に採用されてはなかったはずで、個人的な性格上の問題点と、派閥争い、事なかれ主義の上司などによって不幸が起きた過程がよく伝わった。
    派閥争いが明治維新の藩単位で起こっていることを見ると、明治維新そのものの功罪を考えないといけない気がする。

  • 2018年8月読了。
    情実人事が組織運営にどんな結果を招くか、その視点から読むと大変参考になる。
    また、インパール作戦以前の牟田口中将がどんな戦歴を積んできた人物なのかも詳細に記載あり。

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著者プロフィール

1978年、愛知県生まれ。愛知学院大学文学部准教授。2012年、愛知大学大学院中国研究科博士後期課程修了。博士(中国研究)。専門は中国近現代史、日中戦争史、中国傀儡政権史。単著に『「華中特務工作」秘蔵写真帖』(彩流社、2011年)、『日中和平工作の記録』(彩流社、2013年)、『語り継ぐ戦争』(えにし書房、2014年)、『冀東政権と日中関係』(汲古書院、2017年)、『牟田口廉也』(星海社、2019年)、『傀儡政権』(KADOKAWA、2019年)、『後期日中戦争』(KADOKAWA、2021年)などがある。

「2022年 『増補新版 通州事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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