ぼくは本を読んでいる。

著者 :
  • 講談社
3.77
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本棚登録 : 422
感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065142332

作品紹介・あらすじ

ぼくの家には壁一面に天井まである本棚が置かれた「本部屋」がある。そこで見つけた、紙カバーに包まれた文庫サイズの本。ぼくの両親のどちらかが小学生のころに読んだはずの本。
どうしてだかぼくは、それを親に隠れてこっそり読みたくなった――。

『小公女』を読み始めたルカは、主人公のセーラ・クルーの行動にツッコミを入れつつ、両親がまだスマホを与えてくれない理由を聞きつつ、幼なじみや転校生と日々の雑談をこなしつつ、手にした本を読み終えることができるのだろうか?
幼なじみのナナ、2年ぶりに一緒のクラスになった安田、読書好きの転校生カズサとの日常は、この「読書」によってどんなふうに変わっていくのだろうか?

映画化もされた『お引越し』で知られる児童文学作家、ひこ・田中が描く、本好きではない少年の1週間の読書体験。「読書離れ」とか言われてしまう今時の子どもたちよ、本なんて好きではなくても読書はできる! この本で逆襲せよ!!
【対象:小学校高学年以上】

感想・レビュー・書評

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  • 「どうしてだかぼくは、それを親に隠れてこっそり読みたくなった。」

    小5のルカが語る一週間の出来事。
    自宅の本部屋に偶然見つけたカバーがついたままの本5冊。
    父親のモノか母親のモノか分からない。そしてとても古い。
    こっそり開いてみると、そこには「小公女」のタイトルがあった。。。

    同じマンションに住む同級生のナナ。2年ぶりに同じクラスになった安田。
    大阪から転校してきた本好きのカズハ。あとはルカのお父さんとお母さん。
    これが主な登場人物だ。
    ひとり本を読むことで自分の気持ちや周りとの距離感に少しずつ変化が現れる様子が、ルカの言葉で素直に語られる。

    脇明子さんが言うところの「自分を見つめるもうひとりの自分」を、読書によってしっかり育てていく。
    特に本好きでもなかったルカだが、主人公の気持ちに寄り添うことで「想像力」を伸ばし、読んだ感想を友だちに話して新たな見方がくわえられ、自分のものになっていく。

    自分の部屋にはノックしてから入ってほしい。
    頭を撫でるのはやめてほしい。ちゃん付けで名前を呼ばないで。
    ・・その一方で、父親と母親が他人だと知って驚く。
    父子家庭のカズハが、一万円札で買い物しておつりをもらっている場面でびっくりしたり。
    この辺りの視点と驚きが面白い。
    生まれたときからネット環境が整っていても、子どもってそんなに変わらないのね。

    何度か繰り返される「ぼくは本を読んでいる」というフレーズ。
    するとルカは本の世界に入り込む。
    知らない言葉が出てくるたびにネットで検索し「想像力」って何だろう、「自尊心」って何だろうと考えを深めていく。
    「小公女」ではセーラに同情したり感心したり。
    「あしながおじさん」では、正体を明かさないおじさんにやきもきしたり。
    カズハには、翻訳による文章の違いを教えてもらったりもする。
    3冊目の「赤毛のアン」を手に取るところで終わる。
    男子のルカにこの選書というのが、著者の粋な計らいかも。
    カズハに言わせれば「男子の本も女子の本もない。古いも新しいもない。本は面白いか面白くないかのふたつ」ということになる。

    家族との会話や、友だちとの会話がどれも本当に素敵。
    あの頃はこんなことを喋っていたなと、甘酸っぱい思いでふり返ることしばしば。
    自分を俯瞰できるようになった子は親の良き話し相手にもなり、親もまた知らないことは知らないと肩肘張らずに言えるようになっていく。
    ごく普通の子であるルカが、本を読むことでよく考える子に成長していく過程がとても清々しい。
    本の中の本を読みながら、私もルカと一緒にいっぱい考えた。
    ひこ・田中さんによるお勧めの良書。

    • nejidonさん
      しょういちさん、はじめまして(^^♪
      フォローとコメントをいただき、ありがとうございます!
      とても嬉しいです。
      本の内容を分かりやすく...
      しょういちさん、はじめまして(^^♪
      フォローとコメントをいただき、ありがとうございます!
      とても嬉しいです。
      本の内容を分かりやすく、かいつまんで説明している。
      その本の魅力を自分の言葉で表している。
      ・・なんて素敵な表現でしょう。うっとりです。
      そういう方がいらしたら、私も夢中になります(*^_^*)

      申し訳ないのですが、小説(特に現代小説)はほとんど読みません。
      話題の本を追いかけたりもしません。
      そんなわけで、しょういちさんのお好みの本がなかなか登場しない可能性大です。
      多くのブク友さんとはまるで違う道を歩んでおりますので、そこだけご了承くださいね。
      これからもお互い良書に巡り合って、楽しいお話ができますように。
      こちらこそどうぞよろしくお願いします♪
      2021/03/07
    • 夜型さん
      僕のコナンもすぐいいね!して下さいますね。

      じわじわと認知されていたんですね、Don子さんとのやり取り。
      僕のコナンもすぐいいね!して下さいますね。

      じわじわと認知されていたんですね、Don子さんとのやり取り。
      2021/03/24
    • nejidonさん
      夜型さん♪
      もちろん夜型さんのことも忘れたことはありませんよ!!
      五輪書のレビュー、とても良かったです。
      ビジネスのためや教養のためで...
      夜型さん♪
      もちろん夜型さんのことも忘れたことはありませんよ!!
      五輪書のレビュー、とても良かったです。
      ビジネスのためや教養のためでは、気になる箇所を拾い読みして都合の良い解釈をするようになりそうです。
      最近の風潮をちょっと苦々しく思っておりましたので、胸がすっとしました。
      2021/03/24
  • 両親が持つ「本部屋」の本棚の一番上にあるカバーのかかった五冊の小さな本。どんな内容のものなのか気になった小学五年生の主人公・成瀬ルカは、もともと本が好きなのだと思う。親の持ち物である『小公女』や『あしながおじさん』を分からない言葉を調べながら読みこなし、その内容について考えるという本の読み方は、大人でもなかなか出来ることではない。ここまで"深読み"ができれば一流の「読書人」じゃないかな、と思った。恐るべし小学生!

  • ジーニーさんの本棚から♪

  • 小学校5年生のルカくんが、両親の子供の頃に読んでいたであろう「小公女」「あしながおじさん」を「本部屋」から偶然みつけ出して読む話。
    まず、家に本の部屋があることが、なんとも羨ましい。
    大人になってから読むと「名作」と聞くだけで敷居が高くなりがちだけど、子ども目線からの二つの物語が、とても面白く感じられて良かった。
    本作品は児童書なので、子ども達がこれを読んでから「小公女」や「あしながおじさん」へも興味が出て読んでみる、というきっかけ本になっているのかな?という部分に引っ掛かりを感じたが。わざわざカバーをかけてあったという設定まで、両親の策なのでは?とか考えだしちゃって、星4。いや、そんな、斜めな読み方はしない方が楽しめるか。反省。

  • 小学校5年生。
    会話は大人っぽいし、こんなことまで話すかってこともあるけど、
    全体としてはおもしろい。
    本を読みながらその時々の思いを書いていくっておもしろいと思ったし、世代によって、本の訳者によって書き方が全然違うってことに主人公が気づいていくのもよかった。
    今の子たちは生まれた時からスマホやパソコンがあるんだということを改めて考えさせられた。

  • ぼくの気持ちになって、新しい本を読む体験が出来る。読書嫌いに勧めたい!
    3冊目に手に取った本の題名に思わず笑った。
    泥沼にはまりそうな予感。

  • 本部屋が羨ましい・・・。

    小学校5年生の自分は、主人公のようにそんなに本読んでなかったなぁ~と。(ずっこけ三人組くらい?)どれも、一生に一度は読んでみようかな、と思った本がたくさんあった。

    買い物に行くシーンでは
    大阪から転校してきた女の子が、慣れたように買い物し、会計時に1万円つかい「おぉ~。」1万円からおつりもらっても「お~。」と反応する小学校5年生がかわいくてクスリと笑ってしまった。

  • 本のお部屋羨ましい。親子の会話も素敵でした。何かに興味をもって本を読んだり、調べ物したりする姿勢って自分を広げるのにすごく大切なこと。それが物語の中で自然に描かれててよかった。学校の図書室に置きたい。

  • 有名な海外古典作品。両親の本棚から未知のそれらを見つけ、自分の部屋へとこっそり持ち帰り、読み進めながら湧き出る感情に思いを巡らせ、調べたり話したり、周りへと広げ繋げて考える。なんと理想的な読書だろう。そう思いながら読んでいた。生まれた時からインターネットが当たり前の日常で育つ小学五年の子供たちと、それがなかった世代の人々。読み手の背景が異なり本の訳者が違えば受ける印象も変わる。だから楽しい。

  • 児童文学とは知らずに表紙の雰囲気と本の題名だけで手に取った本。小学5年生の男の子が、両親の書斎にあった昔ながらの児童文学を読む。それも生活の中で少しずつ読む、という、私にとっては大変興味深い内容でした。小学生の頃、こうしてもっと本に没頭すればよかったのに、私はそれほど本が好きではなかったな〜。

    いま、大人になってからこの本に出会ったのはある意味運命かもしれない。実際に小学生に好きな本を紹介してもらって読むのが好きだ。本から関わるコミュニケーションは、小学生と大人でも成立するのだから。この本を現在の小学生が読むと、どんな感想を持つのかが知りたいな。

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著者プロフィール

1953年、大阪府生まれ。同志社大学文学部卒業。1991年、『お引越し』で第1回椋鳩十児童文学賞を受賞。同作は相米慎二監督により映画化された。1997年、『ごめん』で第44回産経児童出版文化賞JR賞を受賞。同作は冨樫森監督により映画化された。2017年、「なりたて中学生」シリーズ(講談社)で第57回日本児童文学者協会賞を受賞。他の著書に、「レッツ」シリーズ、『ハルとカナ』『サンタちゃん』『ぼくは本を読んでいる。』(以上、講談社)、「モールランド・ストーリー」シリーズ(福音館書店)、『大人のための児童文学講座』(徳間書店)、『ふしぎなふしぎな子どもの物語 なぜ成長を描かなくなったのか?』(光文社新書)など。『児童文学書評』主宰。

「2023年 『あした、弁当を作る。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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