作品紹介・あらすじ
謎めく館は、美しい――メフィスト賞受賞作の大人気「堂」シリーズ、最大の謎とともに、ここに完結!
リーマン予想を巡る天才数学者達の、最後の事件!
感想・レビュー・書評
絞り込み
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シリーズ完結。
ドラマティックであったような、落ち着いた最後だったような。読み手に預けられたような結末に感じた。
全編通して大変面白かったが、「堂」が壮大だったために自分の想像力が追いつかず建築物のイメージが掴みづらいというのは個人的に問題点だった。
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堂シリーズのグランドフィナーレ。24年前の不可解な連続殺人事件の現場の北海道の孤島で、再び事件が起こる。凍死や焼死など不可能犯罪のオンパレードで、めちゃくちゃ面白いのですが、ご存知の通りバカミスです。今回、館回転しないんですが、それ以外にいろいろすごい。
主人公交代と主要キャラの退場によって、明らかに勢いを失ってしまったと感じる堂シリーズですが、最後はメタっぽい後日談を入れてハッピーエンド?になりました。十和田の扱いだけ本当に悔やまれる。見せ場作るの遅すぎる。
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○ 総合評価
永らく続いた「堂」シリーズのトリを飾る作品。黒幕的存在である藤衛と善知鳥神,宮司百合子の対決が描かれる。
大きなテーマになっているのは「リーマン予想」。リーマン予想が数学上の重要な未解決問題であることは間違いないが,このシリーズの中では,リーマン予想の解を知ることが神に近い存在になることであり,藤衛はその解を知っている。藤衛は,リーマン予想の解に近づく数学者を殺害しており,十和田只人は,藤衛からリーマン予想の解を聞くために,シリーズにおける「探偵役」の地位を捨て,藤衛側に付いて藤衛の犯罪に手を貸している。
ということなのだが,リーマン予想の解を知れば神に近い存在になるという点や,藤衛がリーマン予想の解を独占しているという点にリアリティがない。よって,この作品の底辺にある藤衛の殺人の動機にも共感できないし,十和田只人のキャラクターの変化も受け入れがたいものになっている。
藤衛は、24年前にも大聖堂がある島に4人の天才数学者を集めて殺害している。4人の死因は焼死,凍死,刺殺,撲殺の4種類。そのときに,宮司司の両親や善知鳥神の母親も死亡している。
24年が立った後,藤衛は再び4人の天才数学者を集め,24年前と同じ方法で殺害する。その後,襟裳岬で講演をしていた藤衛が大聖堂を訪れる。
大聖堂ではあり得ないと考えられていた焼死と凍死のトリックは水。水を一気に投入して気圧の変化で過熱し焼死させ,水を一気に出すことで同様に冷却し,凍死させた。もう一つ,襟裳岬で講演をしていた藤衛が,休憩時間に殺人をすることができたのは,大聖堂がある島が動くというトリックだった。24年前はこれに加え,当時のソ連と結託して,潜水艦を用意させてアリバイを作った。
藤衛は,十和田只人に命じて,全ての謎を解いた善知鳥神と宮司百合子を殺害しようとするが,百合子の説得を受けた十和田只人に殺害される。大聖堂は火山の噴火で壊滅。善知鳥神は自分が藤衛の子ではなく,沼四郎の子であることを告白して,冷めることのない眠りにつく。
エピローグでは百合子が数学者として成功し,リーマン予想に挑戦する傍ら,周木律名義で小説を書いていることが示される。十和田只人に再会するために。最後は,百合子が十和田只人に再会する直前で終わる。
というわけでシリーズが終わり。この作品を単体で見たときの感想は冗長であるということ。24年前の事件と同じトリックで,4人の殺害のうち,2人は撲殺と視察でありトリックなし。焼死と凍死については,水を利用した気圧の変化で断熱膨張と断熱圧縮を利用していたという館の構造を利用した物理トリック。これと大聖堂る島が移動するというアリバイトリック。この2つのバカミス的トリックだけ。この2つで600ページ以上の小説を書いている。
必然的に中だるみをする。特に藤衛による講演の描写がひどい。リーマン予想を解いた天才的数学者の講演とのことだが,さっぱりそのように感じない。それでいて,物語では,これも天才的な数学者達が「素晴らしい講演だ。」と褒め称えるので,白けてしまう。
最後は十和田只人があっさり藤衛を裏切り,藤衛も死亡。ここまで引っ張ってこのラストもひどい。十和田只人はリーマン予想の解を知るために殺人の協力までしたのに,宮司百合子に説得されて藤衛を殺害してしまうという。最後までそのキャラクターがブレている。
エピローグでは伏線もなく善知鳥神がずっと眠り続けて,宮司百合子は小説家,周木律になってこのシリーズ書いていたというオチ。このオチも取って付けたように感じる。そもそも十和田只人がさっぱり魅力的でないので,最後になぜ宮司百合子が十和田只人にそこまで会いたいと感じたのかも分からない。
トータルの評価としては★3としておく。2つのバカミス的トリックは面白くないわけではない。もっと短く,シンプルに使っていれば,バカミスとしては良作になっていたと思う。シリーズの途中から藤衛の小物感は感じていたし,十和田只人のキャラクターはぶれていた。言ってみれば想定内のラスト。高い評価はできないが,全く面白くなかったわけではない。もう少しスジが整っていれば,もっと面白いシリーズになっていたと思う。
○ サプライズ ★☆☆☆☆
善知鳥神が実は沼四郎の子だったとか,眠り続ける病気になるとかサプライズっぽいオチはあるが伏線がないのでさっぱり驚けない。ハウダニットの小説だし,サプライズはない。
○ 熱中度 ★★☆☆☆
シリーズの最後で,どういう終わり方をするかは気になった。しかし,冗長過ぎる。
○ インパクト ★★☆☆☆
島が移動するというトリックや,気圧を利用した焼死・凍死のトリックはインパクトがないわけではないのだが…。話のスジとしてはインパクトが薄い。特に藤衛が小物過ぎる。
○ キャラクター ★★☆☆☆
少なくとも,最初は十和田只人はそれなりに魅力のあるキャラクターだったのだが,その魅力はすっかり薄れた。善知鳥神も同様。すっかりただのいい人になっている。かといって宮司百合子が魅力的というわけでもなく,藤衛も小物過ぎる。キャラクターの魅力は薄い。
○ 読後感 ★★★☆☆
実は宮司百合子が周木律でしたという取って付けたようなオチ。十和田只人がさっぱり魅力を失っているので,宮司百合子が十和田只人と再会できたことを匂わせるラストもなんとも感じない。良くも悪くもない読後感
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クライマックスに向けてちょっとドラマ的な展開を重ねすぎたと思う。
最後の最後に今までに積み上げてきた、あえて読者が望まない方に進んできた物語の着地が、読者が納得できるものではなかったと思う。
シリーズを通じて、キャラクターや数学の知識について、またトリックの大胆さや表現方法について、楽しみながら読めたと思う。
特にエピローグは、ちょっとベタすぎるよなーと思いました。
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伽藍堂から物語が動きすぎて割と一気読みに近かった。
善知鳥神惜しいけど、良い終わり方だった。
物語全て通して星5って感じ。
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※途中、他作品のキャラ名を使ってネタバレしてます。S&Mシリーズ既読で本シリーズを今から読もうと考えている方はご注意下さい。
挑戦的かつ挑発的な館トリックが魅力の堂シリーズ。本作はシリーズ通して読んできた読者としては、一抹の寂しさを感じながら読み終えました。
…………と言いたいところですが、一つ前(鏡面堂の殺人)を読んでないと本作を読んでる真っ最中に気付いてしまって、何かもうすんません←
※以下、S&Mシリーズのキャラ名に変換してます。
犀川先生が実は殺人者だったり、喜多先生が4んじゃったり、四季と萌絵ちゃんが実の姉妹と思わせて実は…だったり、スターウォーズみたいな攻防があったり、四季ポジションと見せかけて実は小物感がすごかったラスボスだったり。
キャラ造形に関してはかなりツッコミどころの多かったシリーズでした。特にラスボスの多弁になればなるほど増す小物感が残念でした。
ですが、本シリーズの最大の魅力は、なんといってもトリックです。
バカミスやトンデモミステリの誹りを免れないくらいギリギリなところを攻めながらも、毎回果敢に攻めていくその姿勢に!!!感動しきりでした!!!!
あーそのトリックこれがこうなってるんでしょ??うんうんやっぱりね〜分かってた分かってた………って待て待てオイオイそー来ちゃうの????!!!もう一本あったの???!!!!!!
って毎回なってた、騙されやすい幸せなミステリファンは私です←
本作も、ラスボスの語りがちょっと(かなり)くどかったし、主要キャラ達の会話が思わせぶり過ぎてそこはちょっと食傷だったけど、いいんです。
私は!
こーゆーのが!!
好きなんです!!!
呼んで直後の深夜にお酒飲みながら投稿してるので、多分後で消す。
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すべての事件を操る数学者・藤衛に招かれ、北海道の孤島に聳え立つ大聖堂を訪れた宮司百合子。
そこは、宮司家の両親が命を落とした場所だった。
災禍再び、リーマン予想の解を巡り、焼死や凍死など不可解な殺人が発生する。
しかし、藤は遠く離れた襟裳岬で講演の最中だった。
大人気「堂」シリーズ、ここに証明終了!
(アマゾンより引用)
いや、面白くはあったんだけど、シリーズ最終巻から読むという暴挙に出たのがそもそもの間違いで…(笑)
人物相関図が???
過去、何があったのかも???
で、お姉ちゃんは結局何であんな状態に??
著者プロフィール
某国立大学建築学科卒業。『眼球堂の殺人』で第47回メフィスト賞を受賞しデビュー。本格ミステリの系譜を継ぐ書き手として絶賛を浴びる。他の著書にデビュー作を含む「堂」シリーズ、『猫又お双と消えた令嬢』にはじまる「猫又お双」シリーズ、『災厄』『暴走』『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』『アールダーの方舟』『不死症』『幻屍症』『LOST 失覚探偵』『死者の雨‐モヘンジョダロの墓標‐』『土葬症 ザ・グレイヴ』『小説 Fukushima 50』『あしたの官僚』『ネメシス3』『楽園のアダム』がある。
「2023年 『WALL』 で使われていた紹介文から引用しています。」
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