増補改訂 アースダイバー

  • 講談社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065153987

作品紹介・あらすじ

2005年、『アースダイバー』は、東京の風景が一変する散歩の革命を起こし大ベストセラーになりました。野生の東京を描く東京創世記でした。
その後、『大阪アースダイバー』(2012)『アースダイバー 東京の聖地』(2017)、『アースダイバー 神社編』(刊行準備中)と日本の歴史を書きかえる射程をもつ大きなプロジェクトになっています。

縄文、そして「海民」へと日本のルーツを遡り、地形の無意識、文化と自然の相互作用を探るアースダイビングは、見えない東京を私たちに教えてくれます。

今回の増補改訂で隅田川と多摩川流域といった海民文化の要素が色濃く残る地域を追加しました。
そして東京の中心地であり、アースダイバーの出立点である大宮八幡へと帰還します。
東京アースダイバーの決定版にして完結版!

【120ページ加筆】
【全24点アースダイビング・マップ付き】
【第9回桑原武夫学芸賞受賞】

[目次]
増補改訂 まえがき
プロローグ
第1章 ウォーミングアップ―東京鳥瞰
第2章 湿った土地と乾いた土地―新宿~四谷
第3章 死と森―渋谷~明治神宮
第4章 タナトスの塔 異文/東京タワー―東京タワー
第5章 湯と水―麻布~赤坂
間奏曲(1)―坂と崖下
第6章 大学・ファッション・墓地―三田、早稲田、青山
第7 職人の浮島―銀座~新橋
第8章 モダニズムから超モダニズムへ―浅草~上野~秋葉原
第9章 東京低地の神話学―下町
第10章 海民がつくった下町-隅田川
第11章 よみがえる南郊-多摩川
間奏曲(2) 森番の天皇―皇居
最終章 ムサシ野オデッセイ
あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 地形に意味あり。神社の場所、聖地の意義。理由が有る、ひとは続いているコトが、地図見ておもいました。確かに人事の近くは、遺跡が多いし。

  • 地形学・地理学に宗教学の要素を取り入れて、時系列の物語をその土地に見出していこうとするアースダイバーの概念を世に問うた宗教学者のアースダイバー東京編(増補改訂)。

  • めっちゃ面白いけど、通して全部はちょっとしんどいかな、興味のある場所とかを、思いついたときにパラパラと

    でも、例えば代々木八幡にはじめていったとき、神社の中に縄文時代の住居の復元があって、あぁ、つまりここってそんな昔から何か特別な場所だったのかな、と感じたこととかに説明が与えられた感じで嬉しい
    代々木八幡が、いきなり急な階段を登っていく斜面なのとか、なるほど、周りのビルとかを全部とりのぞいてヤブとか沼になった景色を想像してみれば、確実に何かの特異点にみえるのは間違いない

    今も、都心を少し離れれば、川沿いとかに神社は多い

  • 東京の地形と暮らしの歴史と人々の心の有り様をリンクさせて縦横無尽に論じた「アースダイバー」(2005年)の増補改訂版です。当時、「縄文の大地を裸足で感じる」みたいな中沢新一っぽい言い回しに痺れて、東京散歩が新鮮になりました。洪積層と沖積層、山の手と下町、水の記憶と性産業、都市を見つめる目線に、出来事ベースの歴史だけではなく、人の潜在意識への妄想が加わりディープになったのを覚えています。考えてみれば、「ブラタモリ」のヒットとか、地形マニアとか、「せんべろ」などの下町巡礼とか、そんなこんなのきっかけが「アースダイバー」だったのかもしれません。今回の増補改訂には下町周りが補強されています。洪積層と沖積層の境界の物語から、沖積層の物語へ。それは、伊勢湾から東海地方を経て東京湾にたどり着いた「海民」の物語です。そこで熱く語られるのが「海民」の末裔としての吉本隆明。山の手の論理に対する異議申し立て力としての再評価を「足の下は海」という「海民」の意識に求めているのは現在のグローバル経済時代への違和感なのかもしれません。また資本主義の及ばないエリアとしての皇居という指摘も、時代的たと思いました。「森番の天皇」が変わるタイミングで、東京という都市の意味を考える材料になりました。

  • 2019 中沢新一

    2005年に出版されたものを増補改訂して再版
    もともとは2004年に「週刊現代」に連載されていた

    アースダイバーの言葉は、造語らしい

    地球を潜る人、
    土地を遡って今の風景を見ていく

    プロローグ前に〜 
    アルゴンキン・インディアンの神話
    彼らは、水底の泥から、新しい世界がつくられた
    としている


    どの国の神話を読んでも、泥の中から、粘土を捏ねてのようにして国は作られている
    ように思う

    そしてどうして泥なのかというと、水ありきなのである

    前の神話でもそうなのだが、地球が水に覆われていて、水底の泥から陸地=住む土地がつくられた

    泥は形になるまで時間がかかるし、安定もしない
    その泥から世界がつくられているのなら、人間の心も同じようなつくりをしているはずである p19

    人間の心のおおもとは、泥みたいなものでできているにちがいない。ぐにゅぐにゅと不定形で、スマートな思考をする部分とぼんやりとした夢を見続けている部分とが、ひとつに混ざり合って、人間の心をつくっている。そういう心が集まって社会をつくっているわけだから、それをあんまりハードな計画や単一な原理にしたがわせると、どあしてもそこには歪みが生まれてくる。
    泥みたいな材料でてきた心を「無意識」と呼ぶことにすると、この「無意識」を歪めたり、抑圧したりするのではないやり方で人の生きる社会もつくられていたほうがいいのではないか。 p19


    これは楽しい理論で、
    東京の地図に洪積層と沖積層で表す
    すると、どこまでが海か川であったかわかる
    東京はかなり海が入り込んでいる地形であったと考えられる
    そこに縄文、弥生時代の集落の跡、貝塚、土器、石器の発見された場所をマッピング
    その上に、古くからの神社、古墳、寺を重ねていく
    これがアースダイバーの地図 p22




    ちょうど読んでいる時、JWAVEの番組で、9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎さんがこの本のことを話したので、妙なシンクロに驚いた。(2022/8/24)

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC_(%E6%9B%B8%E7%B1%8D)

  • 僕は海の近くにすんでいるんだけれど
    近隣にすんでいる人や集まってくる人の魅力にいつも心が踊る
    何でだろう、地域柄だよね、くらいに思っていたんだけど、この本を読めばそれがなぜかわかる
    海の近くにすんでいる人も、山に住んでいる人も、全てに通じる本
    ちょっと長いけど

  • 「土地の記憶」は縄文時代にまで遡る。
    洪積層と沖積層を色分けした地図を見ると、東京の海岸線はフィヨルド海岸だったと深く納得させられる。まずは洪積層の高台が発展し、沖積層の低地だった場所には海民が流れ着き川を上り稲作を始め、大きな勢力となっていく。

    この本を持って東京を散歩散走したら、
    高低差に坂道にワクワクするに違いない。

    大森克己さんの写真は全体にトーンが統一されていて、この本に合っていたと思いました。

  • 「サッ」は死を意味する古代から言葉である。「サカ」、「ミサキ」。。。東京は縄文時代には温暖化により海面が現在よりも高く、東京の低地の多くはまだ海の中にあった。東京の街の成り立ちについて、縄文時代の地図から考えて散策をする。このような形で考察した著書はこれまで見たことがなかった。新宿、渋谷、三田、皇居、東京の街が縄文時代からどのように発達してきたかが良くわかった。

  • 東京の地形学とそれにまつわる歴史。洪積台地か沖積低地かで、ヒトはそこに何を作り、どんな文化を育むかが変わってくる。北ムサシの近辺に生まれ、南ムサシの近くに住んだことがあるだけに、そこに生まれたドラマは何か感慨深い。

  • 増補改訂版は下町部分を追加
    昔から神社の位置には特別な意味があるのでは思っていたが、この本はひとつの回答であろう。
    旅行して、各地の博物館により、神社・寺の位置を確認すると、驚くほど似通った場所にある。
    しかし、東京アースダイビングマップを見ると、東京は至るところに、縄文・弥生・古墳時代の遺跡がある。
    p.353 自然といわず生命といわず、あらゆるところに自分の原理を浸透させていこうとする押しつけがましさが、キリスト教と資本主義と科学主義という、西欧の生んだグローバリズムの三つの武器には共通している。
    もしも天皇制がグローバリズムに対抗するアジールとして、自分の存在をはっきりと意識するとき、この国は変われるかもしれない。
    p.365 墳墓、泉、磐座は、聖所を形成する三点セットとも言える。

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著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。京都大学特任教授、秋田公立美術大学客員教授。人類学者。著書に『増補改訂 アースダイバー』(桑原武夫賞)、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)、『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数。

「2023年 『岡潔の教育論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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