- Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065156698
作品紹介・あらすじ
人気の樹木図鑑作家が初めて書いた、植物と自然界にまつわるエッセイ集。木のことが全然わからなかった大学生の頃に始まり、樹木図鑑を作るようになった経緯、そしてそこから見えた自然について、あますことなく書き下ろした一冊です。森を歩き、葉っぱをスキャンしたことで養われた観察眼、また、動物との出会いを通して身につけたことなど、生き生きと綴られています。
感想・レビュー・書評
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園池公毅の『植物の形には意味がある』は大変面白かったのだが、裸子植物の葉っぱについては書かれておらず、裸子植物の葉っぱがなぜあんな特殊な形なのか書いてある本はないかなあ(一般書で)と思っていたら、これには書いてあるようなので喜んで読んだ。
『植物の形には‥‥』はいかにも学者らしく、仮説を立て、観察・実験を重ねて、こうではないかという真実に近づいて行くところが(読み手にも考えさせるところが)、本当に面白かったのだが、こちらは(植物図鑑を作る)専門家ではあるが、実踏を重ねた現場の人なので、経験と観察においては上かもしれない。
葉っぱの形に関しては、園池本と同様の推理ではあったが、大変わかりやすく、普通の中高生にはこちらがいいのかもと思った。(研究者を目指すなら園池本がいいけど。)この仕事をするまでの経緯も将来を考える若い人の参考になると思う。
(私にとって)肝心の裸子植物の葉の形については、裸子植物だからというより、冷涼な高地に生える針葉樹として書かれており、それはそれで納得したのだが、なぜ被子植物より原始的な裸子植物がそういう植生や形状を選択したのかはよく分からなかった。
私のような素人には葉っぱの形が幼木と若木と成木で全く違う木がある(P64ヤマグワ)、一つの枝についている葉でも場所によって形が違う(P85コウヤミズキ)というだけでもビックリだが(図鑑を作る大変さがちょっとわかった)、ウツギは一つの植物を指すのではなく、枝の中に空洞がある植物の総称とか(「空木」ってこと)、木の洞はクマが樹皮を剥いだあと、時間経過で作られるとか、知らないことばかりだった。
ときどき自然や植物を人間に喩えるところがあり、わかりやすくはあるが、そこはちょっと安易かな、と思った。(松浦健二『シロアリ』を自然科学本の最高峰だと思っているので。)
しかし、植物だけではなく、そこに暮らす人間を含めた動物の問題(熊が人間の暮らす場所まで降りてくる、鹿の食害と異常な増加)も考察しているところも良かった。
文一総合出版の「ハンドブック」シリーズの著者の対象への愛にはいつも驚嘆しているが、こういう方が作っていたのか!と喜び、かつ安心したのだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なぜ葉っぱはこんな形なのか?というタイトルに惹かれ、読み始めること……2か月くらい。内容に興味はあるんだけど、なぜか進まないという苦労を経て読了しました笑
まず始めはタイトルそのまま、葉っぱについて様々な切り口で葉を比べ、その例となる樹を示しています。
はああ、なるほど~!!っていうことがたくさん。お散歩しながら気を眺めるのが楽しくなりました!
半分ほど読むと、今度は葉っぱの構造から広げて、植物と虫の関係について。
更に読み進めると、植物の繁殖の観点からクマ問題・シカ問題・オオカミ問題へと話が発展。
最後は動物と植物の関係という前述された話から、効用についてのお話を経て、人間と植物・自然について。
いやぁ、話が広がる広がる。
けれども興味深いお話だったので、(歩みは鈍かったけれど)最後まで読みたい気持ちでいっぱい。
「エッセイ」とのことなので、もちろん植物について、動物について、環境について、たくさんのことを改めて考えさせられるきっかけにはなったけれど、それ以上に奥様の「人間は宇宙からやってきた生命体とのハイブリッドだよ」発言がゆるくて好きです。それまでのまじめな話をいい感じに息抜きさせてくれるところが笑
個人的に植物のいいように人間も使われている説(本文との誤差・語弊は認めます)、好きだし納得できるなっておもいました。 -
著者にはもっと色んな事して本書いて欲しかった
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著者の林さんは独学の士です。そこに気概が感じられます。自分で調べてみることが大事とし「科学は不完全で常に発展途上だし、僕は「知識は荷物になる」と思うから、固定観念なしで本質を見つめ、感じることにこそ、価値があると思う」と「はじめに」にあり、「既成概念にとらわれることなく、オリジナルの見識と観察力、考える力を身につけることができた」と「あとがき」にもあります。
また「ベテラン=専門家になってしまうと、(略)相手のニーズよりも、自分の立場や内容の正確性を気にし出すようにな」る。確かに日本人は「専門家」に弱いけれど、その説明は得てして難しい傾向にもなって、ド素人にはとっつきにくい傾向になってしまいます。相手の立場にたった、わかりやすい説明を心がけた林さんの本が人気なのも頷けます。
林さんは人間に対してとにかくポジティブです。何とか人と自然がうまく折り合えるように、常に考えていることが、文から伝わってきます。
林さんと言えば葉っぱのスキャン画像ですが、”発明”されたのが「遊び」からだったのがおもしろい。「遊び」は大事だ、とはよく聞きますが、ここにもそれが実践された例がありました。林さんにとってスキャン画像は、奥深い樹木の世界の入り口です。でもこの時はまさか樹木図鑑作家になろうとは夢にも思っていなかったそうで、きっかけは先輩の何気ない一言だったそうです。欲がなかったから、よかったのでしょうか。
林さんの息子さんも登場します。写真のキャップには「興奮してドングリを集める」。「人間は生まれながらに木の実を集める本能をもっている」と林さん。確かに子どもの時は、ドングリ集めしました。リスやネズミが食用に地中などに貯め込む「貯食型散布」と同じだといいます。「人間の子どもも、ネズミと同様に小動物としてブナ科樹木に利用されている可能性がる」。ちなみに息子さんの写真のキャップの続きが「もはや小動物にしか見えない。」笑えます。 -
タイトル通り「葉っぱはなぜこんな形なのか?」という考察も面白かったが、樹木に魅せられた人の、人生、就職や仕事としても面白かった(『バッタを倒しにアフリカへ』を読んで面白かった人はこの本も楽しめると思う)。
葉っぱの「ぎざぎざ」がないツルッとした葉は温かい地域に多く、沖縄と北海道の人だと、どちらが見慣れた葉か違う、など、へー、と関心をもって読めた。
「平均気温=0.306×全縁(つるつるの葉)率+1.141」など、式にできるそう。
そしてなぜそうなのか理由がわかっていないこの現象を筆者は考察していく。
全体的に学術的に正しいことの羅列ではなく、筆者の考察が多く、それがまた楽しい。 -
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閲覧 -
近くに生息している植物への興味関心が高まった。毎日自分の目で見て調べていく。
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図鑑を編集されてる方の豊富なフィールドワークから得られた鋭い観察眼と考え方は大変興味深かったが、「僕はこう考える、科学的にどうなってるかは知らない」というスタンスで本が進むことに違和感を感じた。
著者曰く、科学的知見とは異なることや間違ってることが含まれてるかもしれないが、本書は論文でも知識紹介本でもなく、僕の考えを紹介するエッセイだからその点はご容赦いただきたいとのこと。(あとがきより)
タイトルと内容紹介からすっかり科学的な知見も踏まえた読み物だと思い込んで読んでいたので、あとがきをみて納得したものの物足りなさを拭いきれなかった。惜しい本だった。 -
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この本を読んでしまうと、著者の樹木図鑑(複数ある)を読んでみたくなる事間違いなし。
個人的な希望として、北半球・南半球それぞれの針葉樹・広葉樹の歴史的変遷・勢力についても触れてもらいたいと思っている。