作曲の科学 美しい音楽を生み出す「理論」と「法則」 (ブルーバックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065172827

作品紹介・あらすじ

美しいメロディを奏でる「論理」と「数理」とは? フランス音楽界で絶賛された作曲家・演奏家が語る「作曲のロジックとテクニック」

感想・レビュー・書評

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  • フランソワ・デュボア「作曲の科学」読了。音楽を聴くのは好きだが、楽器を演奏したりましてや作曲なんて全く自分では理解できないと決め込んでいた。本書をたまたま手に取って読み始めたら音階などそうだったんだと思う事が多く、科学的な事に興味を惹かれた。これをきっかけにトライしてみようかな。

  • 「蜜蜂と遠雷」の小説を読んで、もっと音楽の知識があれば更に楽しめるんだろうなという思いを持っていたので、本書を手に取りました。
    作曲は数学だと著者は繰り返し述べていましたが、確かに方程式を解くのに近い印象を持ちました。クイーンのギタリストのブライアン・メイのように数学などの理系学問を修めた人が音楽家になるケースも実際多いそうです。
    様々な知識やテクニックを使って方程式を解くように、様々な音の規則性や楽器ごとの出せる音域・得意な音域などの知識やテクニックを駆使して複雑な曲を作り上げていくプロセスは、非常に興味深かったです。
    著者は音楽専攻でない大学生向けに作曲の講義もしているそうですが、本書はト音記号の説明からしてくれるので、義務教育レベルの音楽知識しかなかった私にとっても読みやすい一冊でした。
    ハ長調やA Minorなどについてもよく理解できてスッキリしました。また、音源つき(CDではなくウェブから聴けるというのが非常にいい)でA Minorがどんな音なのかなども確認しながら、読み進められる点も良かったです。

  • やや堅い本かなと読み始めたが、作曲の楽しさを知ってほしい!という書き手の思いが伝わってきて楽しく読めた。
    音楽の歴史、理論の基礎、著者の音楽に関する体験と続き、最後は実際に作曲してみるという構成。
    本に出てくる作曲例などを音源で公開して聞かせてくれるので、ただ本を読むだけより濃い体験ができたと思う。
    基本のきから教えてもらえるため、音楽理論をひととおり習った人や楽譜を読める人は途中読み飛ばすページが発生すると思う。

  • 臆せずに規則から自由になり、新しい地平を探求市に行く冒険心を胸に抱き続け、ときには誰にも評価されないリスクをも恐れない勇気が必要です。

  • 美しいメロディを奏でる「論理」と「数理」とは? フランス音楽界で絶賛された作曲家・演奏家が語る「作曲のロジックとテクニック」

  • 「カセットテープミュージック」でスージー鈴木さんが紹介していたので、興味を持ちました。著者は慶應義塾大学で音楽(作曲)を教えているフランス人の世界的なマリンバ奏者であり作曲家。

    「音楽は科学だ・数学だ」というコンセプトなので科学新書のブルーバックスなんですが、中身はと言えばやはり「譜面の読み方をある程度分かっている人」向きなのは否めません。加えて、著者自身の「自分語り」の部分も一定量を占めていて、肝心なところへなかなか行きつけないもどかしさがあります。大学教授の著書というだけあって、講義を聴いているような雰囲気でしょうか。それが「単刀直入に、シンプルに『音楽と科学の関係』について理論的に語られる」のを期待して読み始めた、譜面の読めない理系の夫にとっては期待外れだったらしく、冒頭で投げ出してしまいました。
    私は子供のころピアノを習っていたし、今も趣味で続けているので、音楽の基本的なことはわかっているつもりです。ですが、作曲というはやってみたいと思いながらやったことはなく(ピアノ伴奏譜くらいは作ったことありますが)、特にコード、和声についてわかりやすい説明の本を何冊か買って読んではみたものの、どれも帯に短し襷に長しで、一長一短。本書は、これまで読んできた本に足りなかった部分を補ってくれる部分があったので、私にとっては価値がありました。
    基本的には、ピアノ(キーボード)くらいは手元にあった方がよいかと思います。参考楽曲は特設サイトで登場順に聴くことができるので、その点はありがたいといえるでしょう。
    敷居が高いと思いがちな「作曲」という創作活動の、ハードルをグッと下げてくれる良い導きの書、というのが最終的な印象です。五線譜に書くのがめんどくさければ、今はパソコンでDTMソフトを使って作曲ができる時代なので、工夫次第で新しい音楽が作れるかも、と思うと楽しみが広がりますね。

  • 「作曲の科学」というタイトルだが、作曲の話も科学の話もあまり出てこない。
    本書の半分は音律の基礎で、4分の1は楽器についての読み物で、残りの4分の1が作曲についてである。
    作曲を勉強しようと思って読むと期待外れになるが、楽譜の読み方入門として読むのにはちょうど良い本だと思う。

  • 音楽理論のとっても初心者向けの解説になっている。作曲でもしてみたい、という人はもとより、クラシック等のスコアを読みたいという人や、バンドやっててコードの構成とか進行について興味ある、というような人にもすすめられる。手に取りやすいし、サイズも値段も手ごろなので、プレイヤーになってみたい人、音楽を理解してみたい人はぜひ!

  • フランソワ・デュボワ(Francois Du Bois)
    1962年、フランス生まれ。94年にレジオン・ヴィオレット金章音楽部門を史上最年少で受章するなど、世界的なマリンバソリスト、作曲家として活躍中。楽器史上初の完全教本『4本マレットのマリンバ』(全3巻/IMD出版)を刊行するなど、卓越した表現力で、作曲、執筆などを通じてマリンバソリストの地位を向上することに大きく貢献。慶應義塾大学で作曲法を指導しはじめたことをきっかけに在日21年目。本書読者のために新譜『Gunung Kawi』を特別公開(ハイレゾ対応)。


     じつは、単に音符を書き込んだだけでは、その人の頭の中にある音楽を正確に再現して記したことにはなりません。その理由は、個々の音符が示しているものが、その音の 相対的な 高さと長さだけだからです。  相対的な音の高さと長さ──これが、音符が示しているものの本質です。

    すでにお気づきのとおり、音楽は、規則に縛られた特殊な芸術です。  絵画や彫刻などの他の芸術分野に比べ、やたらに制約やルールが多く、その点からも、数学の一種といっていいものです。あるエンジニアの友人から、「数学者は音楽に数学を見出し、音楽家は数学に音楽を見出す」という面白い表現を耳にしたことがありますが、まさにそのとおりでしょう。  実際に、数学的素養をもつ理系人から音楽家になった人は少なくありません。私の先輩世代でいえば、ルーマニア生まれのギリシャ人でフランスで音楽活動をおこなったヤニス・クセナキスや、指揮者としても活躍したピエール・ブレーズら多くの作曲家たちが、建築学や数学を修めています。

    さて、対位法を駆使した代表的な作曲家といえば、J・S・バッハでしょう。先に、平均律の名前の由来としても登場した、あのバッハです。  彼による徹底的な音の研究のおかげで、対位法の可能性は極められたといって過言ではありません。バッハの生涯の仕事の集大成として没後に出版された『フーガの技法』は、彼の偉大さを体現する究極の作品集ですが、この「フーガ」こそ、対位法のなかで最も優れた構造とされていました。  この作品の中から、「二声のインヴェンション第4番」を選んで、通常のスピードよりもはるかにゆっくりと演奏した音源を特設サイトに用意しましたので、ぜひ聴いてみてください。

    美の基準に絶対的なものなどありそうにないのに、和音についてはなぜ、美しい/醜いと呼び分けるのか。ちょっとふしぎな感じがしませんか。

    また、不協和音を駆使することで、独特のかっこよさやミステリアスさを創り出すことに成功している音楽家もいます。その代表格が、ジャズピアノの巨匠、セロニアス・モンクです。  彼の曲には、典型的な不協和音である「ド・ファ#・ラ♭・レ♭」などが登場します。  旋律に対する美醜の意識がさまざまに異なることは、世界各国の民族音楽を聴き比べると、さらに一目(一耳?)瞭然ですね。アフリカ、インド、タイ、インドネシア、日本、沖縄、アラブ諸国、世界各地のどの和音にも独特の存在感があり、それぞれの美しさを発揮しています。

    「さくらさくら」「うさぎ」「うれしいひなまつり」などは、ほとんどの人が歌えるのではないかと思います。これらの曲には、日本ならではの音楽の伝統に基づいた「耳に残りやすい音の構成」がなされているのですが、ご存じでしょうか?  それは、「ヨナ抜き短音階」という音階が用いられていることです。「ヨナ」というのは、明治時代に「ドレミファソラシ」のことを「ヒフミヨイムナ」と、1~7を意味する和名でよんでいたことに由来します。 じつは、現代のポップスにもヨナ抜き短音階を使っている楽曲があり、松任谷由実の「春よ、来い」がそうです。どこか懐かしい郷愁をそそるあのメロディには、日本人が幼少期から慣れ親しんでいる童謡と同じ響きが含まれているわけです。

    作曲家の選択による最良の音(楽器)の組み合わせに、演奏家による精度の高い再現(演奏)が加われば、定量的な美しさを生み出しうる。音楽は科学的な芸術なのです。

    繰り返し述べているとおり、作曲は数学です。  和音Aは和音Bとは相性が悪いけど、和音Cとは共通する響きがあって相性が良い、というような決まりごとがたくさんあることで、音楽の美しさは作られています。

    倍音は、それこそ数学的な性質をもったもので、1636年に、メルセンヌ素数で有名なフランス人数学者、マラン・メルセンヌ(1588~1648)によって発見されました。前述のとおり、音の本質は空気の振動であり、音はそれぞれ高さを決定づける周波数をもっています。倍音は、この基音の周波数の整数倍の値の周波数をもつ音の成分で、倍音が豊かであるということは、その楽器の音色が豊かであることに直結するの
    です。

     作曲家として、あるいは演奏家として、楽器に対して私がつねづね考えていることを最後にご紹介しておきます。  それは、「良い楽器には、そもそも良い音が宿っている」ということです。数多くのマリンバを演奏してきた経験からもそれは確かで、たとえば、福井県に本社を構える世界的なメーカー・こおろぎ社のマリンバは、世界一の音を宿していると感じています。

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著者プロフィール

フランソワ・デュボワ
1962年、フランス生まれ。1994年にレジオン・ヴィオレット金章音楽部門を史上最年少で受章するなど、世界的なマリンバソリスト、作曲家として活躍中。楽器史上初の完全教本『4本マレットのマリンバ』(全3巻/IMD出版)を刊行するなど、卓越した表現力で、作曲、執筆などを通じてマリンバソリストの地位を向上することに大きく貢献。慶應義塾大学で作曲法を指導しはじめたことをきっかけに在日24年目。前著『作曲の科学』では、バリ島でインスパイアされたアルバム『Gunung Kawi』を発表(ハイレゾ対応)した。本書読者のために特典付き最新アルバム『La legende de la foret』を特別公開。『天才音楽家のアート思考』音声配信中。
公式ウェブサイト:fdubois.com

「2022年 『楽器の科学 美しい音色を生み出す「構造」と「しくみ」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

フランソワ・デュボワの作品

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