御社のチャラ男

著者 :
  • 講談社
3.09
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本棚登録 : 1399
感想 : 160
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065178096

作品紹介・あらすじ

チャラ男って本当に
どこにでもいるんです。
一定の確率で必ず。

すべての働くひとに贈る、
新世紀最高“会社員”小説

社内でひそかにチャラ男と呼ばれる三芳部長。
彼のまわりの人びとが彼を語ることで見えてくる、
この世界と私たちの「現実(いま)」。

チャラ男は、なぜ、
――あまねく存在するのか?
――憎らしく、愛おしいのか?

感想・レビュー・書評

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  • タイトルから軽い男、お調子者の話かと思ったら、『チャラ男』こと三芳部長はちょっと違う。
    でもこういう人いるなという、困った男。
    そんな三芳部長を巡る、様々な視点で描く仕事と職場と人生の話。

    社内の人間がのべ13人。これだけの視点があると、仕事にしろ会社にしろ生き方にしろ様々な見方考え方価値観があって面白い。
    会社は社会の縮図、色々な人がいて色々な人間関係があって複雑で難しくて面白い。
    変わった人や病を抱えた人などもいてハラハラするところもあるが、それが社会の縮図であるゆえだろう。
    人の見方もそれぞれ。三芳部長は部下から見ればクズな上司なのだが、三芳部長からの視点はお気楽なようできちんと見ているところもある。
    他人から見られている自分、自分が認識している自分、自分が見ている他人。正解も間違いもない、見方が違えば世界も違う。

    それにしても絲山さんの例え話は興味深い。例えば男の猿山と女の猿山、なるほどと思った。
    舞台となっているジョルジュ食品の、ブラックとまでは言わないがグレーな感じにこういう会社もありそうだな、こうやってのらりくらりと続いていくんだろうなと思っていたら最後にビックリな展開が。

    最後の一言に絲山さんの思いが伝わる。会社も仕事も人間関係も一時のものかも知れないが、人の人生はまだまだ続く。
    チャラ男にもジョルジュ食品の面々にも幸あれ。

    • kuroayameさん
      読んでみようかどうかと思っていたので拝見させて頂き嬉しかったです。ありがとうございました
      読んでみようかどうかと思っていたので拝見させて頂き嬉しかったです。ありがとうございました
      2020/09/24
    • fuku ※たまにレビューします さん
      kuroayameさん
      コメントありがとうございます。
      絲山さんの作品なら「小松とうさちゃん」が好きですが、こちらもなかなか良かったです...
      kuroayameさん
      コメントありがとうございます。
      絲山さんの作品なら「小松とうさちゃん」が好きですが、こちらもなかなか良かったです。
      2020/09/24
  • 新聞の書評を読んで、図書館に予約したのは8ヶ月前。随分と待った。

    タイトルから、垣谷美雨さんのような痛快な小説かと思っていた(書評がどんなだったか、既に記憶がなくなっていた…)が、ちょっと違った。


    東京に近い地方の『ジョルジュ食品』というだいぶブラックな食品会社に勤める人々が、社内の「チャラ男」と陰で呼ばれる三芳道造の人物像について、一章ごとに独白調で語っている。
    そして三芳自身も自分について語っている。

    ただチャラ男について語っているのではなく、語り手自身や会社の他の人物、ひいては社会に対する見方や、鬱屈なども語られている。
    その「人物」や「社会」に対する見方は、人により全く異なるのだが、その描き方に唸るしかない。
    高度成長期、バブル期、氷河期、ゆとり、男、女、などそれぞれの世代、ジェンダーが平成をどう捉え、どう生きたか。
    同じ物を同じ時に見ていても、人格形成期をどの時期に過ごしたかで、その物に対する感想が全く違う。
    絲山さんは、登場人物の口を借りて様々な視点から、読者に問いを投げかけている気がする。

    また、ある章で書かれていることは、まるでこのコロナ禍を予測してたかのようで、鳥肌が立った。
    最後は、世の現実の厳しさを突きつけられるようだが、社員が呪縛から解き放たれるようで希望もある。

    絲山さんは芥川賞をはじめ、様々な文学賞を受賞されているが、一つ一つの文章表現があまりにも的確で、自分がモヤモヤと考えていたことに形を与えてくれたようで、目が覚める思いがする。
    一度通して読んだだけでは、それらの表現が記憶の隙間からダダ漏れしてしまう。
    出来れば、もう一度読み返したいのだが、次の人が待っている…。
    予約が落ち着いた頃にもう一度借りてみよう。
    2020.11.11

  • 最後まで、あたしはこのチャラ男、嫌いだったな…
    こんなのが上司だったら、まじで、訴えたと思う‼️‼️

  • 数日前に辻仁成さんのエッセイ『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』を読んで
    考えてみなきゃと思っていたところ
    御社のチャラ男に
    「すごくシンプルな、たったひとつのことだ。
    人間は喜ぶために生まれてきたんだよ」
    と、簡単に正解を言われてしまいました。

    実は一昨日ホリエモンの『時間革命』を読んで
    「時間は人生そのものだ。
    すべては時間の質を上げるため。
    時間の質を高めれば、人生の質も高くなる。
    ようはハッピーになれるってことだ」
    と言われたばかりなので、御社のチャラ男の言葉を簡単に受け入れてしまいます。

    さて、この本は御社のチャラ男とその周りの人物13人の独白という形になっています。
    でも特にチャラ男が主人公というわけではなく、
    それぞれがその作品の主人公であり
    いろいろな悩みをもっていて、結構深い
    味のある発言をしていて、面白かったです。

    その中のひとつだけ紹介します。
    おそらく雑誌「群像」昨年5月号に掲載されたと思われます。
    葛城洋平(36歳)チャラ男の部下。
    妻子持ち、池田かな子によると超絶イケメン。
    その洋平の妻がいう
    「中国で何かあったら、世界経済が傾くよ」

    また、洋平が言う
    「(前略)それが悲惨なテロなのか内戦なのか天災なのかパンデミックなのかわからないけれど、『平成のときはまだましだった』とみんなが言い合う姿は容易に想像できる」

    私なんて、パンデミックという言葉を知ったのは最近。
    この本はタイトルの軽さに比べて、
    いろいろ考えさせられる重い内容といっていいかも。

  • おもしろい上に共感する皮肉と、圧倒的な語彙力にスカッとしました。
    皮肉や陰口を言いながらも、心のどこかでちょっと愛しちゃってる皆さんも最高。

  • タイトルに惹かれて図書館で借りました。
    チャラ男といっても色んなタイプのチャラ男がいて、人によって「チャラさ」の捉え方も違うのだと思う。
    生憎、知り合いにチャラ男はいないけれど、「チャラ男って別に悪い人ではないんだろうな」という思いを持てた、この本に感謝。

  • 「チャラ男」をキーワードに16のストーリーが語られます。言葉もテンポよく、結構スルドイ内容がでてきて、納得したり苦笑したりと読みました。「チャラ男」の規定が人によって捉え方がいろいろで最後まで曖昧で、部長の功罪がはっきりわかりませんでしたが。

  • 会社という組織にあって、馬が合わない同僚や上司は必ずいる者だと思います。
    この作品では、一つの中小企業のなかで、それぞれの社員から見た社内の風景と、密かに「チャラ男」と呼ばれている部長の人となりを描いています。
    社員一人一人の思想や立場によって、こんなにも人や会社組織の見え方は違うのか、と驚きましたし、自分の職場でもこういった「見解の相違」は多々あるのだろうなと感じました。

    だれもが、「悪人でいよう」と強く決意して生きているわけではないでしょうが、結果としてだれかを傷つけたり、誰かの態度に不満を抱いたりしながら生活している今の世の中。

    大きなヤマ場があるわけでもなく、また描写が精密なので「現実的」すぎる小説ですが、特に会社(組織)で働く大人には、しみじみ考えさせられる部分があるのではないかと思います。
    「同僚や上司から、仕事ができないヤツと思われたくない」「自身の功績を評価して欲しい」など、あまり認めたくはない自分自身の欲望についても、改めて自覚させられる部分もありましたし、登場人物のセリフに笑わせられるとともに息抜きできる部分もありました。
    小説として、エンディングもシッカリまとめられていますから、「学校」という”組織”のなかで日々生きている中高生にとっても読みやすい本かもしれません。

  • チャラ男ってイメージはしやすいけどなかなか定義できない。その考察を、チャラ男に関わる様々な人間の目を通して読者自身ができるのがおもしろい。あとね、読んでて本の紙質がすごくよかったのは気のせいかな。新刊だからっていう理由だけじゃない指触り…んーわたしだけ?

  • タイトルから「チャラい若手社員を描いたちょっとコミカルなお仕事小説」くらいのイメージで読んだらなんとなんと!一筋縄ではいかない、なかなか骨のある作品でした。

    主人公のチャラ男はジョルジュ食品という旧態依然とした会社に中途採用された営業統括部長。そんな彼について、同じ会社の様々な立場の社員が語りつくす18の章からなる小説は、チャラ男の輪郭を浮き彫りにするだけではなく、語り手の人物像をも明らかにしていく。
    やる気もないけどやめる勇気もない臆病な営業社員、イケメンだけど酔うと下ネタ連発のうんこマン、窃盗症で退社することになる熟年社員、うつ病による病休から復職した女性社員、政治家になる野心を持つ若手女性社員、チャラ男と不倫する女性社員・・・などなど18の章はどれも軽妙だけど重みがあって読み応え抜群。

    絲山さんの文章は平易で心地よい。特長的なのは独特の比喩表現で、そのうまさには思わず唸る。
    例えば、
    「難しい時代だ。人々の心に余裕がないから、自由な意見が言いにくい。何かを言えばそうでない人から叱られる。気遣いがない、例外が見えてない、引っ込んでいろ、黙っていろと言われてしまう。私たちが真面目に働く世の中は、(略)ヤクザが仕切っていたころの方が今より良かったと嘆いている歓楽街のような場所になってしまった。」
    という比喩。
    わかったようなわからないような(笑)、でもよく考えるとものすごくわかる。胸にストンと落ちる。こういうところが凄くいい。すごく好き。

    いじめ、うつ、理解されない病気など、豊かさと引き換えに置き去りになった人間や、今の世の中のいや~な雰囲気をズバリと言い当てながらもラストはどこかスッキリと爽快な気分になるこの作品、面白かったの一言では片付けられない、何度も読みたくなる良作でした。

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著者プロフィール

1966年東京都生まれ。「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。「袋小路の男」で川端賞、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「沖で待つ」で芥川賞、『薄情』で谷崎賞を受賞。

「2023年 『ばかもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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