- Amazon.co.jp ・マンガ (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065189450
作品紹介・あらすじ
【新しいNICU<後編>】ペルソナに戻って来た新井恵美。彼女は、自分の経験をもとに、NICUの変えるべきところは変えるため、祖父母・きょうだい面会の実施を主張する。だが、それをよく思わない者もいた。NICUは変わるのか?
感想・レビュー・書評
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テレビドラマ化もされた人気シリーズの第30巻。
モーニング本誌での連載は8年に及び、2020年5月で終了、コミックス最終32巻は10月発売予定となりました。自分は約6年間のお付き合いでした。読者として最後まで伴走できて嬉しく思います。
「ペルソナ総合医療センター」の産科を中心に、妊娠出産、赤ちゃんとお母さんを巡る悲喜劇と、主人公サクラ先生を中心とした群像劇が、綿密な取材に基づく圧倒的なリアリティと現場感を伴って語られます。
これまでも多くのキャラクターが成長の末、自らの未来を拓くべくペルソナを去って行き、第22巻では四宮先生までが実家の病院に帰ってしまいました。
その後、医師・助産師以外で周産期医療にかかわっている人たちの紹介を挟み、ようやく旅立ったキャラが一回り大きくなって戻ってくる流れが始まりました。
最初に戻ってくるのは、救えない命があることに絶望してNICUを去った新井先生。
ということで、この巻には、前巻の続き、「新しいNICU<後編>」が掲載されています。
以下、このエピソードに一言。
かつてバーンアウト(燃え尽き)してペルソナのNICUを去った鉄の女医、新井先生でしたが、再就職先で小児科医療に携わり、障害のある我が子を手にかけてしまったお母さんと関わったことをきっかけに、NICUを変えるためにペルソナの新生児科に戻ることを決意します。
この巻1冊を使って語られているのは、「新生児科医の仕事はNICUで命を救うことだ。救った後のコトは社会の誰かが考えればいいんだよ」という意識を変えたいってこと。
「救った後のコト」はだいたいお母さん任せになり、お母さんは「子供を健康に産んであげられなかったのは、こうなったのは全部私のせいですから」とそれを一人で背負いこんでしまう…。その結果が前巻のコノハちゃんであり、NICUからの退院の見通しを話した工藤先生に対する「それのどこがいいことなんです?先生はメイが自分の子供じゃないからそれをいいことなんてさらっと言えるんですよ」というアヤカさんの言葉であるわけです。
だからこそ「家庭をNICUにしてはいけない」「NICUからの退院は家族にとってゴールではなくスタート」なんかの言葉が出てきます。
長い時間をかけて高度な専門性を身に付けた新生児科の先生方は、その財産を活かしてまずは赤ちゃんを「救う」ことに全力を尽くすべきなのは間違いありません。だから、「新生児科医の仕事はNICUで命を救うことだ。」というのはそのとおりです。それに、それが「救った後のコト」を無責任に放り出すこととイコールなわけはありません。ソーシャルワーカーなど、救った後のことを専門にしている人も医師とは別にいるわけですし。
ですが、新井先生はそれをよしとせず、NICUも変わるべきだと主張します。この新井先生の意思に、取材元の先生の強い気持ちを感じるのです。その使命感と職業倫理に頭が下がるばかりですし、そんな素晴らしい先生方の存在を描くこの漫画に出会えて本当に良かったと思うのです。
ちょっと感動した新井先生のセリフ、長くなるけど引用します。ここしばらく、コロナのせいでお家がNICUでないけれど、学校になったり職場になったりしちゃうことが多い毎日でした。お家はお家、侵さざるべき聖域であることを改めて肝に銘じておかないと…。
以下引用。
「家に帰ればNICUの先生や看護師さんはいませんし…」「私たちがその代わりをきっちりしなくちゃいけませんよね?」
「それなら…メイちゃんのお母さんお父さん…おじいちゃんおばあちゃんの代わりは誰がするんです?」
「…みなさんがNICUのスタッフのようになってしまったらメイちゃんはおうちでひとりぼっちになってしまいますよ」
「NICUで働くスタッフは3交代…たくさんの人数でメイちゃんや他の赤ちゃんのお世話をしています」
「痰の吸引もすぐに…何回でも対応しますし母乳の経管栄養も3〜4時間おきにきっちり行います」
「ただそれを家庭できっちりとするのは間違っています」
「お家に帰ればみなさんの生活もありますから」
「きっちりなんてしなくてもいいんですよ」
「どんな家庭にもその家族のペースややり方があると思うんです」
「本田さんはみなさんのペースの中で メイちゃんと生活してあげればいいんです」
「そしてメイちゃんのかわいく成長していく日々を…家族で見守り続けてあげてください」
新井先生の気持ちはとうとう反対派筆頭の工藤先生の気持ちを動かしました。悪者にされがちな工藤先生ですが、本当は自分の子供がNICUに入院していたお父さんであり、それをきっかけに医学部に入りなおした熱血漢です。院長はサクラ先生の口車に載せられて、ペルソナでも祖父母面会・きょうだい面会が始まるようです。新井先生が望んだ方向にNICUが大きな一歩を踏み出した瞬間です。
新井先生、これなら二度とバーンアウトしたりしないでしょう。頼もしくなりました。
そして、どうやら次に戻ってくるのは下屋先生みたいです。楽しみ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
毎度泣いてしまう。
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【推薦者】
体育学部 健康学科教員 三瓶 舞紀子
【学生へのメッセージ】
COVID-19流行下では、「10代の妊娠」「望まない妊娠」「貧困」の問題がよりクローズアップされました。産婦人科医&謎のピアニストでもある主人公が、様々な妊婦のお産に向き合います。この漫画に登場する様々な生命から、子どもたちを育てる社会の責任とは何か、全ての学生と特に教員を目指す学生にお薦めします。
▼配架・貸出状況
https://opac.nittai.ac.jp/carinopaclink.htm?OAL=SB00539355 -
バーンアウト後の復職を絡めて、久しぶりにがっつりNICU中心の物語。相変わらず、味のつけ方が見事過ぎる。抜群の安定感。
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面白かったー。コウノドリ、ドラマの傑作選楽しみ。カバーの返しの温泉♨️ぽい2人、めっちゃ好き。裏表紙も好き。おまけ漫画よかった。
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ICU.