全体性と無限 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065193440

作品紹介・あらすじ

本書は、エマニュエル・レヴィナス(1906-95年)の主著にして、20世紀を代表する哲学書(1961年)の決定版となる新訳である。
リトアニアのユダヤ人として生まれたレヴィナスは、ストラスブール大学で哲学を学び、生涯の友となるモーリス・ブランショと知り合うとともに、決定的な出会いを経験した。それがエドムント・フッサールの現象学との、そして1927年に刊行されたマルティン・ハイデガーの『存在と時間』との出会いである。翌年からフライブルクでこの二人の講義に出席し、1930年にはフランスに戻って現象学を主題とする博士論文を出版したレヴィナスはフランスに帰化した。
第二次世界大戦では通訳兵として召集されたが、ドイツ軍の捕虜として収容所で終戦を迎える。戦後は東方ユダヤ師範学校の校長として教育に携わる傍ら、講演や論文執筆などに注力した。そうして書き上げられたのが国家博士号請求論文となる本書であり、これは後年の『存在するとは別の仕方で あるいは存在の彼方へ』(1974年)と並ぶ主著として読み継がれている。
本書は、西洋を支配してきた「全体性」を標的に据えている。全体性は、個体を「自分に命令を下してくる諸力の担い手」に還元し、個体から主体性を奪う。そうして主体性を失った個体は他者に暴力をふるうだろう。レヴィナスは、このような全体性に対抗するものとして「無限」を掲げる。無限とは、本書の副題「外部性についての試論」にも示されているように「外部性」を指す。外部性とは「他者」であり、他者は「私のうちなる他者の観念をはみ出しながら現前する」とき、私の前に「顔」として現れる。その顔に現れる無限に応答すること――それこそが重要なことであり、存在論は倫理学に取って代わられねばならない。
全体性ゆえの暴力にさらされたレヴィナスの父や兄弟は、ナチスの手で殺害された。そうした暴力は、その後も、そして今も、世界の至る所でふるわれ続けている。レヴィナスの思想を多くの人が希求する時代は、よい時代とは言えないかもしれない。だが、そのような時代にピリオドを打つためにも、本書は正確さと明快さをそなえた日本語で訳される必要がある。気鋭の研究者が全身全霊を捧げて完成させたこの新訳によってこそ、本書は次の世代に受け継がれていくだろう。

[本書の内容]
第I部 〈同〉と〈他〉
第II部 内奥性と家政
第III部 顔と外部性
第IV部 顔の彼方へ

訳者解説

感想・レビュー・書評

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  • 難しくて途中で止まっている。超越というのは哲学的な超越性のこと?

    https://kotobank.jp/word/%E8%B6%85%E8%B6%8A%E8%AB%96%E7%9A%84-568117
    超越論的
    ちょうえつろんてき
    transzendental ドイツ語

    本来「超越」に由来する語で、中世のスコラ哲学では、「一」とか「真」とか「善」は、個々の述語やカテゴリーを超えた超越論的概念transzendentaliaとされ、ドゥンス・スコトゥスはそのなかでも「存在」がもっとも普遍的で根源的な超越論的概念であるとした。

     ところで、「超越論的」という語にそれまでとまったく異なった特殊な意義を与えたのがカントであって、カントは、経験的事物の認識ではなくて、そうした事物の認識を可能にする条件についての認識を超越論的とよび、経験の対象とはならない理念についての思弁的な超越的(もしくは超絶的transzendent)認識から区別した。つまり「超越論的」とは、経験を越えて、経験に先だって経験の成立条件を問う際に成立する認識という意味であり、その意味をくんで「先験的」と訳されることもある。

  • 完読いたしました。いやぁ、哲学書の中でも難易度については最高峰の一つかと思います。最後の「結論」の章が圧巻で、ここだけ読んでもおそらく良く分からないのですが、通して読むと結構、それぞれの用語や文章の意味がすっと入ってきます。「存在とは外部性である」。レヴィナスの独自の存在論です。

  • 読めたことの喜び…

  • 【書誌情報】
    『全体性と無限』
    原題:Totalité et infini
    著者:Emmanuel Lévinas (1906-1995)
    訳者:藤岡 俊博
    発売日:2020年04月10日
    定価:本体1,880円(税別)
    ISBN:978-4-06-519344-0
    通巻番号:2566
    判型:A6
    頁数:592
    シリーズ:講談社学術文庫

    [著者紹介]
    著:エマニュエル・レヴィナス
    1906-95年。フランスのユダヤ系哲学者。フッサール、ハイデガーの現象学に影響を受け、独自の哲学を展開した。東方イスラエル師範学校長、パリ第八大学、パリ第四大学教授などを歴任。主な著書として,本書のほか、『存在の彼方に』(1974年。講談社学術文庫)など。

    訳:藤岡俊博(フジオカ トシヒロ)
    1979年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。滋賀大学准教授を経て、東京大学准教授。主な著書に、『レヴィナスと「場所」の倫理』(東京大学南原繁記念出版賞)。主な訳書に、『レヴィナス著作集』第1~3巻(共訳)ほか。

    [内容紹介]
     本書は、エマニュエル・レヴィナスの主著にして、20世紀を代表する哲学書(1961年)の決定版となる新訳である。
     リトアニアのユダヤ人として生まれたレヴィナスは、ストラスブール大学で哲学を学び、生涯の友となるモーリス・ブランショと知り合うとともに、決定的な出会いを経験した。それがエドムント・フッサールの現象学との、そして1927年に刊行されたマルティン・ハイデガーの『存在と時間』との出会いである。翌年からフライブルクでこの二人の講義に出席し、1930年にはフランスに戻って現象学を主題とする博士論文を出版したレヴィナスはフランスに帰化した。
     第二次世界大戦では通訳兵として召集されたが、ドイツ軍の捕虜として収容所で終戦を迎える。戦後は東方ユダヤ師範学校の校長として教育に携わる傍ら、講演や論文執筆などに注力した。そうして書き上げられたのが国家博士号請求論文となる本書であり、これは後年の『存在するとは別の仕方で あるいは存在の彼方へ』(1974年)と並ぶ主著として読み継がれている。
     本書は、西洋を支配してきた「全体性」を標的に据えている。全体性は、個体を「自分に命令を下してくる諸力の担い手」に還元し、個体から主体性を奪う。そうして主体性を失った個体は他者に暴力をふるうだろう。レヴィナスは、このような全体性に対抗するものとして「無限」を掲げる。無限とは、本書の副題「外部性についての試論」にも示されているように「外部性」を指す。外部性とは「他者」であり、他者は「私のうちなる他者の観念をはみ出しながら現前する」とき、私の前に「顔」として現れる。その顔に現れる無限に応答すること――それこそが重要なことであり、存在論は倫理学に取って代わられねばならない。
     全体性ゆえの暴力にさらされたレヴィナスの父や兄弟は、ナチスの手で殺害された。そうした暴力は、その後も、そして今も、世界の至る所でふるわれ続けている。レヴィナスの思想を多くの人が希求する時代は、よい時代とは言えないかもしれない。だが、そのような時代にピリオドを打つためにも、本書は正確さと明快さをそなえた日本語で訳される必要がある。気鋭の研究者が全身全霊を捧げて完成させたこの新訳によってこそ、本書は次の世代に受け継がれていくだろう。
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000337922


    【簡易目次】
    序 

    第I部 〈同〉と〈他〉
    A 形而上学と超越
    B 分離と言説
    C 真理と正義
    D 分離と絶対者 

    第II部 内奥性と家政 
    A 生としての分離
    B 享受と表象
    C 自我と依存
    D 住 居
    E 現象の世界と表出 

    第III部 顔と外部性 
    A 顔と感性
    B 顔と倫理
    C 倫理的関係と時間 

    第IV部 顔の彼方へ 
    A 愛の曖昧さ
    B エロスの現象学
    C 繁殖性
    D エロスにおける主体性
    E 超越と繁殖性
    F 子であることと兄弟関係
    G 時間の無限 

    結論 

    訳者解説
    異同表

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著者プロフィール

1906-95年。フランスのユダヤ系哲学者。フッサール、ハイデガーの現象学に影響を受け、独自の哲学を展開した。東方イスラエル師範学校長、パリ第八大学、パリ第四大学教授などを歴任。主な著書として,本書(1961年)のほか、『存在の彼方に』(1974年。講談社学術文庫)など。

「2020年 『全体性と無限』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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