- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065201473
作品紹介・あらすじ
ラテン文字圏、ギリシア・キリル文字圏、アラビア文字圏、梵字圏、漢字圏--
五つの文字圏を比べてみると、世界の見方が変わる!
・科挙はなぜ中国社会内部の凝集力を高めたのか?
・日本は長子相続、イスラム世界では?
・箸、フォークとナイフ、右手指食、なぜ違う?
・洋装はいかに非西欧世界に受容されたか?
・なぜ音楽は国境、民族を越えるようになったのか?
・古代ローマと現代アメリカの同化力の限界とは?
・「異才」を育てるための条件とは?
・モンゴル帝国などの開放空間型集団が瓦解した理由
・文明成熟のためのキーワード「フィードバック」とは?
楽しみながら世界史のツボがわかる!
感想・レビュー・書評
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テーマと帯に惹かれた一冊。
プロローグから二章までの筆者の論理展開に知性を感じた。最終章の読み応えも十分。
しかし、「文字世界で読む文明論」というタイトルに少し負けている感も否めなかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現在の世界を五つの文字世界に分ける。
そして、それをそれぞれの圏内を文明と文化の二つの位相に分ける。
これが本書の基本的な分析の枠組みだ。
知を体系化する方法としての宗教と学問が、それぞれの文字圏でどう立ち現れてくるか。
これが文化のハードの側面とすれば、ソフトの側面として組織を取り上げ、家・企業・国家の権力の継承の機構を具体例に分析する。
衣食住の生活文化の分析がそのあとに続く。
最後のパートは近現代のグローバリゼーションと文化交流を整理し、「文明」が生き延びるにはどうすべきかを提言する。
取り上げられているそれぞれの文化・文明の具体例については、もうちょっと詳しく読みたいと思う個所もある。
それぞれの分野で詳しい人からすれば正確さに欠けるところもあるのかもしれない。
しかし、この本は、最近の新書としてとても貴重な一冊ではないかと思う。
少なくとも、最初に分析の枠組みが提示され、その見取り図の中できちんと論が展開される、構造が非常にしっかり見える本だ。
グローバル・スタンダードとなった西欧文化の伝播例として、近代小説が取り上げられたところが面白かった。
ロシア以外で比較的早く受容された文化圏として、トルコがあるというのだ。
フランス語に堪能なエリート層がいたためらしい。
そこは、オスマン朝研究の第一人者だった著者ならではのところかもしれない。
時期的にはーいや、日本の小説受容の時期とそれほど違わないのでは?とも思うが、長編の物語の伝統がない国で、日本より早くフランスで試みられている手法が取り入れられていたという指摘が新鮮だった。
結論はー穏当というか、何というべきか。
筆者は文明の未来を割と楽観的にとらえようとしているが、最後の方で指摘される多文化共生の多大なコストのわりにイノベーションに結びつかないことを見ると、むしろちょっと悲観的になってしまう。 -
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/637471 -
【感想】
やや散漫ながら気宇壮大な主題の随筆。新書250頁程度の文字数ではまったく足りない。
ところで本書の主張は何なのだろうか。かろうじで「民主制のフィードバック機能」が鍵概念のような気はしている。「文字・言語の系譜」も重要そうだ。しかし、展開される世界史トピックの奔流に霞んでしまったのか、何度読んでも結局私にはわからなかった。著者はこの本で何を伝えたかったのだろう。
なおこの本で事実・史実とみなされている事柄は確かに、私の知識からみても(=私が知っていたり調べた範囲で、史学や言語学の知識と照らしあわせても)確からしいとされている事柄なので、(不遜な言い方だが)事実認定のレベルではこの本は信用していいと思う。
ただし、事実を羅列することに意味があるとは言えない。高校世界史の副読本を意図しているわけではないはずだから。
蘊蓄の洪水によって著者の博識さは強く伝わる。そこはたしか。わたし的には参考文献の情報を多少は示してほしかった。
【書誌情報】
著者:鈴木 董(スズキ タダシ)
発売日 2020年07月15日
価格 1,034円(本体940円)
ISBN 978-4-06-520147-3
通巻番号 2578
判型 新書
ページ数 256ページ
シリーズ 講談社現代新書
〈https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000343062〉
【目次】
プロローグ 文明が成熟するために
風雲急な二一世紀の始まり/「民主主義」と「民主政」/フィードバックという機能/格差と差別と――資本主義の暴走/文明成熟のためのキーワード/グローバリゼーションと文化/五つの文化圏
第一章 文明と文化とは
文明とか文化というけれども/文明と文化は同じか/人類の営みとしての「文明」/「行け行けドンドン」からフィードバックヘ/心の「文明化」――暴力の抑制/人間活動の「くせ」/文化も変化する/文化については優劣を論じえない
第二章 ことばと文字
画期としての言語の誕生/民族統合の基軸としての言語/日本語と沖縄語/可視化・定着化しうる媒体/メソポタミア楔形文字の誕生/エジプトで生まれたヒエログリフ/フェニキア文字から東西へ/インダス文字からブラーフミー文字へ/漢字と漢字世界/新しい文字世界としてのアラビア文字世界/文字と文字世界
第三章 知の体系の分化 宗教と科学と
言語・文字と知の体系/個別的経験知と体系的な知と/自然的世界と超自然的世界の渾然一体/星占いの伝播/ギリシア、アラビア、近代科学/内面的信仰としての宗教へ/科学による反証/個別科学と体系知としての哲学と
第四章 文明としての組織文化としての組織
メガ・マシーンとしての支配組織/家族という組織――「血統の貴さ」か「家門の誉れ」か/長子相続か均分相続か/東洋的専制/空間固定型の帝国エジプトと中国/空間拡張型の楔形文字世界/空間拡張型の典型ローマ帝国/ギリシア・ローマの支配組織とリクルートメント/科挙が高めた凝集力/「近代官僚制」と非西欧諸社会/ヒエラルキー型組織としてのカトリック教会――さまざまな組織/家から企業へ/ソフトの文明としての組織
第五章 衣食住の比較文化 125
住まい のかたち――遊牧民・狩猟民・定住民/都市を囲む城壁/宗教の刻印/後宮とハレム/独自の「衣」文化/旗袍は中国服ではない/ターバンとヒジャーブと/ギリシア・ローマ風から西欧風へ/「西洋化」としての「洋装」/人類の第一次グローバリゼーションのなかの「食文化」/箸食、右手指食、フォーク・ナイフ食――「食」の文化としての「食の作法」/西欧に入ったフォークとナイフ/文化としての食の禁忌/「四本足のものは机と椅子以外何でも食べる」漢字圏とタブー/酒と宗教/醤油、魚醤、唐辛子――漢字世界の調味料/米食と麦食/西洋料理を変えた新大陸の食材/「舌」のグローバリゼーション/根強い「食」の伝統
第六章 グローバリゼーションと文化変容 165
「大航海」時代という画期/非西欧諸国の「西洋化」改革/グローバル・システムのサブ・システムヘ/法の近代化――日本とオスマン帝国の「民法典論争」/斉一化と多様化――文化のグローバリゼーション/ロシアとイスラム世界の「近代文学」/漢詩と和歌の伝統――漢字圏のなかの近代文学/絵画、彫刻、書道/イスラム独自の音の世界/メフテル軍楽隊と「トルコ行進曲」/軍楽の西洋化/クラシックの受容/「近代」音楽と「在来」音楽の相克と混淆/解消される障壁/近代国際体系への参入/グローバリゼーション下での文化摩擦の発生
第七章 文明と文化の興亡文明の生き残る道 199
個別文明の興亡/長命した中国とエジプト・ヒエログリフ世界/內的凝集力と同化力の大切さ/四つの帝国の運命/ダルマとジャーティという共通基盤――インド/開放空間と機動力・瞬発力/「モンゴル の大征服」と「モンゴル帝国」の瓦解/「アレクサンダー東征」に欠けていた核/「アラブの大征服」の場合/多言語・多民族世界としてのイスラム世界/「インペリウム・ロマヌム」/ローマの文化的同化力/法的概念としてのローマ市民/拡張する西欧世界/拡大する東欧正教世界/宗教から民族へ/個別文明の繁栄と多様性――アメリカの場合/「人種のサラダ・ボウル」/異文化共存の困難さ/文明発展のためのイノヴェーション能力/内発的・創造的イノヴェーションへ
エピローグ 現代文明と日本 243
漢字文化圏の周辺だった過去/日本文化の発信を/「異才」を拾い上げる人材育成/フィードバックとイノヴェーション -
四大文字世界から五大文字文明に発展。
「行け行けどんどん」の人類文明はまだ1.0、「フィードバック」することで2.0に発展可能。
民主主義を機能させること、イノベーターを育てることが必要。
ページの多くは文明論というよりは文明興亡史、世界史知らないと厳しい。比較文化論としてもおもしろく読めた。 -
-2020/09/11
新聞記事に引用されていたのでネット購入した。内容は、比較人類史の視点からの文明論。だが、「新書」は素養がなければ読み進められない。辛かった。▶︎惹かれたのは数カ所だった。①グリム童話が恐怖を題材にしているわけ。②日本に明治以前に肉食文化が広まらなかったわけ。③メキシコ原種のチワワが小さいわけ。 -
東2法経図・6F開架:B1/2/2578/K