時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065202104

作品紹介・あらすじ

物質には反物質があり、力には作用と反作用があるように、この世のすべてのものは、ほんのわずかな破れはあったとしても、対称性を持っています。ところが時間の進み方だけは対称ではなく、宇宙ができたときから現在まで、一方向だけに進んでいると考えられています。このことを「気持ち悪い」と感じている物理学者は少なからずいるようです。筆者もその一人です。
本当に時間は一方向だけなのか。宇宙は逆戻りしないのか。じつは時間も宇宙も、反復し、逆戻りしているのではないのか。一見、荒唐無稽なこの疑問を大真面目に検討してみることで、宇宙や時間についての新しい見方を呈示しようという狙いです。
量子重力理論研究の期待の新鋭にして、日本人としては最後の「ホーキングの弟子」ともいわれる著者が、量子論的な視点を突破口にして、「反復する時間」の可能性をわかりやすい言葉で探っていきます。

感想・レビュー・書評

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  • 時間が未来への一方通行という認識が本当に正しいのか、当たり前と考えられていることに一石を投じる一冊。
    とんでも科学や似非科学が蔓延る中、正真正銘の物理学における時間の概念を検証していきます。
    読了してまず感じたのは理系にとっても小難しいという印象で、多少の基礎知識が必要であると思います。
    とはいえ、量子世界では既に時間が過去へ戻る現象を観測したことや、時間が未来へ流れる膨張と時間が過去へ流れる収縮を繰り返すサイクリック宇宙といった劇的なシナリオが紹介されたり…、文理問わず楽しめる内容です。
    サイクリック宇宙が正しかった場合、この宇宙は50回目位の宇宙で私は50人目位の私であるようなので、確定した未来へのレールを歩んでいることになるのでしょうか。
    人生観が変わってしまうほど、色々と考えさせられます…。
    過去へのタイムトラベルが可能であれば夢はありますが、同時にそれが閉鎖した時間を何度もループすることを意味するならば虚しくも感じますね。
    遠い未来の人類が時間と空間の秘密を解き明かして限界を突破していることを、食事をしてエントロピーを減少させ排泄をしてエントロピーを増大させながら期待します。

  • 映画『TENET』を見て興味を持ち読了。時間に関する近代以降の科学的歴史から相対性理論、量子力学までのトピックの概観をざっくりと学べた。極めてミクロな世界と極めてマクロな世界の中では時間は逆行しうるというのは体感的にりかいしがたいが、とても興味深いと感じた。文章もロヴェッリを支持しているように、フランクな感じで読み易い。

  • 時間を切り口に、量子物理学を中心とした最新の宇宙論を紹介する本。
    超弦理論、ループ量子重力理論、ブレーンとサイクリック宇宙…理解できたとはとても言えないけど、読んでてわくわくする!
    文章もやわらかくわかりやすいので、「よくわからないけど何かすごくて面白いな!」っていうのが伝わってくる。もっと知りたく読みたくなる。入門書としてとてもいいのではないかと思う。
    著者と同じ学舎だったホーキング博士のエピソードにもほっこり。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1355799

  • 引っ張っておいて終わり間際の妄想パートな萎え

  • とってもわかりやすい

  • 主に宇宙の話。とにかく内容が盛りだくさん。宇宙の捉え方には様々な説があって、それらの最新事情が分かる、そんな本。

  • 時間に関する最近の研究を短くまとめてあり、勉強になった。
    数学的には理論化される多次元・虚数の世界の一端が実世界の観測によって見えてきている。この世とは数学世界の一部分にすぎないのかもしれない。
    ・生物の遺伝子進化プログラムを量子コンピュータで計算したら、エントロピー増大の法則とは反対に、ある瞬間から一定の秩序が生まれた(Sientific Reports)。乱雑さの扉を開閉するマクスウェルの悪魔が生まれた?ついに時間が反転する現象が見つかったのか?
    ・量子重力理論は超弦理論とは別にループ量子重力理論がある。後者は時間にも最小単位があり10マイナス44乗である。時間と空間には区別が無く、誰かが観測したときに決まる。
    ・ホーキングは宇宙の始まりに虚時間を導入することで 時間の始まり=特異点の発生を回避した。虚時間を導入することで exp(-i) で表される振動が数式に入り、無境界宇宙が理論化できた。

  • 宇宙論の話


    ■理論的な可能性として

    ●第11章 誰が宇宙を見たのか
    ・時間の逆戻りには「2つのシナリオ」が考えられる。
     ・一つは、ミクロの量子世界で起こる
     ・もう一つは、マクロの巨視的スケールで起こる

    ◯ミクロ
    ・量子コンピュータの実験でエントロピーの減少が観測された。
    ・素粒子を個々に見れば時間が逆戻りしているものもあるが、多くの素粒子が集まってマクロの系になると、個々の逆戻りの効果は統計的に無視される。結果として時間は一方向にしか流れない。
    ・ロヴェッリ「時間は存在しない」という考え。今後、量子重力理論の研究が進むことで、「時間」の概念がミクロの世界から見直される可能性。

    ◯マクロ
    ・時間の逆戻りは、宇宙の収縮によって起こる可能性がある。
    ・サイクリック宇宙での、宇宙の収縮(第8章)
     私たちが未知のものだと思っている「未来」を、私たちはすでに経験していて、現在からその方向へ向かうのは、経験済みの世界に戻っていることにほかならない。
    ・私たちがそう感じられないのは、私たちの脳は「過去」をベースとしてしかものごとを認識できないため。

    ◯認識論 認識としての時間
    ・ループ量子重力理論の提唱者 ロヴェッリの説

    「人間の認識は、脳において行われ、それはつねに記憶と連動している。そして記憶とは、中枢神経系におけるシナプスの結合と消滅という物理的なプロセスによって、過去に経験した事象を脳が勝手に、一連の連続的な流れで解釈しようとする錯覚から生まれているのではないか」

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著者プロフィール

高水 裕一(たかみず・ゆういち):1980年東京生まれ。早稲田大学理工学部物理学科卒業。東京大学大学院、京都大学大学院を経て、英国ケンブリッジ大学理論宇宙センターに所属し、スティーブン・ホーキング博士に師事。現在、筑波大学計算科学研究センター研究員を務める。専門は宇宙論。主な著書に『時間は逆戻りするのか』『宇宙人と出会う前に読む本』(講談社ブルーバックス)『ウルトラマンと学ぶ 宇宙と生命体』(講談社)、『物理学者、SF映画にハマる』(光文社新書)、『宇宙の秘密を解き明かす24のスゴい数式』(幻冬舎新書)、『面白くて眠れなくなる宇宙』(PHP研究所)などがある。

「2023年 『宇宙最強物質決定戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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