- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065202807
作品紹介・あらすじ
日本一成功したサラリーマンは、都営団地に生まれた庶民の子だった。
1996年1月、ソフトバンク社長室の一角で『Yahoo! JAPAN』は産声を上げた。専属スタッフわずか3名のその会社を、「年商1兆円」の巨大IT企業に育て上げた男の名は、井上雅博。
世田谷の都営団地に生まれ、孫正義に見出された男は、ヤフーを爆発的に成長させ、サラリーマンでありながら1000億円と言われる資産を手に入れた。ひっそりと実業界を去った井上は、桁外れの趣味の世界に溺れ、17年4月にカリフォルニアのクラシックカーレースで非業の死を遂げる。
ヤフー・ジャパン、そして日本のインターネット産業の裏面史を、大宅賞作家が描く。
序章 三〇億円の隠れ家
第一章 突然の死
第二章 都営団地が生んだ天才
第三章 タイムマシーン経営の原点
第四章 ソフトバンクの遊び人
第五章 ならずものをかき集めて
第六章 孫正義の操縦術
第七章 知られざる趣味の世界
第八章 思い知った限界
第九章 趣味人として
終章 天才の死
感想・レビュー・書評
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ヤフー・ジャパンの事実上の創業者であり、孫正義氏の片腕・黒子として日本のインターネット産業を拓いた、知る人ぞ知るネットの世界のカリスマ経営者、井上雅博氏。ヤフー・ジャパン株で1000億とも言われる巨万の富を築き、「日本で最も成功したサラリーマン」とも称された井上氏の評伝。
ただ、カリスマ経営者、天才経営者、と称されれる井上氏の凄さがどこにあったのかは、正直よく分からなかった。マンモス団地の庶民育ちで、特に才能に恵まれたわけでもなく、学業もパットしなかった青年が、バイトの縁でパソコンベンチャー(ソード)に就職。その後、インターネット・OS技術に明るい人材を探していたソフトバンク孫氏に見いだされると、インターネット・バブル前夜というタイミングと、トコトンこだわるオタク的センスが幸いして、あれよあれよという間に頂点に登り詰めてしまった、という印象だ。とてつもない結果を残したという意味での井上氏の凄さは揺るがないものの、その凄さを一言でいうなら、とても運が良かった、ということなのではないかと。
元部下の、「孫さんはまさにアントレプレナーという意味での天才で、事業における情熱がすごい。そしてその天才を乗りこなせる井上さんの経営者としてのスキルは、それに匹敵するほど非常に高い」、その経営判断がずっと素晴らしかった、などのコメントが紹介されているが…。
何しろ、親会社のソフトバンク自体が「タイムマシーン経営」、すなわち「米国の流行がのちに日本で流行る」という発想から「米国のビジネスをいち早く取り入れ、日本で再現」するビジネスで成功してきた、いわば輸入商社。ヤフー・ジャパンも、「ソフトバンク社長の孫が、米国で始まったインターネットの会社をそっくり日本で再現しようとした会社に過ぎない」。要するに、機を見るに敏ではあってもオリジナリティーは皆無なのだ。また、ヤフー・ジャパンはそのトップページに新聞社や通信社の主要記事を並べ、ポータル(玄関)サイトとして大成功しているのだが、これも言ってみれば新聞社等のコンテンツという「他人の褌で相撲を取ってきたに過ぎない」。
とは言うものの、井上氏の凄さとしてオタク精神を挙げることはできるのかもしれない。「井上はヤフー最大のユーザーを自任していた」がゆえに、トコトンこだわり抜いて「日本で最も使い勝手のいいポータルサイトづくりを実現できた」のだという。
なお、55歳で社長を退いてからの極端な成金趣味はさすがにいただけない。別荘にしろワインにしろクラシックカーにしろ、狂ったように金を使いまくる成金オタクな姿は、常軌を逸していて異様というしかない。箱根に建てたこだわりの別荘は総工費30億円、そのガレージには12台のヴィンテージカー(1台当たりウン億円という)、広大なワインセラーには世界中から取り寄せた高級ワインがなんと1万5千本あった。京都やハワイ、フランスにも超高級な別宅を持ち、プライベートジェットも所有したという。もはや開いた口が塞がらない。庶民育ちゆえの反動か、何でもトコトンこだわらずには要られないオタク精神のなせる技なのか…。有り余る資産をもっと有意義に使うことはできなかったのかなあ。カリフォルニアで行われたクラシックカーレース中に事故死してしまったことも含めて、井上氏は晩年、まるで何かに憑かれたように生き急いでしまったようなに映る。 -
前Yahoo社長の井上雅博伝、図書館で走り読みながら予想以上に引き込まれた。
特に晩年の貴族的な趣味生活の模様。
趣味の世界へと没入しながらも、世間で目立たぬ様、大っぴらにする事なく。団地育ちの庶民感覚からなるものか。
「自分がつくったものは全部壊せ」とあっさり見事な引き際。
衝撃的な最期が無ければ、早期ナイスリタイアのモデルになっただろうに。 -
2017年4月25日、クラシックカー事故で逝去されたヤフー元代表取締役社長井上雅博氏。実質的創業者といってもいい。彼がヤフー社長でなかったら、いまのヤフー曳いては日本のインターネットは育っていたかどうか。それほどの大物でありながらマスコミ嫌いも手伝って彼の人物像はなかなか伝わってこない。そんな彼の人物像に迫る。
但し情報が極端に少ないのか、内容的には井上氏の社長退任後の趣味、クラシックカーやワインや別荘の話が主なのが残念。事業家としての井上氏の姿を期待して読むと肩透かしを食らうかもしれない。そうしたなかで元PIM CEOとしてヤフーに召集された松本氏と井上氏との関係性は大変興味深い。パワハラじゃないかという扱いも多少(ほぼ?)あるが、まるで親子や師弟のような姿をみると井上氏は腹心として事業承継までしっかり考えて経営をしていたのだなとわかる。 -
ヤフー元社長の井上さんの伝記。
経営手腕の天才であり、社長退任後は趣味の世界に没頭し、趣味の世界で亡くなる。
孫さんとの関係性、単純な上司と部下という関係性ではないエピソード。ソフトバンク社長室長時代は社長より偉い社長室長と呼ばれ、孫さんより遅く出社し、海外出張では孫さんに荷物を持たせて自分はタバコをふかすなど図太い面も。一方て休日も孫さんと付き合わなくてはならないからという理由でゴルフはやらない。
ヤフーBB事業など大きな仕事には、孫さんと直接交渉を避けるために部下の松本さんを代わりにソフトバンクに送り込んでいた。井上さんの後任として松本さんを打診したが断られ、宮坂さんを選んだ。松本さんはヤフーが買収して元ヤフー社長の川邊さんが在籍していたPIMの元代表取締役。
井上さんは契約社員としてソフトバンクに入社し、そのまま契約社員のまま社長室長を経て、ヤフー社長に就任する稀有な存在。 インターネットを日本に広めた産業家であり、日本で最も成功したサラリーマンであるというのが、元社長の宮坂さん・川邊さんの言葉。
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世界全体が大きな流れに乗って変わる時、その流れを上手く利用できる少数の実業家が巨額の富を得る。しかし、だからといって彼が天才という訳ではなく、巡り合わせが良かったと考えるべきか。流れそのものを自ら起こす人は実業の天才と言えるかも知れないが。
米国と日本のムーブメントにおける時間差を利用して事業を成功させてきた孫正義と、ほぼ対等のような立場で、その事業の一翼を担ったこの本の主役井上雅博ーヤフージャパン社長。自らの趣味であるレース事故で死去し、今は居ない。故人だから、成金的な趣味と実業家としての彼の二つの顔を赤裸々に語れたのかも知れない。暴露本ほど下品な内容でもないが、団地の生い立ちからの分析は、やけにリアルである。
しかし、偉人でもなければ、人を救うために何かを成し遂げたわけでもない。時代に上手く乗った成金の話だ。学ぶ事は、実業の手腕くらいだろうか。 -
あの孫とやり合いなんて!
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彼にはビジネス(インターネット関係)に関わり続けて欲しかった。晩節が……
後味があまりよくない
まあ、小説じゃなくノンフィクション -
成功者としての井上さんが不慮の事故で亡くなったことを懐かしむ伝記。孫さんの話はいろいろなところで語られるが、その快刀として活躍した。Yahoo JAPANの栄光(インターネットバブル)の時代を感じ取ることができる。
宮坂さんから、以下。
https://note.com/mmiya/n/n141a09ecb4b1?sub_rt=share_pw -
こういうノンフィクションものは、すらすら読めて展開も面白い。知っている会社なので余計にのめり込んでしまう。