愛されなくても別に

著者 :
  • 講談社
3.94
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本棚登録 : 2128
感想 : 172
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065205785

作品紹介・あらすじ

時間も金も、家族も友人も贅沢品だ。

「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者が、息詰まる「現代」に風穴を開ける会心作!


遊ぶ時間? そんなのない。遊ぶ金? そんなの、もっとない。学費のため、家に月八万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす――そんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する!

愛情は、すべてを帳消しにできる魔法なんかじゃない――。
息詰まる「現代」に風穴を開ける、「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者の会心作!

感想・レビュー・書評

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  • 超推し★5 キツイ環境と時代を生きる若者たちの諦め… 愛おしい彼女たちに乾杯 #愛されなくても別に

    ■あらすじ
    コンビニでアルバイトて学費を稼ぎながら大学に通う主人公。彼女は自らの娘を縛り付ける経済観念がない母親と暮らしていた。
    お金も助けてくれる友人もいない彼女、それでも母親の愛情を信じてひたむきに生活していたが…

    ■レビュー
    めちゃくちゃ面白い!
    人によっては生き方が変わるレベル。

    武田先生は性格の悪い人間や負の感情を描くのがとってもお上手なんですが、特に本作は完成形! マイナスな心情描写がめっちゃ深く、緻密に、表現豊かにしたためられています。しかも文章が美しい。
    正直、これほど不幸を背負った人物の心情が胸に突き刺さった作品は他にないです。もう完璧。

    そしてなにより恐ろしいのは、本作の登場する若者たちが言っていることが、すべて「正しい」ところ。ひたむきで、能力もあって、合理的に生きていても、若者たちは救われない。

    本書の主人公と友人たちを見ていると、ホント涙が止まらなくなる。
    彼女たちは人間の業や執念といった渾身の恨みつらみをもっているのではなく、いつもカバンにぶらさがっているキーホルダーのように不幸を身に着けている。戦うわけでもないが、腐っているわけでもない。ただ冷酷な目で世の中をみて、それでも社会の一人として生きている。

    彼女たちに熱を全く感じない。冷たい。

    それでも最後に主人公が見つけた、ひとつの温度…
    とても素敵な一冊でした。

    ■推しポイント
    若い子たちの出会いの場として活用されるマッチングアプリ。20代は50%以上の利用率。理想のパートナーを見つけるために、または人間関係を豊富にするために、大人気のサービスになっています。

    確かに素晴らしいサービスですが、どんどん最適化されると男女の出会いはどうなっていくのでしょう?上位の人たちは確実に売れていき、底辺の人たちは確実に売れ残る。白黒はっきり区別されていく。

    合理化がどんどん進んでいくと、敗者ははっきり区別され、「諦めることが当たり前」になってしまうんです。はたして、これは希望のある世の中でしょうか。

    これからを生きる若い皆さんには、どんなに難しい課題があっても、ひどい家庭環境、経済状況であっても、諦めないでほしい。きっと本書の彼女たちのように、人との出会いが救ってくると信じて。

  • 同じ大学に通う三人の女子学生。
    宮田陽彩(ひいろ)20歳は母親と二人暮らしで、母が浪費癖が酷いため、家に毎月入れる八万円と、学費を合わせて、月に20万程、コンビニのバイトで稼いでいます。

    バイト先で一緒になった江永雅の父は殺人犯で、母とも折り合いが悪く、一人暮らしをしています。江永は生きていくために、からだを売っていました。

    宮田の収入の使い道を聞いた江永は宮田に、「奨学金が通帳に残っているか確かめた方がいい」と言い、確かめると予想通り、なくなっていました。
    宮田は家を出て、江永と暮らし始めます。

    そして三人目、実は友人のいなかった木村水宝石(あくあ)がバイト先に入ってきます。
    木村は実家から、毎月15万の家賃の他に余る程の生活費の仕送りを受けていました。
    そんな木村はなんと、自分の居場所を求めて新興宗教にはまり、何百万も貢ぎ込んでいました。
    宮田と江永は木村の母親と連絡を取り、木村は実家の九州に連れ戻されてしまいます。



    以下、完全にネタバレしていますので、お気をつけください。



    三人三様、色々なタイプの、毒親というものが、いるものだと思いました。
    最後に宮田の母親が「愛しているの」と言って連れ戻しに来ますが、宮田ははっきり「私、家族辞めるよ」と言って断ります。潔いなと思いました。

    宮田と江永の夢は、とても小さなものですが、二人の友情が本当に尊いものに思えました。



    追記 
    パソコンが故障して、スマホでレビューを入れてみましたが、使い勝手が今ひとつなので、レビューはしばらくお休みしようと思います。
    皆さんのレビューを拝見して、いいね!はスマホからできますので、よろしくお願いします。

    • まことさん
      ゆうママさん。こんにちは♪

      明日、ケーズ電気の人が、パソコン、見に来てくれるのですが、それで、ダメなら、どこかにパソコン送らないと、いけな...
      ゆうママさん。こんにちは♪

      明日、ケーズ電気の人が、パソコン、見に来てくれるのですが、それで、ダメなら、どこかにパソコン送らないと、いけないみたいで、面倒くさいです。
      買い換えになったらどうしよう?
      まだ、3年しか、使ってないのに~!
      さみしいなんて、言ってくださるの、ゆうママさんだけですよ。
      ありがとうございます。
      あんまり、長くかかったら、スマホからちまちま、打ち込んで、投稿したくなるかも。
      2022/04/15
    • アールグレイさん
      わっ~エスキース読んだんだ、とコメントしていました!
      コメントが交差したようですね!アハハ
      まことさんが私の中で特別なのは、男性だと思ってい...
      わっ~エスキース読んだんだ、とコメントしていました!
      コメントが交差したようですね!アハハ
      まことさんが私の中で特別なのは、男性だと思っていたからです。
      パソコン、早く直りますように
      2022/04/15
    • まことさん
      ゆうママさん。

      ありがとうございます。
      ゆうママさん。

      ありがとうございます。
      2022/04/15
  • 宮田や江永の毒親との闘い。
    淡々とクールに語られていて余計に痛々しい。

    結末はとても感動した。最後の20ページほどは目頭が熱くなり読み進めるのが辛いほどだった。
    「愛されなくても別に」
    ーなんてポジティブな言葉なんだろう!

    2020年のオリンピック上手くいかなきゃ面白いのにと思っていた宮田は、ハタチの誕生日とともに、居場所を自分自身の力で手に入れた。
    宮田の呪いが通じてオリンピックは2020年に開催されなかったけど、きっと、世界中の皆不幸でなくても自分は生きててもいいんだ、と思えるようになっただろう。

    大きな救いのある一冊。

  • フォロワーさんの感想を読んでAmazonでポチって積読していた一冊。

    評価の高い本だったので気になっていた。

    これは、所謂毒親を持つ大学生の話。
    宮田の両親は離婚し、母親と暮らしていた。
    母親の収入は決して少なくはないのだが、使い方に問題がある。
    宮田はバイトをしながら家事も行い、家にもお金を入れて大学にも通う。

    そんな宮田が、父親が殺人犯だと噂の江永と出会い、ひょんなことから同居することになる。


    重たいテーマなのに、重さを感じることなく、さらさらと読みやすい。
    若者の生きづらさを描いているというが、実際にこのような環境の大学生って多いんだろうか?
    我が家が平和過ぎるのか?どこかこれは完全にフィクションだから、と決めつけて読んでいる自分が居る。

    私には共感できる本ではなかったが、ここまで評価が高いのは、心に響く何かがあるのだろう。。。

    不幸自慢しあえるほどの2人だが、2人でいられることで少しずつ変化が。

    不幸には違いないのだろうけど、2人の強さなのか、生き様が清々しいのか、最後まで目が話せない物語だった。

  • いわゆる「毒親」を持った3人の女子大生物語。

    終わり方は好感が持てた。
    3人中2人は助かったようだ。友情も結ばれて今後も互いに助け合う未来が予見できそうだ。

    だが、私はひねくれているので助からなかった1人の方を向いてしまう。
    彼女はどうしただろう。どうなるだろう。
    そのストーリーはない。
    2人とは違い、友情にも恵まれなかった彼女は自分で自分をなんとかするしかないのだろう。
    ネグレクトは罪。
    しかし、その逆の「過保護」もまた辛いのではないだろうか? ベクトルが逆なだけで。
    経済DVを受けている身からしたら過保護は甘いと写るかもしれない。そのとおりだろう。
    しかし、しかし、はっきりとSOSが出しづらく理解も共感もしてもらえない過保護の毒は相当辛い気がした。
    きっと彼女は今も生暖かく柔らかな檻に囚われているのだろうな。

    • みんみんさん
      ちょっと時代物に行ってみたら?
      お爺さんお婆さんは流行り物はムリだ笑
      ちょっと時代物に行ってみたら?
      お爺さんお婆さんは流行り物はムリだ笑
      2023/01/21
    • 1Q84O1さん
      師匠の☆5が見てみたい!
      贅沢かな…
      ☆4でもいいですw
      師匠の☆5が見てみたい!
      贅沢かな…
      ☆4でもいいですw
      2023/01/21
    • 土瓶さん
      が、がんばりますᕦ⁠(⁠ò⁠_⁠ó⁠ˇ⁠)⁠ᕤ







      師匠ではない(⁠╥⁠﹏⁠╥⁠)
      が、がんばりますᕦ⁠(⁠ò⁠_⁠ó⁠ˇ⁠)⁠ᕤ







      師匠ではない(⁠╥⁠﹏⁠╥⁠)
      2023/01/21
  • 重いテーマなのになんだかキラキラしてる。
    描写もすごく素敵。
    色んな毒親が出てくる。自分も毒親持ちだから感情移入しまくってしまった。
    宮田と江永の会話が時々微笑ましかったりして、それも魅力。
    終わり方も良かった。
    もっと読んでたかったなあ…


    親でも子でも1人の人間で別の人格なんだよね。やっぱり。
    親だから、家族だからって無条件に愛せるわけじゃない。
    なんだか自分も救われた気がする。

    表紙も素敵だったし、読んで良かった。
    こちらの作品に出会わせてくださったブクトモ様に感謝\( ´ω` )/

  • 『誰かから愛された経験があれば、今みたいに自分を攻撃することを止められるのだろうか。

    子供の頃に手に入れそびれた自己肯定感を、どうやったら得ることができるのだろう。

    自信の欠如は巨大な壁となって、私を世界から過剰に排除しようとする。』(本文P121より)

    親との関係に悩み、自分を責め続け、自分の感情や感覚すら押しつぶしてきた3人の女子大学生の心の叫びが心を揺さぶる。

    世間が疑うこともしない「親子愛」「家族愛」「母性」は、それほどに絶対的で盤石なものなのだろうか。

    たまたまの不運により(それは子どもの所為では全くなく)、親から慈しまれる感覚や記憶を持てなかった人間は、やり場のない理不尽さを自分に向け、自分を責め続け、ある時は親を抱え込み、家族に尽くし、自分を捨てる。

    献身愛や自己犠牲を美徳としてきた社会故、「親孝行」は神聖化される。
    生まれながら不運にも親や大人の役目(家事や介護など)を背負わされてきた若い女性たちの心の機微が丁寧に描かれる。

    そもそも人間としての快・不快の感覚の軸が脆弱だ。
    だから、自分自身を大切にする意味も術も分からない。

    満たされた経験に乏しく、手を差し伸べてくれる大人が周囲にいない環境も加わり、子どもが親を支え続ける立場逆転。

    昨今「毒親」という言葉が先行し、自分の親が毒か否か、定義を満たすかという議論がなされる。
    分かりやすいのは、完全な暴力や放置。これならば、親を単純に憎んで捨てられる。

    だが、ほとんどの人は、主人公 宮田陽彩が悩み苦しむように、親に全く愛されなかったというほどではなく、親の事情や未熟さを加味すると、親は親なりに私を愛していたのではないかと、親を責める気持ちと自分を罰する気持ちが、せめぎ合う。

    結局のところ、自分自身の感覚や感情を否定し、親を受け入れる善良さや寛容さが親を否定したい本心を凌駕してしまう。

    100%悪人の「毒親」など存在しない。
    「普通」の親が、100点満点の完璧な母性を持ち合わせているわけでもない。

    皆、不完全で不十分で過剰であり、未完成で、変化し続ける。親も子も。
    だから親を許せ、受け入れろとは言わない。親との距離や関係性は自分で決める。

    親を「毒」「悪」という範疇に入れてしまうと、自分が一生その犠牲者、被害者という立場から抜けられなくなる。
    加えて、自分が親を否定するあまり、「自分自身が正しくなければならない」という強迫観念が付きまとい、自責と自罰の念で苦しみを背負う。

    そんな状況が登場人物たちの諦めが混じる行動や言葉、息遣いからひりひりと伝わってきた。

    作者 武田綾乃さんは、我が家の息子たちと同世代。漂う諦観、臭い、薄暗さ、哀しみが行間からも漂う。
    これからもとても楽しみな作家さん。

    本文P277のこの一説は、還暦近い私にも力をくれた。

    『(母親を)許すかどうかの選択は、宮田がしていいんだよ。空気とか社会とかが宮田に謝れって言ったって、宮田はそれを無視していい。怒り続けていいし、悲しみ続けてもいい。何を選ぶかは宮田の持っている権利だから。』

  • それぞれタイプの違う"毒親"に翻弄され生きてきた、女子大生3人の葛藤と決断のお話。

    想像以上にヒリヒリした内容だった。
    子供は親の所有物じゃないよね、、
    愛するが故に過保護すぎるのもまた子供を縛って苦しめてしまうし、距離感って結構難しいのかも。

    小さい子どもは虐待されてても、母親を求めて愛されようとする事が多いと聞くけど、これくらいの年齢になってもなかなかそこから抜け出せないものなんだなぁ、、

    江永と出会えて良かった
    愛されなくても別にいいじゃないか
    自分が自分らしくいれる事が1番幸せなんだと思う。

  • 主人公陽彩はもうすぐ20歳の大学生。
    だから自分のその頃のことを思い出しました。

    母が一種の毒親(方向は水宝石の母と一緒)と
    当時の私は全く気付かなかったから
    もしあの頃この本を読んでいたら
    「うちは良いお母さんでよかった」と思ったことでしょう。

    私は愛されたかった。
    でも「愛する形は人によっていろいろあるんだ」と
    今は思います。

    友達ともうまくやっていきたかった。
    陽彩や水宝石のように単独行動はありえなかった私。
    だから傷ついた。
    今はどんどん一人で行動。

    勉強もろくにせず、来年からは嫌でも社会人だからと
    バイトもあまりしなくてお金もなかったあの頃。
    あれがあったから今は毎日を凄く楽しく過ごせるんだなと思う。

  • 辻村深月×武田綾乃  毒親、依存しあう親子――「親が好き」は呪いかもしれない(小説現代編集部) | FRaU
    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81300

    "愛されなくても…”武田綾乃の新作はヒリヒリとした青春小説 | ananニュース – マガジンハウス
    https://ananweb.jp/news/310405/

    『愛されなくても別に』(武田 綾乃)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000343988

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著者プロフィール

1992年京都府生まれ。第8回日本ラブストーリー大賞最終候補作に選ばれた『今日、きみと息をする。』が2013年に出版されデビュー。『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』がテレビアニメ化され話題に。同シリーズは映画化、コミカライズなどもされ人気を博している。2020年に『愛されなくても別に』が第37回織田作之助賞の候補に、また2001年には同作で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。その他の著作に、「君と漕ぐ」シリーズ、『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『どうぞ愛をお叫びください』『世界が青くなったら』『嘘つきなふたり』などがある。

「2023年 『愛されなくても別に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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