ポジティブ心理学 科学的メンタル・ウェルネス入門 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065222300

作品紹介・あらすじ

精神疾患の治療(マイナスをゼロへ)の枠を超え、
さらなる「幸せ」を目指す、ユニークな心理学が誕生した。
”ポジティブ心理学”は人生の価値観を問い、
哲学的知見も融合する、総合学問である。
同じ環境で暮らす修道女の、寿命の差に潜む驚くべき原因とは?
利他行動は、精神にどんな良い影響を生むのか・・・・・・?
さまざまな実験から、
自らを「幸福」状態へと導くメソッドを、科学術的に検証していく。
新たな学問の可能性と個人、社会への活用法を、公共哲学の一人者が、解説する。


まえがき
序章 政治哲学者、ポジティブ心理学と出合う                                   
第一章「ポジティブ心理学」――「善い生き方」による幸せを探究する学問
1 価値判断の指標 
2 ウェルビーイング理論                          
3「実践的科学」としてのポジティブ心理学                 

第二章 幸福を生み出すための美徳と強み                   
1 ヘドニア─エウダイモニア論争                       
2 美徳と人格的な強み                           

第三章「善いこと」を促進する社会システム                
1 ポジティブな制度・組織                         
  問題を「心」から掘り起こす/「可能にする制度」という考え方
2「ポジティブ健康」という社会課題                   
3 次世代のためのポジティブ心理学
4 ポジティブな仕事・ビジネス
5 ポジティブな政治経済


ポジティブ感情は視野の広がりを生む。(中略)避けがたい困難で生じたネガティブな心理状態からの回復力(レジリエンス)を高めることにも寄与できることがわかってきている。ポジティブ感情を生み出すエクササイズは、弱い立場にある人が上向きの循環をつかむアート(技術)、身を守るためのアートとして生きるものでもあるのだ。
―――「第一章 ポジティブ心理学――「善い生き方」による幸せを探究する学問」より

感想・レビュー・書評

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  • 私のデフォルトはネガティブである。だから、こういう学問もあるのかと新鮮だった。

    著者は政治哲学者であって、医師でも心理学者でもない。なぜそんな人が心理学を?と疑問に思いつつ読んだが、ポジティブ心理学を社会の仕組みにまで応用させようというのが作者の狙いの一つでもあるようだ。平易な語り口で、わかりやすい。ただ、わかりやすさを追求するあまり、日本語に訳しにくい専門用語を仏教や儒教の言葉に置き換えるのはいかがなものかと思う。双方の本来の意味から離れていくように読んでいて感じた。

    病は気から。昔からのこの格言は科学的に実証されているという。「ネガティブな感情の過多は問題ではなく、ポジティブな感情をいかに増やすかが鍵である」とか、「幸福感は遺伝的要素が大きいが、意図的な活動や環境によっても変動する」とかは少し救いになる。努力すれば幸せになれる。だから、ポジティブ心理学は実践的な科学だということのようだ。残念ながら、その実践的な部分は本書ではあまり触れられていない。本書はあくまで、ポジティブ心理学という学問の紹介である。

    コロナ禍で世間の心は擦り切れている。自分の引き出しに一つ、お守り代わりに忍ばせておくといい視点かもしれない。

  • 2023年9-10月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00553125

  • 登場人物のバレエダンサーを目指す男の子のミュージカルを見たことある!と思った。

  • 前向きな感情は、幸福を生む。幸福の要素を解明し、本当の幸せを生み出す“ポジティブ心理学”。その考え方と、自分の人生、社会への活用法を説く書籍。

    従来の心理学は、精神疾患など心のネガティブ(マイナス)な状態の治療を目指す。だが、不幸の減少は幸福の実現を意味しない。20世紀末に誕生したポジティブ心理学は、心の中のプラスの要素に注目し、何が幸福につながるのかを探究する学問。

    ポジティブ心理学では、「幸せ・幸福」に代わる言葉として、「ウェルビーイング」(良好状態)が用いられる。ウェルビーイングを構成する要素は多様である。
    ポジティブ心理学の創始者の1人、マーティン・セリグマンは、次の5つをウェルビーイングの主要要素と位置づけた。
    これらは、頭文字を取って「PERMA」(パーマ)と呼ばれる。
    ・P:ポジティブ感情:楽観主義や喜び、感謝、安らぎなど。
    ・E:(熱心な)参与・従事/(熱中する)没頭・没入:何かに熱心に関わること。
    ・R:人間関係:人との付き合いを楽しめている状態。
    ・M:意義・意味:人生や仕事が社会にどう役立つかということ。
    ・A:達成:目標を、自らの力で達成すること。
    例えば仕事で一時的にRは下がるかもしれないが、やり遂げることでAやMを満たし、仕事を通じて新たなRを獲得できるか?等

    ウェルビーイングを高める上で重要なのは、PERMAの各要素が互いに影響し、良い循環ができているかという視点だ。これは個人と社会の両方の次元で、考え、行動する際の目安となる。

    ポジティブ心理学では、仕事やビジネスの成功は、社会全体に便益をもたらす「善き仕事」を通じて達成されるとする。それは、質の高い仕事と倫理観・社会的責任、すなわち意義のある仕事と働き手の天職意識が両立したものである。

  • 2021年8月号

  • 近年の心理学の新しい潮流となっているポジティブ心理学。もともと公共政策の専門家だった著者による概観の書。
    個人の楽観主義が実際の成功にも結び付く「拡大ー構築理論」の話から始まり、個人の幸福の要素であるPERMA、それをもたらすのは善行であるという研究結果を紹介し、道徳的・哲学的な議論と科学的な議論が交差している。
    そして、それを「可能にする制度」という概念に触れ、筆者の専門である公共政策を心から考える、というように徐々に規模を拡大させつつ理論が展開していく。
    まさに入門書として幅広くポジティブ心理学について知ることができる良書といえるだろう。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001179972

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著者プロフィール

千葉大学大学院社会科学研究院教授
東京大学法学部卒業
〔主要業績〕
『サンデルの政治哲学――〈正義〉とは何か』(平凡社,2013年)
『コミュニタリアニズムの世界』(共編著,勁草書房,2013年)
『ポジティブ心理学――科学的メンタル・ウェルネス入門』(講談社,2021年)

「2021年 『公正社会のビジョン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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