- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065235263
作品紹介・あらすじ
気づけば隣にディストピアーー
「推子のデフォルト」
子供達を<等質>に教育する人気保育園に娘を通わせる推子は、身体に超小型電子機器をいくつも埋め込み、複数のコンテンツを同時に貪ることに至福を感じている。そんな価値観を拒絶し、オフライン志向にこだわるママ友・GJが子育てに悩む姿は、推子にとっては最高のエンターテインメントでもあった。
「マイイベント」
大規模な台風が迫り河川の氾濫が警戒される中、防災用品の点検に余念がない渇幸はわくわくが止まらない。マンションの最上階を手に入れ、妻のセンスで整えた「安全」な部屋から下界を眺め、“我が家は上級”と悦に入るのだった。ところが、一階に住むド厚かましい家族が避難してくることとなり、夫婦の完璧な日常は暗転する。
世界が注目する芥川賞作家・本谷有希子が描く、心底リアルな近未来!
感想・レビュー・書評
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中編小説2作からなる本書、面白すぎて一気読みした。
初読みの著者さんだったけど、今後追っていきたい。
・推子のデフォルト
デジタル化が発達し、人々が体にあらゆる機器を埋め込み、「子供には生まれた瞬間からデジタル機器を与え、ネット漬けにするのが親としての務め」というのが常識となった世界の話。
主人公の推子は、「体は情報が注ぎ込まれていなければ不安を覚えるようになり、五分にも満たない時間でさえ、何もせずに手ぶらでぼんやりすることができなくなって」いるが、自分もそうじゃないか?とぎくりとさせられた。
最近、ゆっくり物思いに耽ったことがあっただろうか。自分もどんどん思考力や創造力を失っていっているんじゃないか。
夜23時以降とか、会社から帰宅する時間とか、デジタルデトックスしようかな、と本気で思う。
・マイイベント
登場人物全員、自分良ければ全て良し、を具現化したような人物で感じ悪いのだけど、その気持ち分かる、と思っちゃう自分もいる。
上層階の気持ちも下層階の気持ちも分かり、非常に居心地が悪い。
ラストにかけて、気味悪さに拍車がかかっていき、怖いし嫌なのにページをめくる手が止まらなかった。
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本谷有希子さんの新刊。
なんだか現代の行き着く先そのまま、というか今「10年後にはこうなっていますよ」と言われてもまったくびっくりしない。それほどこの現代と一続きのディストピア。
「推子のデフォルト」
子供達を<等質>に教育する人気保育園に娘を通わせる推子は、身体に超小型電子機器をいくつも埋め込み、複数のコンテンツを同時に貪ることに至福を感じている。そんな価値観を拒絶し、オフライン志向にこだわるママ友・GJが子育てに悩む姿は、推子にとっては最高のエンターテインメントでもあった。
「マイイベント」
大規模な台風が迫り河川の氾濫が警戒される中、防災用品の点検に余念がない渇幸はわくわくが止まらない。マンションの最上階を手に入れ、妻のセンスで整えた「安全」な部屋から下界を眺め、“我が家は上級”と悦に入るのだった。ところが、一階に住むド厚かましい家族が避難してくることとなり、夫婦の完璧な日常は暗転する。 -
未来?の保育園の話と、台風接近時のとある分譲マンションでの話。
なんだかみんな嫌な奴で笑ってしまった。
「生きてるだけで、愛」がすごく良かったので、こちらも手にとったけれど、こっちは個人的には今いちかも。 -
図書館より拝借。ひさびさにほんたにちゃんブラックワールドにつかりました。氾濫する川のようにどっぷりと⁈2作ともしっかり今の時代に合っている作品となっています。
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著者の作品で爽やかな読後感を得たことがそもそも無い気もするが、今作も最高に最悪である。1本目の『推子のデフォルト』はサイバーパンク系のディストピアSFに子育てを組み合わせるのは何とも底意地が悪い。2本目の『マイイベント』は完全に今この時代の現実世界と地続きの物語でもっと胸糞悪くさせてくれる。ITに抵抗感の少ないエリート層への痛烈な批評だ。ただ、熱海で豪雨災害があったこのタイミングで読んだのは少し堪えたので、私は本作を“今すぐには”あなたにオススメしないです。
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2編の中編。
「推子のデフォルト」の世界は、全て均質に、そして人間がサイボーグ化した世界。
保育園の子供達の描く絵は全て似通っている。
それは素晴らしいこと!
しかしその中に1人、原人とあだ名される母親とその子供は、独創的。
これは病気です、と言われているが、母親はこんなのおかしい!と抵抗する。
そしてそれを見る推子は、彼女らの反抗を、新しくて面白いコンテンツとしてしか見ていない。
最終的に行き着いたのは、地獄のように思えるが、福音と読む人もいるかもしれない。
人間という種は絶滅し、新たな種に進化したの…かも。
いまは、それが気持ち悪いと感じていても。
「マイイベント」に登場する人々は誰も彼も自己中で、相手を論破することに命をかけている。
特に、父親!
こういうやつ、いるなぁ。
腹立たしいので、バチがあたればいいと思った。
そして、私の思惑通りに物語が進んだ時、ざまぁみろ、と思った。
物語の登場人物は嫌なやつだが、私も大概だ。 -
1作目を読み終えると、タイトルまで恐ろしく感じた。
本当に起こってもおかしくない、いや寧ろもう起こっている、現実の延長線上にある物語。
2作目もやたらリアルで気持ち悪かった。
人の本質的な醜い部分を書くのが上手い作家さんだなと思った。 -
人間のコモディティ化。均一化された中身、効率にかき消される余白。
人間を観察の対象として面白がることの残酷さ。ホームレスを記事にして炎上したあれ。