夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (768ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065249666

作品紹介・あらすじ

首なし死体が発見されたのは、雪が降り積もった夏の朝だった!
20年前に死んだ美少女・和音の影がすべてを支配する和音島。
なにもかもがミステリアスな孤島で起きた惨劇の真相とは?
メルカトル鮎のひと言がすべてを解決する。

感想・レビュー・書評

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  • これは難解。まるで奇書(;´д`)
    『翼ある闇』に続け!
    独特の空気感を存分に味わうべき作品。



    この作品は賛否両論あるだろうなぁ〜と言うのが正直な感想。

    難解な部分がとにかく多い。
    自分なりに解釈していいのかしら?と思う描写ばかり。

    これが摩耶ワールドなのだ!と言ってしまえばそれまで(〃´-`〃)

    孤島、密室、で起こる殺人事件。
    しかも首なし。
    首なしといえば連想するのは入れ替わり。
    ただ、そんな甘い推理では到底置いてけぼりを喰らってしまう(^▽^;)

    ピカソの手法などで有名なキュービズムを事細かに説明し、美術、音楽、宗教のような思想を合間にパズルのように入り組ませ、読者を惑わすようなハッキリしない物言いで謎を深めて深めてさらに暗闇に落とす。

    無理があると思われる点を、いかにロマンが上回るかにかかった作品だなと勝手に解釈しました。

    私はこの作品、好きです。
    まさに私の好きなロマンの塊♡⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅   )⁝

    人間とは、こんなもの。
    という部分を突きつけられた感じがした。

    謎を細分化してじっくり考えて味わえる、奇書のような作品。


    次巻は『痾(あ)』

    楽しみだ!!ヽ(´▽`)ノ


  • いやぁもうすっごい...!
    トリックかどうかも怪しい超絶雪密室もそうだけど、それが霞むぐらいラストの怒涛の展開に圧倒された...
    二人の桐璃が出てきたあたりから訳分からんようになって、ラストのメルカトルの一言で完全に放り投げられたw
    読後、色々と考察サイト巡回したけど、意見がそれぞれ分かれていて、なんとなくの概要は理解出来たけど、細部まではふんわりしてる感じです。
    モヤモヤする結末の話はそんなに好きじゃないんだけど、ここまで突き詰められると、逆に清々しくて良いですね(錯乱)

    ラストで烏有が無傷の方の桐璃を選んだの見て「お前っ...!!!」ってなったわ...

  • Amazon audibleで聴いていましたが…60%位のところで、中断。'23年6月17日。

    頑張って聴いていましたが…これはダメ!耐えられませんでした。神父のキュビズムと神学の講釈に、ウンザリです。はっきり言うと、吐き気がしてきました。やっと終わった!と思ったら、また始まりやがる(⁠┛⁠◉⁠Д⁠◉⁠)⁠┛⁠彡⁠┻⁠━⁠┻


    ……と、中断していましたが…'23年7月2日、ようやく、Amazon audibleで聴き終えました。トータル、約1ヶ月半、かかりました。

    でもやはり、「うーん…」という感じです。メルカトル登場のエピローグも、僕のアタマでは、「???」です。まあ、そういう事かな、とも思いましたが(⁠。⁠•́⁠︿⁠•̀⁠。⁠)

    僕にとっては…とにかく、無駄に長い!正直、退屈だったし、上記の、「キュビズム」のくだり、必要?
    映画のくだりも、やはり「???」。足跡の無い雪の密室?のトリックも、「オイオイಠ⁠︵⁠ಠ」←「鮎最後の事件」の、密室トリックと同様の感想。
    エンタメ小説としては、僕には難解?過ぎました。


    続編、どうしようか…アタックしてみようか?残りの人生は、短いしなぁ…(⁠༎ຶ⁠ ⁠෴⁠ ⁠༎ຶ⁠)

  • どうしよう、よくわからない…とずっと思っていたのが皆様も同じような感想で安心した。ブクログのありがたさを一番感じた作品だったかもしれない。
    癖の強さはともかく、釈然としない度合いが強すぎた。次シリーズは少し時間を置くかもしれない。

  • う、む。これは……なるほど……評価が分かれそうな作品だ。

    まず文章は意匠に凝っており、ちょっとくどいなあと思いつつ、日本語の美しさを存分に味わえます。冒頭にある葬式シーンの美しい情景は印象的ですし、その美しさを後半でリサイクルしてくる演出など、全体的に文章で”魅せる”力が強い。しかも凝った文章でありながらリーダビリティも高く、750ページある小説であるにもかかわらず、すいすい読めちゃいました。

    物語はよくある孤島ミステリであり、終盤近くまではその「よく知る展開・よく知る内容」に沿って展開していくため、文章の読みやすさもあって読むことに苦労はしないでしょう。問題は終盤以降の主に謎解きにあたる部分で、これほど丁寧にリアリティを持って長々と土台作りをしているにも関わらず、その論理性を自ら放棄するような曖昧模糊とした場面を次々と見せ読者を攪乱してきます。

    おそらくプロットの段階で本格ミステリとしての明解な「解」を用意していると思われるのですが(そう感じざるを得ないほど途中経過における伏線や人物描写が巧み)、最終的にはまるですべてが舞台劇であるかのような前衛性を発揮するので、読者としては狐につままれた気分に。

    おそらくここで書かれているキュビズム関連の長々とした解説は、神学や芸術理論なんかより、「ミステリ」というジャンルがぶち当たる、”探偵と犯人”であったり、”舞台およびトリックを用意して、それを解決する”ことであったり、”作中で真相に辿りつかなければならない”といったジャンルに対する作者からの問いかけな気がします。

    私はミステリ小説の熱心な読者ではないので、トリックの方法が現実離れしたものであってもぜんぜん構いませんし、いわゆるアンチミステリというものも好んで読む方です。その上で、この謎を謎のまま、はっきりとは答えを提示せず終わらせてしまう点。そもそもどこからが妄想で、どこからが現実なのかが分かりにくい見せ方。ここら辺については賛否が分かれるのも無理は無いかと思いました。

    なので人によっては「一文一文すべてに価値があり、すべてがすばらしい」という感想もあれば、「読み終わったら壁にぶん投げた」という感想があってもおかしくない。一方で、解を提示しないことでよりこの小説は一種の永遠性を獲得しており、それはラストに至る過程の部分で「多重人格」や「キュビズム理論」といった考える素材の他、伏線となる要素はちゃんと用意されているからでもあるでしょう。

    というわけで、作者の中で解答はあるのでしょうし、発売されて30年近く経つ名の知れた作品なので、色んな解釈が用意されている「構造を楽しむ小説」という印象を受けました。なのでこの小説は、ミステリファンがミステリファン同士で語り合ったり、解説サイトで色んな解釈を読むという二次的な楽しみ方をして初めて100%真価を味わったことになるのでしょう。

    なぜ、「奇書」として人気なのか。なぜ評価が分かれるのか。その理由がわかりました。

  • 読み終わったとき、もう何が何だかよく分からなかった。
    途中までは事件が起こらず、少し読むのに疲れてしまったが終盤はページを捲る手が止まらない...からのモーセの雪密室トリック、そしてカタストロフという名の謎謎謎。

    自分でも少し考えた後、(ほとんど分からなかったのは言うまでもない)ネタバレサイトを巡った。
    個人的には、

    桐璃は双子。武藤が作った『和音』の外面に似ていたため、眞鍋夫妻によって片方は死産として処理されて和音(編集長)の下で育った。
    編集長の和音は、『和音』を共有していたメンバーの一人。そして『春と秋の奏鳴曲』を現実とするため、烏有と桐璃を出会わせ、そして編集社に勤めさせ、和音島に行かせ、最終的には殺人を犯させた。
    最後に(最後だけではないが)双子のもう片方が現れたのは、『和音』の「復活」を表すため

    という解釈が一番しっくりきた。だがこれでも、一番最初の事故に遭って助けられてガリ勉になって受験落ちてってとこはどうなのかは分からない。さすがにそこから操れるとは思えないが...

    本作が好きか嫌いかと問われれば、しばらく迷った末に好きと答えるだろう。が、「好きな作品」というよりは、「印象に残った作品」という方が正しいかもしれない。
    ☆での評価はまたいずれ。

  • 20年前に何があったのか...
    20年ぶりに集まった男女を襲う惨劇。
    雪による密室、首を斬られた死体。
    巻き込まれてしまった記者見習と女子高生...のはずが...

    「いったい何なのだ...
    いったい何なのだ...」

    本当にこれでした!
    読めば読むほど謎が深まるのに、解決されたのは事件のみ。
    知りたい謎は多過ぎるけれど、考える、想像する、理解するということなのでしょうか。

    そして、最後の三ページでこの本がシリーズだったことを思い出しました。

  • ひたすら長い760ページ。人がようやく死ぬのが244ページ、普通なら終わってるよ。
    ただ、なんか小難しいことが小気味よい文体で難しい単語とともに語られるので、文章読むのは楽しかった。760ページも読んだのになんだか訳わかんないで終わったのが自分的にやるせなかった。でも、モヤモヤしてるから、次も読むのかなぁ。きっと最後まで報われないんだろうなぁ。
    作中時系列はあとがきによると本作→「痾」→「翼ある闇」だそうです。

  • ノベルスで読了。
    ラストで謎が解けたような気になるが、よく考えるとわからないところが多々残る。それなのに妙に惹きつけられてしまう。

  •  まさか解決編が明示されないとは思わなかった。「この作品は読者の考察がそのまま解答になりうる作品である。」という風に感じ、問題作を書き続ける作者ならではの傑作だなと感じた。これは確かに「ドグラ・マグラ」「黒死館殺人事件」「虚無への供物」、そして「匣の中の失楽」に続く第五の奇書といっても過言ではないといえる作品だ。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。京都大学工学部卒業。大学では推理小説研究会に所属。在学中の91年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューを果たす。2011年『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。15年『さよなら神様』で第15回本格ミステリ大賞を受賞。

「2023年 『化石少女と七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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