エンドロール

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065262054

作品紹介・あらすじ

『時空犯』でリアルサウンド認定2021年度国内ミステリーベスト10第1位に輝いた著者の、待望の長編!

202X年。新型コロナウイルスのせいで不利益を被った若者たちの間で自殺が急増する。自殺者の中には死ぬ前に自伝を国会図書館に納本するという手間をかけている者がいた。その数200人。共通するのは陰橋冬という自殺をした哲学者の最後の著書と自伝を模倣するということ。
早世したベストセラー作家・雨宮桜倉を姉に持つ雨宮葉は、姉が生前陰橋と交流があり、社会状況の変化から遺作が自殺をする若者を肯定しているという受け止められ方をしてしまったという思いから、自殺を阻止しようとするが……。

感想・レビュー・書評

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  • 初読みの作家さん。

    2019年の暮れから流行った新型コロナのせいで、高齢者の死が増え、日本国内で二万人前後の若者たちが自殺したそうです。

    隠橋冬の『物語論と生命自律』という本が出回り、努力しても報われないなら生命を終わらせてもいいという生命自律主義を唱えて隠橋は自殺します。

    人気作家だった雨宮桜倉の弟の雨宮葉もまた病気で亡くなった桜倉のあとを追い作家になります。

    葉は生命自律主義者たちと対立し討論会に出演します。
    そこで知り合った長谷部組人という小説家が自殺し後に組人は隠橋の弟だったことがわかりますが「本当に組人は自殺だったのか」と周りの人々が言い出しますが、果たしてその真相はというお話。

    2019年からの新型コロナにより若年層が不遇により若者の自殺が増えたということです。
    成功することが難しくなった若者に生命自律主義反対派の箱川嵐が「サッカーそのものではなく、サッカーで成功したり、栄誉を得たりする方が大事だというのなら、本当にサッカーを好んでいるとはいえないだろう」と言ったのが印象に残りました。

    若者向けの作品だと思いました。

  • コロナ禍のしわ寄せを受けた若年層の死生観、辛い現実の中で優しさが伝わるミステリー #エンドロール

    ■作品レビュー
    コロナ禍という舞台を背景に、自殺という難しい題材によくぞ挑戦したという作品。

    作品全体から社会への課題提起と、このままじゃいけないという意識が高さがにじみ出ていている。ミステリーとしての仕掛けも効いていて、突然視点が変わってしまうところが狡猾。作家先生のセンスがばっちり光ってますね。

    特に面白いのは構成で、テーマは同じですが前半と後半で語られる舞台が違う点。
    前半は自殺に関する議論で、後半はいわゆる事件が発生します。色んな角度で楽しめる作品でした。

    正直本作は、すらすら読めるエンタメ作品ではありません。
    しかしコロナ禍で割を食ってしまった彼らを、究極判断ともいえる生死について語りつくす物語です。よくぞセンシティブなテーマについてよく書ききりました、現代に生きる我々が考えるべき作品です。

    ■もっと人を愛しなさい
    年を重ねてきた私にとっては、登場人物のやりとりを見ていて、どうしても感じる違和感があります。

    生きるも死ぬも、なぜ自分中心なんでしょうか。

    自身の価値観や幸せのために主体的に考えて行動する、そんなのは確かに当たり前です。しかし人生って、ひとりで生きていくわけじゃないでしょ?

    自分以外の人がいるせいで、迷惑をこうむったり、犠牲になったり、苦しく嫌なことも多いけど、逆に楽しいことも、面白いことも、頼りになることも、助かることも、ありがたいと思うこともいっぱいある。自身の生き死にの結果、良くも悪くも、他人に影響を与えるんです。

    本書に出てくる登場人物は、生死の判断をするには答えを急ぎ過ぎているし、損得の合理的思考があまりに甚だしい。自分のことより、もっと人を愛しなさい。

    説教臭くなって申し訳ないですが、ただ本書を読んでいて、悲しく憤りがわいてしまいました。頭で考えすぎずに、まずはすぐそばにいる人を幸せにしてあげてほしいと思いました。

  • 新型ウイルス騒動の収束後、若者の自殺が急増。病気で早世したベストセラー作家・雨宮桜倉を姉に持つ、駆け出しのミステリー小説作家・雨宮葉(17)は、姉の遺作が自殺する若者を肯定していると受け止められかねないという思いから、自殺を阻止しようとしていた。

    自殺否定派の葉ら3人と、自殺を肯定する生命自律主義者の3人の対決が描かれる…… が、はたして彼らの真意はどこにあるのか。

    自殺肯定派の長谷部らのもってまわった論理が頭でっかち。すねた善人と露悪的な善人しかいないみたいな世界観に一縷の希望が託されているようにも思えるが。

  • 俺はボールを蹴る、という運動自体が楽しくて、サッカーを続けている。
    評価されなくても、トップに上がれなくても究極的には困らない。
    チームを動かしたり勝利したり、評価やトロフィーを得ることに魅力を感じるのも確かだし、成功したら喜ばしくも思う。
    けれどもそれらの歓びの基本部分にあるのは『ボールを蹴る』だけの楽しみだ。
    だから俺は、評価されなくてもそれほど悔しくないし、サッカーで生計を立てられなくても絶望まではしない。
    ボールに触れる時間が限られてしまうのは残念に思うだろうけどな。

    サッカーそのものではなく、サッカーで成功したり、栄誉を得たりする方が大事だというのなら、本当にサッカーを好んでいるとは言えないだろう?

    サッカーも動画制作も、強制されるものじゃない。
    純粋に楽しめなくなってしまったら、別の何かを探せばいいだけの話だ。

    蹴るだけの、作るだけの、書くだけの楽しさを享受し続けることができたのなら、採点も、名声も必要ない。

  • 桜倉さんが書いたお話を読んでみたい。

  • Amazonの紹介より
    202X年。新型コロナウイルスのせいで不利益を被った若者たちの間で自殺が急増する。自殺者の中には死ぬ前に自伝を国会図書館に納本するという手間をかけている者がいた。その数200人。共通するのは陰橋冬という自殺をした哲学者の最後の著書と自伝を模倣するということ。
    早世したベストセラー作家・雨宮桜倉を姉に持つ雨宮葉は、姉が生前陰橋と交流があり、社会状況の変化から遺作が自殺をする若者を肯定しているという受け止められ方をしてしまったという思いから、自殺を阻止しようとするが……。



    斬新な発想や意外な展開だけでなく、それぞれが考える「自殺」についての討論会には、色んな意味で考えさせられました。
    自殺することによって、他者に与える影響がいかに大きいことか考えていただきたいなと思いました。
    人生の選択肢に選ばれないことを望みたいです。

  • 若者たちの間に自殺を呼びかける思想「生命自律主義」が流行し、亡くなった小説家の姉を持つ主人公が、この思想の信奉者と戦う小説。

    正面からコロナ禍を取り上げ、その中での若者の鬱屈を大きなテーマとしている。思想の信奉者と戦う方法がネット露出であるという点も含めて、2022年の今(読んだ当時)でなければ読めない、書けない作品だと感じる。貪欲に現代に寄り添おうとしている。ちなみに著者は1978年生まれということなので、若者が自分の感情をそのまま書いた小説という訳では勿論ない。創作というのはそういうところが凄い。
    「共通タイトルの自伝を書いて国会図書館に寄贈した上で自殺し、所蔵件数をもって自分たちの思想を喧伝する」というアイディアが面白かった。もっともストーリー全体としては設定でしかないのだが。またトリック解決の過程で、特別サイズや自費出版の本が仮想本棚サービスに対応していないという指摘もマニア心をくすぐる。

    内容と関係のない点。奥付を見たら印刷所が豊国印刷だった。[https://booklog.jp/item/1/4065230683]のモデルと思われる会社だ。改めて意識すると、キャンバスに絵具で書いたような風合いに見える本書の表紙は、どんな印刷技術を駆使したのだろうと思う。

  • 人が死んだ理由にもちょっと納得がいかず消化不良になっている。ある書物とコロナ禍に学生時代を過ごした少年少女たちの鬱屈が自死へと誘うのだが、これは若者が割を食ったことの帰結であり、同情はできる。物語自体は、真相にたどり着くまでに二転三転するのをどこまで楽しめるのかがこの作品の肝かもしれない。私は読んでいて、展開が変わったところで梯子を外された感があり、ついていけなかった。若い人には共感できるところがあるのかもしれないが、おじさんには無理である。

  • 自殺に対する是非論は昔からあると思います。しかし、その考え方や捉え方も昔と今では異なるところがあるのも事実だと思います。
    コロナ禍により自殺する人が増えたいう事実は残念ながら覆すことのない事実です。そのような社会的背景があったからこそ生まれた本作だと思います。
    重たいテーマを扱っていますが、エンターテイメント作品なので読みやすいです。ぜひ、一度手に取り自殺是非について考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

  • 読みやすくてあっという間に読み終わったけど、なんだか理解しにくい話だった。
    高校生が大活躍、フレンドリーな警察、コメディなのかシリアスなのかもわかりにくく。
    へんな話だった。

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著者プロフィール

1978年京都府生まれ。第63回メフィスト賞受賞。デビュー作『スイッチ 悪意の実験』が発売後即重版に。「王様のブランチ」(TBS)で特集されるなどで話題となる。2作目の『時空犯』は「リアルサウンド認定2021年度国内ミステリーベスト10」で第1位に選ばれ、今作が3作目となる。

「2023年 『エンドロール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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