髪追い 古道具屋 皆塵堂 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065276518

作品紹介・あらすじ

遊び人の茂として、ふらふらしていた茂蔵も、巳之助の弟分におさまり、小間物屋・大黒屋で真面目に働いている。その茂蔵が花見の後、酔った勢いで祠の戸を開けて、紐で固く結ばれていた箱を開けてしまう。箱の中にあったのは女の長い髪。するすると伸びて、茂蔵の足に触れたとたん、大音響が響き渡った。逃げるように立ち去った茂蔵は、翌朝、帳場の観音像が真っ二つに割れているのを見つける。観音像が身代わりになってくれたのか。幽霊が見える太一郎によると、「封じ込めている」ものを茂蔵が開けてしまったらしい。祠の場所には昔、三十年前に焼け落ちた履物問屋備前屋の寮があった。今の主の徳五郎によると、先代はかなり悪辣で、借金漬けにして潰した下田屋から寮を強奪したらしい。下田屋の亭主は行方知れず、一人娘も病で失ったお此という不幸なおかみさんが失意の末に自害して、長い髪を残したというのだ。茂蔵が開けてしまったのは、備前屋が封印したお此の髪だった。この世に怨みを残すお此を太一郎や茂蔵は救えるのか? 人気シリーズ第九弾!

感想・レビュー・書評

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  • 曰く品が集まる古道具屋皆塵堂シリーズ第9作。
    あとがきにある通り、シリーズが『しれっと』再開してからは第二作となる。

    今回はいつもと趣向を変えて、新規の登場人物はなし。
    元遊び人の茂蔵が酔った勢いで祠にある木箱を開けると、中には長い髪の毛の束があり、それが襲って来た。慌てて元に戻し逃げ帰るも、翌朝祠からは木箱が消えている。

    ホラー部分は怖いのだが、それを上回るコメディ要素とテンポの良さで楽しく読める。

    最初、茂蔵と円九郎がごっちゃになっていた。二人とも小者感たっぷりだし『巳之助に逆らえない男』なのだが、茂蔵は聞き込みは上手くやっているしチーム皆塵堂に上手く溶け込んでいる。ちょっと外して巳之助に睨まれたり殴られそうになることもあるが、そこはご愛敬。

    巳之助といえば、相変わらず猫好きは変態レベル。猫好きネットワークはますます拡がり、巳之助が知らない人は猫好きではないか、江戸にいないかのどちらかというほど。
    そして巳之助が毎年楽しみにしている猫の赤ちゃん誕生の季節が近付き落ち着かない。

    逆にそれを地獄のように恐れているのは巳之助の幼馴染みで銀杏屋若旦那の太一郎。こちらも相変わらず猫が苦手なのに猫には異常に懐かれている。
    一方で彼の、幽霊やその手の物を見る力は更に強くなっているように見える。死神に憑かれた青年を『祟り婿』で出てきた曰く品で作ったもので救うという新しい技も見せている。

    峰吉はいつも通り異常な五感と商売魂とシニカルさを見せているが、珍しく店主・伊平次に買付をやらせてくれと頼んでいて、彼も出世欲があったのだなと安心する。

    また伊平次も怠け者の釣り好きではない顔を少し見せている。ご隠居の清左衛門は店番にお財布にと良いように使われているようで最後は上手く締めていた。

    肝心のホラー部分については太一郎と同じように見守るのみ。むしろ髪の毛の思いを遂げさせてやりたい気分だった。
    茂蔵が何故巻き込まれたのかは後に分かるが、そのせいで茂蔵は『けちな遊び人』ではなく『一段上の遊び人』を目指すことに。根が小者の茂蔵に出来るかどうかは分からないが、身近に目標が見つかったようだ。

    再びあとがきにて、猫増えすぎ問題は作家さんも反省しているようだ。太一郎が猫に押し潰されないためにも、少しは抑えてくれるとありがたい。

  • 「野暮なじじいの苦労人」が後を引く面白さ…

  • シリーズ第九弾(一旦完結→再開を経て)。

    酔った勢いで祠の戸を開けて、封印されていた箱を開けてしまった茂蔵。
    中には女の髪が詰められていて、なんとその長い髪が茂蔵を襲ってきて・・・。

    基本ユルいのですが、怪異描写は何気に怖いこのシリーズ。
    襲う髪の毛は、不幸な目に遭って自害したお此さんというおかみさんの怨念との事で、茂蔵と皆塵堂メンバーがその怨念を残す魂を救うべく行動します。
    今回は、太一郎が割と前面で活躍してくれて嬉しかったです。
    なるほど、やけに件の箱を取り戻すのがノロノロしているなと思ったら、“敢えて襲わせて”いたのですな・・。
    太一郎ってば、こういうドライな面もあれば、猫が苦手なのにやたら好かれて困っているところとか、そのギャップが好きですね。
    猫が好きすぎる魚屋の巳之助や、食えない小僧・峰吉、材木屋のご隠居で家主の清左衛門さんも安定のキャラで楽しませてくれます。
    そして謎の多い皆塵堂の主・伊平次が元植木屋で弟がいる事が判明(以前にも触れていたかもですが、全然覚えていないww)。
    と、いうことで(?)個人的に今後、伊平次を深堀してほしいと思った次第です。

  • シリーズ9作目。個人的には今までで一番面白かった。
    新しい登場人物はなく、前からいてる人達の活躍が目ざましい。伊平次ちょっと見直しましたよ、釣りばっかしてるオッサンやとおもてたけど。で、小僧の峰吉くんが凄い。この子にもっと活躍の場を作ってやって欲しいわ、小賢しくて大人より大人っぽくて良い。
    そして、視えるけど祓わない、どっちかと言うとお化けの味方、の太一郎の活躍(何もせんけど)が今回もすばらしい。
    これで、カバーのイラストを何とかしてくれれば言うことないねんけどな。登場人物をイラスト化とかやめて欲しいわ、脳内イメージ台無し。もちろんカバーして読んだけど。


  • 古道具屋皆塵堂シリーズ、9作目。

    今回は皆塵堂に持ち込まれた曰くつきの古道具にまつわるものではなく、巳之助の子分の茂蔵が開けてしまった箱をめぐる怪異噺。
    怪異描写は相変わらずの結構な怖さだけど、皆塵堂メンバーのセリフ回しが楽しくて楽しくて、スルスルと読めます。やっぱりこの皆塵堂メンバーが一番好きだな。今回、箱に封じられた髪束に込められた怨念をどう始末つけるか、ですが、実に太一郎らしい始末で良かった。単なる怨霊退治にならず、霊を見ることができる太一郎だからこその采配かな。それをちゃんと汲み取ってあげる伊平次もさすが。

  • 皆塵堂シリーズ第9弾。
    今回は前にも登場した茂蔵の話。酔った勢いで祠の中に入っていた箱を開けて封印されていたものを出してしまった彼は、怪異を止めようと皆塵堂の面々とともに箱を探すことに‥
    真面目になったがやっぱり遊び人にも憧れる、ちょっと間抜けな茂蔵のキャラがほっこりしていい感じ。ストーリーとしては封じられていたものの来歴とその行方を探して右往左往する話だが、太一郎や巳之助も活躍して面白かった。

  • 太一郎ちゃんがめちゃんこ人間味ある話だった。大好物です。

    ---

    今回新しい人が出てくるわけではなく、
    既存のメンバーで、前回はちょっとしか出番がなかった太一郎ちゃんが主要になっているお話。ひさびさに活躍する太一郎ちゃんが見れて、太一郎推しのわたくし感無量でございます。
    輪渡さんありがとうございます!!!

  • 本作では新しい登場人物はなく,皆塵堂に居候することになるのは巳之助の弟分,茂蔵である。
    「朽ち祠」
    茂蔵が以前の遊び仲間との花見の宴の帰り道,ほろ酔い気分で歩いていたところ奇妙な祠を見つけて,つい扉を開けて,御神体が入っていると思われる箱を開けてしまう。するとそこから女の髪の毛らしきものが飛び出して茂蔵を襲った。「パキッ」という音とともに攻撃が止むと,髪の毛は自ら箱に戻ったので,茂蔵は蓋をしてしっかり紐で縛って祠に戻した。
    しかし髪が箱から出たときの不穏な気配を遠くで太一郎が察知していた。
    「髪絡み」
    翌日再び祠を訪れると,箱が消えてしまっていた。皆塵堂チームは箱探しを始める。茂蔵はことの発端を作った責任から箱探しに加わることになり,その間皆塵堂に居候することになった。
    太一郎が気配を感じた店に行ってみると,店主の八べえが梯子から落ちたところだった。その時足に黒いものが絡みついているという証言が出ていた。八兵衛はその後死亡し,葬儀が終わってから訪ねて箱のことを尋ねると捨ててしまったという。捨てられたゴミはすでにそこにはなかった。
    「死神憑き」
    太一郎が気配を感じた戸倉屋に古道具の買い取りを装い訪ねてみると逆に相談を持ちかけられてしまう。跡取り息子が死神にとりつかれたようで,自殺を図ったり死にたがっているという。息子の件を解決するのと引き換えに戸倉屋からなんでも譲ってもらえるということになる。皆塵堂チームはそれぞれ息子・喜三郎に生きる気力が湧きそうなものを持ち寄ることにする。巳之助はうまい魚,峰吉は高さの違う枕をたくさん,茂蔵は大量の枕絵を持ち寄った。そして太一郎は連助の件で宮越が折った刀から作ったという小刀を渡す。それで自殺を図ったらどうするんだという周囲の心配も気にする様子はない。
    「髪つき首」
    茂蔵はひとりではこの行方を追ってとある道具屋を訪れる。すると,箱は確かにあったが売れてしまったという。買った男の話を聞いて追いかける。次のところでもすでに転売されており,「八助」という男が買っていったらしい。その名前に危ういものを感じるが,緊急性があると思い一人で八助の家に向かうと...。
    「花の祠」
    太一郎は箱の最後のターゲットと思われる店を訪ねる。

  • やっぱり、面白い。肩こらない物語です。

  • 酔った茂蔵が開けてしまった祠の箱には、この世に怨みを残す女の長い髪が入っていた。

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著者プロフィール

1972年、東京都生まれ。明治大学卒業。2008年に『掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南』で第38回メフィスト賞を受賞し、デビュー。怪談と絡めた時代ミステリーを独特のユーモアを交えて描く。『古道具屋 皆塵堂』シリーズに続いて『溝猫長屋 祠之怪』シリーズも人気に。他の著書に『ばけたま長屋』『悪霊じいちゃん風雲録』などがある。

「2023年 『攫い鬼 怪談飯屋古狸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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