日本史サイエンス〈弐〉 邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦の謎を解く (ブルーバックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065280829

作品紹介・あらすじ

日本史の謎に「数字」で迫る話題作再び! 邪馬台国はどこに? 秀吉は朝鮮でなぜ敗れた? 日本海海戦でロシアに大勝できた真因は?

感想・レビュー・書評

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  • <訪問>「日本史サイエンス<弐>」を書いた 播田安弘(はりた・やすひろ)さん:北海道新聞 どうしん電子版
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/717826/?rct=s_books

    日本史サイエンス〈弐〉 | ブルーバックス | 講談社
    https://gendai.media/list/books/bluebacks/9784065280829

    『日本史サイエンス〈弐〉 邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦の謎を解く』(播田 安弘):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000366359

  •  実は,前著とセットでメルカリで購入した。とてもきれいな本だったけど,わたしが一度読むと,赤線だらけになるんだよなあ。
     さて今回も,著者の専門分野である「船」が絡んだ歴史的な事件を取り上げている。「邪馬台国は何処に在ったのか」「秀吉の朝鮮出兵」「日露戦争時の日本海海戦」について,科学的に考えてみると,どんなふうな世界が見えてくるのか,とても信じられる仮説として,歴史の見方が変わってくると思う。
     
     ここでは,その一例として強敵ロシアのバルチック艦隊を破った日本海海戦について少しだけ紹介しよう。あの海戦は,東郷平八郎が考えた作戦(T字戦法)で勝利したことになっているのだが,本当にそうだろうか。
     そもそも,バルチック艦隊は,7ヶ月もかけて地球を一周するくらいの航海をしてきている。日本は,ロシアの艦船たちがウラジオストクに寄る前に,日本海でたたくことを計画したという。むしろ,バルチック艦隊に勝てたのは,こちらの理由なのではないか。
     7ヶ月も航海を続けてきた乗組員たちは,その間,戦闘の練習などができたのだろうか。食糧の調達に加え,当時の燃料である石炭はどれくらい積んでいたのだろうか。やっとたどり着いた日本海で待ち受けていたのは,戦闘練習をくり返し,海の特性を十分知っている日本の海軍だった…というわけだ。
     著者はいう。

    結局,日本海海戦の勝利は奇跡ではなく,日本は勝つべくして勝ったのす。「神話」として祀り上げず,なぜ勝てたのかをより理性的に分析していれば,三十余年後,中国などを怖れるに足らずと泥沼の戦争に突き進んでいった歴史は,少しはちがうものになっていたかもしれません。(本書,214ぺ)

     歴史を科学の目で料理し直す。好奇心を刺激してくれます。

  • 前作は、オーディオブックで聞いた。
    今回は、紙の本で読んだ。
    3ヶ月近くかけて読んだので、読み初めの頃の話しは、忘れたし、前作と内容がごちゃごちゃになってしまった。
    でも、歴史の事実として伝えられていることを、データで検証し、実際にはこうだったのではないかと新しい歴史の姿を見せてもらえて、とても面白かった。
    改めて、日本人の勤勉さと、技術力の高さを知ることができた。
    しかし、その勤勉さ、技術力の高さゆえに、一部の人間かもしれないが、驕りが生じ、日本の歴史を良からぬ方向へと導いてしまったことも一度ならずあり、残念でならない。
    謙虚でありたいものだ。

  • 船の専門家が日本史の謎に挑む、シリーズ第二弾。
    今回は、邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦!

    第1作では、なぜ船の専門家が?と思ったが、日本は周りを海で囲まれ、移動には船の力が欠かせない。
    だから、古文書などの資料の他に、その道の専門家の視点で歴史を探る試みは非常に新鮮だ。
    歴史学者、また、読者共に新しい知見を得られるように思う。
    餅は餅屋とはよく言ったもので、斬新なのに思いつきではない内容はとても好ましい。

    邪馬台国は今でもどこにあったかわからない。
    しかし、翡翠と鉄の道という運搬航路や、日食、対馬海峡の様子などを合わせてみたときどこが妥当か…とした表は面白い。
    自身で検証した結果、合理的解釈が、結局元の論争と同じくなるのは邪馬台国の不思議というべきか。
    それともそんなものはとっくに検証済みで、私や著者が知らないだけだったのか。

    日本海海戦は、まさに船の専門家らしい取り上げ方だ。
    波の高さを求めるSMB法など、耳慣れない計算式もあるが、船速、加速度などから砲撃の有効性を叩き出す…とは…。
    また、兵站や石炭の問題も同時に考察しており、この辺りはこれまで読んだ歴史関係の書籍ではなかなか見られない。
    さらにさらに、フジツボなど海洋生物の付着を検討、なんて、歴史学の本では見たことがない!
    歴史は歴史学者だけのものではない、と思わされる。
    前作よりさらにわかりやすく、読みやすくなったようにおもう。

  • 昔の出来事を現代の科学知識でもって事の真相を究明しようという本。今回は邪馬台国・秀吉の朝鮮出兵・日本海海戦。
    日本海海戦は軍神東郷元帥の丁字戦法により勝利したとされている。しかしそもそも丁字になっているかどうかも微妙であり、勝因は別にあるという。まず石炭。当時の巨大戦艦がどれほど大量の石炭を消費するか。露の軍艦は日本に来るまで日英同盟のせいで寄港できる港が限られ、ありとあらゆる場所に石炭を積んでおり、その大量の石炭積載作業で水兵は疲弊。訓練もできず練度が悪かった。過積載とフジツボ等の付着により速度は上がらず。対する日本は開戦前に石炭を海中に投棄するなど地の利が大きかったことを上げている。25センチ以上の口径による命中率が日本0.1露0.035という差。日本は艦橋で測距儀と計算尺で方位と距離を出して各砲に伝えるといった管理手法も進歩していた。
    日本のモノづくり技術のすばらしさは、西洋伝来の鉄砲を入手後1年で複製を作れるほど昔から高かった。そのような力が先の大戦敗戦後23年で世界第二位のGNPとなった大きな理由だろう。しかし2010年にGDPで中国に抜かれ、2028年にはインドに抜かれる予測。この低迷を著者は日本が科学の基礎研究を軽視していることも大きな要因だと書いている。

  • 前作が結構面白かったので新作も図書館で借りて読了。ご自身の強みは船舶の知識というところを踏み外さない安定の展開で、びっくりするような説は出てこない代わりにトンデモまではいかないのも前回ご同様。今回のお題は邪馬台国、秀吉朝鮮出兵、日本海海戦東郷ターン、の三つである。
    まず、邪馬台国は糸魚川の翡翠の話が導入だったので邪馬台国北信越説が出てくるのかと思ったが結論は無難なところに着地していた。日本海回りというのも特に目新しいわけではなく、瀬戸内ルート否定の根拠も若干弱いように思う。百舌鳥・古市古墳群へのアクセスは瀬戸内航路だったとも言われているし、この辺の検証を期待したい。
    秀吉の朝鮮出兵は、最近はやりのスペインとの関係を含むグルーバル視点が導入されているが、やはりもっと他の要因が複雑に絡み合い、秀吉の判断力の衰えとか周りの忖度とかもないまぜになっての出兵だったと思う。もちろん一因としては面白いのだが……。亀甲船の考察も「実在したようだ」レベルで、不完全燃焼感がある。
    それらに比べると、東郷ターンの実際の有効性の検証は面白かった。丁字戦法という単純な陣形だけで勝敗が決まるというのは直感的に眉唾な感じがするので、長距離航行における兵站や海生生物の付着の問題など、船の専門家ならではの説明が入るのがやはりこの著者の醍醐味だと思う。
    総じてまあそこそこ面白かった……と思う。第三弾がでて読むかどうかは微妙。

  • 前作に引き続き、船の専門家が歴史の謎に迫る本。今回は邪馬台国がどこにあったのか、秀吉と亀甲船、日本海海戦。
    日本海の翡翠と鉄の交易、卑弥呼が没した時の日食による分析、桃太郎伝説と百済の王子・温羅、対馬海流から但馬経由で近畿説。亀甲船のリアルな図面からCGで復元。東郷ターンからの丁字戦法は航跡を見ると並走で戦法が成功したとは言えないこと、バルチック艦隊はフジツボなど海洋生物が大量に付着していたのと石炭の過剰搭載で速力が大きく低下していて戦闘力は連合艦隊の半分ほどであったこと。

  • 今作も興味深く読めた。知らない歴史的事実(世界一の鉄砲保有など)も多い。

    著者が言う、基礎研究だけでない、独特な「ものづくり」文化が日本の強み、という結びのことは重い。

  • 技術者視点で日本史を解き直す。ブルーバックスならではの素晴らしい視点。好調につき第二弾!

    前著は事の他好評だったらしい。早速の第二弾。
    今回のテーマは邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦。

    前著に引き続き、造船技術者だった筆者の技術的な視点から歴史の謎を解き直す企画。

    邪馬台国については当時の船の状況や潮流の複雑な瀬戸内海より日本海航路の方が容易に航海できたことなど具体的に実証していく。

    朝鮮出兵については日韓双方まだまだ研究は少ないが亀甲船と日本の補給の状況について定説に疑問を投げかける。

    日本海海戦では奇跡の大勝利を日露の艦船の構成などから再検証する。

    ブルーバックスから歴史書、というところが実に面白い。知的好奇心大満足の一冊であることは間違いない。

    これだから止められない。講談社ブルーバックス万歳!

  • 日本史をサイエンス、特に船の視点から分析した一冊。

    前回に引き続き、今までにない視点で面白かった。

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著者プロフィール

三井造船本社にて長年、船舶の基本設計を手掛け、流氷砕氷船や半潜水型水中展望船を開発、船の3D イラストレーションを製作する「SHIP 3D Design 播磨屋」を主宰、著書に『日本史サイエンス』(講談社)がある。

「2021年 『最新科学で探る日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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