- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065290002
作品紹介・あらすじ
俺は「消えるボール」で人を殺した。
記憶障害により全てを忘れてしまった天才投手・矢神大は、ある日、昔の自分が書いたノートを発見する。そこには失われた豪速球の投げ方と、奇妙な殺人の告白が書かれていた――。
あのストレートを、もう一度投げるんだ。失くしてしまった自分を取り戻すために。
東京ティーレックスの絶対エース・矢神大、失踪――。日本中が大騒ぎになる中、ブルペンキャッチャーの沢本拓は、わずかな手がかりを頼りにハワイへ飛び、ホームレスになっていた矢神を発見する。矢神は記憶障害に陥り、ボールの投げ方を忘れてしまっていた。何とか再起させたいと願う沢本、だが球団は矢神に戦力外を通告する。
そんなある日、矢神は自宅の地下で手書きのノートを見つける。そこには自分の投球技術に関する詳細な記録と、奇妙な告白が書かれていた。矢神が昔投げて、人を殺した「消えるボール」は封印する、と――。
矢神の豪速球は復活するのか。そして、殺人の告白に隠された驚くべき秘密とは。
感想・レビュー・書評
-
記憶を失くしたプロ野球選手の矢神大。
リハビリ先のLAから失踪し、ハワイでホームレスになっているところを球団のブルペンキャッシャー・沢本に発見される。
記憶を失くし、投球方法も忘れてしまった矢神を球界に復帰させるべく、沢本は奔走する。
しかし、矢神には高校時代に消えるボールで人を殺した容疑がかけられていた・・・
球団の支配下にある投手が失踪し、記憶を失う・・・何とも奇想天外な設定だが、これが面白かった!
投球術の描写も細やかで、映像が頭の中に浮かぶよう。
高校3年で甲子園で活躍し、一躍時の人となり、プロになっても160キロを超えるピッチャーとして、勝率も8割を超えるなんて、実際にこんな選手がいたら、どんななんだろう?
打者の手元でホップするストレートの描写は、金農旋風を巻き起こした時の吉田投手のギアが上がった時のストレートを思い出す。
本当に投球の描写だけでもワクワクが止まらないのに、球団の見栄から矢神をプロ野球界から追放した球団に反旗を翻したオールスター1位の選出も胸が熱くなった。
それだけでも十分なのに、きちんと過去の殺人事件の真相も描いているし、救いのあるラストで十分読みごたえのある作品だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これは面白いぞ。記憶をなくした天才ピッチャーがかつての仲間であるキャッチャーとタッグを組んで復活を目指す。それに加えて消えるボールというフレーズと人を殺した、という文言も登場する。この展開がもうワクワクするが作品に沿ったハードボイルドな読み口が絶妙にあって物語に色を付けてくれる。ミステリー的には気になる面もあるしオチも予想外すぎてアレなのだが野球好きを楽しませようとする小ネタが随所に挿まれていてエンタメとしては最高に楽しい。後、半ばに出て来る投球理論は一読の価値あり。正しいかどうかは別として新しい側面だ。
-
<脳>
またまた本の雑誌の『新刊めったくたガイド』で二回続けて紹介されてた奴。そのうち一回はわれらが北上目黒次郎考二さんの推薦。これは読まねばなるまいて。
予想通りに,これはむちゃ凄く面白い作品なのであった。おまけに又もや,先に読んだ本と繋がる現象まで現れてしまった。物語の謎(ミステリ部分)の本質に触れてしまうので具体的には書けないが,本書の主人公は,僕が先日まで述べ7日間を掛けてやっと読み終えた奥田英朗の『リバー』に登場する,ある人物の人格(ここポイント!)と同じなのであった。
この僕的現象は絶対に偶然である。僕が『リバー』の次に『剛球復活』を読むなんて僕自身にだって分からなかったんだから。いやはや読書とは本当に面白き趣味なり。
今回にわか素人書評家気取りの僕は,この作品に新しいジャンル名を付ける。それは『スポーツ根性ミステリ感動家族愛小説』 なんだ今まであったジャンルの寄せ集めじゃないか,という声も聞こえて来るが,その寄せ集めでこんなに面白い作品が出来あがったのは,おそらく世界初だろう。あ,またも高言すまぬ。 -
2023-21野球のスーパースターの物語。過去の背景が想像での語りとなっているからか、刑に服する姿勢にも釈然としない。文体は読みやすく破綻もないけど、最終盤での種明かしと違う展開が良かったかも。
-
野球の話だから、面白くないことはないと思っていたが、これ程とは。さしずめ野茂がモデルなんだろうなという野球の部分は当たり前に詳しく面白く、最近流行りの回転数とかの話も出てきてなるほどなと思わせながら、一方で、設定はありきたりの殺人事件なんだけど、主人公の造形描写にあんな捻りがあったとは…
この作家もまた、別の著書も読んでみたいな。 -
ピッチングに関する理論描写がすごい。