- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065291856
作品紹介・あらすじ
世界文学の旗手が紡ぐ、初の連作長篇三部作、完結!
響きあう言葉とともに地球を旅する仲間たちの行方は――。国境を越えて人と人をつなぐ、新しい時代の神話
ヨーロッパで移民として生きるため、自家製の言語「パンスカ」をつくり出したHirukoは、消えてしまった故郷の島国を探して、仲間たちと共に船の旅に出る。一行を乗せた船はコペンハーゲンからバルト海を東へ進むが、沿岸の港町では次々と謎めいた人物が乗り込んできて――。
言葉で結びついた仲間たちの、時空を超えた出会いと冒険を描く、多和田葉子の新たな代表作。
『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』に続くサーガ、ついに完結!
感想・レビュー・書評
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とても楽しかった前2作の、そのおもいでのまま読了した。この物語に確かに魅了されたのに、どこがどう素晴らしいのかは言い表せない。何々みたい、と例えることができない無二の軽やかさに引き込まれたのは確か。じぶんが賢くないことにコンプレックスを持っている、それでも「読みたい」とおもう気持ち。それをいたずらっ子のような表情を見せながら歓迎してくれたこの作品は、文学に対するハードルも下げたかもしれない。おもしろいかはわからない。変わりに残りの頁数がどんどん減っていく楽しさがあった。神話であるから、なにも不思議はない。
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『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』の続編。hirukoの失われた故郷を探して船旅をすることになった一行。今回は1冊まるまるずっと船の上。寄港地で観光したり、船上で他のグループと交流したりしつつ、章ごとに6人の登場人物のそれぞれの視点で物語は進行していく。
人間関係上の大きな変化としてはhirukoとクヌートがついに一線を越えちゃったことでしょうか。クヌートに好意を抱いてる風だったアカッシュは失恋。前回で性格悪くなっちゃったナヌークに、相変わらず執着しているノラ。そして謎の多かったsusanooにもちょっと人間味が出てきた。彼は船上で出会ったクシナダヒメ(と彼とhirukoが名付けただけで日本人ではない)に求婚する。
大きなテーマとしては言語と故郷の話だと思っていたけれど、ここへきてhirukoが、国(故郷)が無くなったとしても自分自身が「家」になると言い出すにあたり、大きな転換期が来たのかもしれない。生まれた国も母国語も大切なアイデンティティではあるけれど、究極最後に残るのは自分という個人しかない。自分自身が家であり舟である。
ところで途中で突然『ブリキの太鼓』のオスカーが出てきた。なにを象徴していたのだろう。そして物語はまだまだ続いていきそう。 -
祖国(恐らく日本という設定)が消失してしまい欧州に残されたHirukoが、出会う人たちと共に東へ向かう物語。各登場人物の視点からの話が入れ替わりながら綴られていくが、それが流れを途切れさせているような気がして読みにくかった。そのためか、所々で重要な示唆があるものの、全体的に何を言わんとしているのかわからなかった。
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国、故郷、言語、母語、民族、旅、人種、国旗、国際交流、戦争、児童労働、仲間、、、
多和田葉子さんはドイツ語で書いて、日本語翻訳したのかしら?
日本人の顔が時々のぞくのが面白い。
『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』と三部作。 -
三部作最終巻。
Hirukoたち6人の旅はどこに辿り着くのか。
船に乗り込み港港を巡る。
読んでいるあいだ、国、国境、言語、アイデンティティについて思考が巡る。
それが楽しい。 -
ふだんは評価自体をつけないことにしているけれど、この三部作はもう、今年の私のベスト本なので、つける。私はHirukoがとても好き。Hirukoは真剣に真剣に自分の言葉を紡ぐ。そうすることが、明日の見えない旅をひたむきに生きる彼女を支えている。私にはHirukoがまぶしいし、勇気ももらった。私も私のパンスカを紡ぎたいとずっと思ってきた。
言葉以外の角度からもいろんなことを感じられる作品だと思うが、私の感想は、やっぱりこれになる。
言葉のままならなさ、難しさに打ちひしがれても、言葉を慈しみたいと願い、自分にフィットする言葉を探しながら生きている人は、ぜひ読んでみてください。
https://www.harpersbazaar.com/jp/lifestyle/social-issue/a42743030/behind-the-epic-trilogy-saga-230202-hbr/