- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065296295
作品紹介・あらすじ
第165回直木賞候補作、第34回山本周五郎賞候補作。「本の雑誌」2021年上半期ベスト10で第1位!
第9階野村胡堂文学賞、第15回舟橋聖一文学賞、第11回「本屋が選ぶ時代小説大賞」をそれぞれ受賞。
美しく生きるとは、誇りを持ち続けるとは何かを問う、正統派時代小説。
神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。50歳を前にして妻を亡くし、
さらに息子をも事故で失い、ただ倹しく老いてゆく身。残された嫁の志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、
寂寥と悔恨の中に生きていた。しかしゆっくりと確実に、藩の政争の嵐が庄左衛門を襲う。
「心が洗われる」というのは、こういう感覚を言うのだと実感した。ーー作家・江上剛(朝日新聞6月5日)
この人がこれから作品をどんどん出していくのがドキドキするし嬉しい。すごい時代に立ち会っている気がする。
次回作も必ず読みたい! ーー北上次郎(YouTube「北上ラジオ」)
誰でも歳を取れば、違う生き方もあってのではとの悔悟を抱くもの。
その迷いにどう向き合うか。考えさせられた。ーー記者・佐藤憲一(読売新聞1月19日)
私は、作者がこれからの時代小説界をリードしていく存在になることを信じて疑わない。
ーー縄田一男(産経新聞2/21)
美しい物語だ。穏やかで、静かで、そして強い物語だ。ーー大矢博子(「小説すばる」3月号)
生きることの喜び、悲しみ、諦め、希望をすべてのみ込んだ時代小説ーー内藤麻里子(毎日新聞2/7)
主人公もさることながら脇の人物たちもよく書き込まれ魅力がある。ーー川本三郎(毎日新聞2/20)
人はどう生き、どう老いていくべきかの指針となる。(紀伊國屋書店仙台店 齊藤一弥さん)
全日本人に読んでほしい。(旭屋書店池袋店 礒部ゆきえさん【ダ・ヴィンチニュース3月6日】)
心情が清らかに流れ続けながら、激動の大河浪漫があり、心奪われました。ずっと浸っていたいこの至福の感覚を、
たくさんに人に味わってもらいたい。(うさぎや矢板店 山田恵理子さん)
様々な制限の中で生き、迷いながら歩み続け、心のわだかまりが少しずつ溶ける有り様に、自分の心にも穏やかな風が入り込んだ。
時代小説のすばらしさを感じた。(正文館書店本店 鶴田真さん)
厳しい現実を突き付けながらも生きることの温かさと優しさを感じさせてくれる。(くまざわ書店錦糸町店 阿久津武信さん)
感想・レビュー・書評
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架空の神山藩を舞台にした江戸時代のこの物語は今までに読んだことのない文章の美しさがあった。江戸から離れた村の景色、季節のうつろい、村人や武士たちの生活、それぞれの描き方が実に美しい。主人公の描く絵が褒められたのと同じ言い方なら見事という他ない。
ストーリーは小さな出来事の積み重ねだが、少しの謎が次の話の伏線となって繋がってゆく展開もゆったりとしながら時には先を急ぎたくなるような、しかしそこでこの美しい文章を味わいたい気持ちが強くなって留まる、何か時代小説を読む楽しみを改めて感じさせてくれたところがある。
郡方という役回りはよく知らなかったが、藩の中で地道に生きてゆく主人公、その人柄もこの文章が表しているのだろう。続きのシリーズもまた読んでみることにしよう。
それにしても蕎麦がうまそうだった。食べ物の描き方もいい。志穂が書いた絵の雰囲気もなんと無く伝わってくる。しみじみと味わい深く小説を楽しめてよかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
描かれる一つ一つのエピソードが、長短さまざまな起伏を持って収斂していくような、複雑な設計図に基づく小説という感じがする。構成の技巧というべきか。
登場人物も数多く、それぞれに背景とキャラクターを明確に与えらえてもいる。こういう人物が出てくるだろう、と予想しながら読むと、予想に違わず、出てくるし。 -
庄左衛門さんは、反省したり、悩んだり、忖度したりする凄く普通の人。それが凄く良かった。
「人などと申すは、しょせん生きているだけで誰かのさまたげとなるもの」
「されど、ときには助けとなることもできましょう……均して平らなら、それで上等」 -
「神山藩シリーズ」の第1作を、遡って読んだ。
これは傑作だ。端正で上品な時代小説。ミステリー的要素もあり、娯楽性も申し分ない。
主人公の高瀬庄左衛門が50代なので、深く感情移入してしまった。
砂原浩太朗氏の小説には、「ここぞ」という決め台詞がある。私が本作から選ぶなら、
「選んだ以外の生き方があった、とは思わぬことだ」
とか、
「人などと申すは、しょせん生きているだけで誰かのさまたげとなるもの」(中略)「されど、ときには助けとなることもできましょう……均して平らなら、それで上等」
あたりか。 -
主人公が初老のオジサンで、剣が強いわけではなく、頭脳明晰というわけでもない。歳の割には、意外ともてるけど、どっちかというと小心者というところが、親近感が持てる。最終的に、大きなことを成し遂げたわけではないのに、なんか、凄い人物のように思えるのは、作者の筆力だろう。
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穏やかな物語ながら、悲喜変転目まぐるしく、楽しみながら一気に読み終えてしまった。
物語は神山藩という架空の藩の片田舎、郡方として生きる一人の武士の話なのだけど、読者は読み始めて早々に、主人公は妻に先立たれていたことを知らされ、しかもそこから一人息子を失い、息子の嫁も去り、世話人も去り、たった一人になってしまうのだから、読み始めから呆然としてしまう。
主人公は決して万能ではないし、敵も巨悪というわけではない。主人公も、そのほかの人物も、敵さえも含めて、あり触れた人間の織りなす物語と言える。しかし巧妙に伏線が張られていて、それを評価する人も多いと思うけれど、私は無駄が無さすぎると感じた。それでも時代小説のなかでは久しぶりに読み応えがあった。オススメしたい一冊。 -
単行本で読んで何回も読みたい本だったので意を決して購入。これから先もこのような温かみのあるまったりとした時間を一緒に過ごしていきたいと思える作家。三崎亜記氏の世界と共に老後も付き合っていきたい。
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2024.03.22
筆者の特徴は風景の描写にあると思う。特に静かな情景を描くのが得手ではないかと思う。
筆者の本を読んでいると心が静まる読書は多いと思う。 -
慎ましく己の信念に従って生きること。
日々の変化の中に幸せはあること。
わかっていても小さな喜びだけを燃料に生きていくことは自分にはできない。憧れつつも自分の業の深さを再認識した。
武士の矜持、日本人が忘れている日本の心を見た気がした。 -
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