青木きららのちょっとした冒険

著者 :
  • 講談社
3.19
  • (8)
  • (12)
  • (19)
  • (8)
  • (5)
本棚登録 : 246
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065296547

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 短編集。
    ちょっと不思議且つ怖いような世界観で、どの短編にも「青木きらら」という名の人物が出てくる。名前が同じなだけで各短編のきらら達は何の関係もないが、まず、ちょっとインパクトのある名前だなと思う。
    苗字が「青木」だからこそしっくりくるというのに共感。「大久保きらら」だと何だか語感が悪い気もする(全国の大久保きららさんごめんなさい)。

    「スカート・デンタータ」が一番面白かった。スカートが痴漢の指を食い破るという過激な犯行に及ぶのに、誰もがそれを肯定している世の中で怖かった。そりゃもう履くしかないよね、自衛のためにも。夜な夜なスカートの歯をブラシで磨く人達を想像すると奇妙だが、皆がやるようになれば意外とすんなり受け入れられるものなんだろうなとも思う。

    「美しい死」も好き。「女は25歳まで」という女性の結婚適齢期をクリスマスケーキに例える表現を信奉している主人公の、推しへの思いが何とも共感しにくいが、分かる気がする。ちなみに主人公は女性で、異性を25歳までしか愛せないと言う。
    建前を語れば、いくつになっても人間は素敵と言いたい。しかし、本音を言えばやはり若い頃の肉体、つるっとした肌等は歳を取ればもう戻らないので若ければ若いほど良いと思わないでもない。主人公のように自分の思想に正直に生きていくのは良いかもしれない。
    ただ、周りに言うと反感を買うのは目に見えているから心の内で思っているだけである。その"自分だけが持つ秘密"感がまた甘美なんだろうな、きっと。

  • 青木きららが変幻自在に登場するお話が8編摩訶不思議なお話ばかり、その中でも好きなお話は「スカート・デンタータ」スカートが凶器になり痴漢の手を食いちぎると言う奇妙奇天烈なお話、なぜかスティーブン・キングの物語を想像してしまったのは私だけだろうか?
    とても奇想天外なお話をあなたも堪能して下さい

  • 藤野可織が描く女性たちが大好きです。他作家と比べるのはよくないかなと思いつつ……山田詠美や西加奈子的な女性たちほど強い訳ではなく、でも小川糸的にふわふわしてる風でもなく、江國香織や村田沙耶香の女性ほどぶっとんでる感もなく。親近感が湧く、友だちになりたいなーという塩梅の登場人物たちが好きなのです。

    収録作のひとつである「消滅」で、香港のデモや選択制夫婦別姓問題について議論を交わしつつもラオス料理に舌鼓をうつ3人の女ともだちの会話がまさにそんな感じで、ああこの塩梅わかるーーー!と頷いてしまいました。

  • 藤野可織の本を初めて読んだような気がする。
    シュールというのか、湿っぽい話がある割に手触りは乾いてて面白かった。

    「トーチカ」が好きだったな。名前を失ってゆく話。
    でもこの本の物語はぜんぶでもそういう話なのかもしれない。

    名付けることと個が失われてゆくこと。
    名前をつけるって分類するということでもある。群のなかに飲み込まれていくこと。
    スカートの話なんてまさにそうで、匿名の痴漢が忌み嫌っていた青木きららに押し流されて飲み込まれていく。グロテスクなのにやっぱり手触りはからっとしているのだった。

  • 共通しない「青木きらら」が共通する短編集。

    スカート・デンタータが好き!こんな夢みたいに苦しい話に憧れずに済む日が来ますように。こんなに苦しい話を夢見ないといけない現実がなくなりますように。視点人物の歪みと諦めと自覚に、勝ったとは決して言えない青木きららに悲しくなった。次々読みたくなって、少しずつ読むつもりが読み切ってしまった。

  • 最初、設定を理解するのに時間かかりました
    が面白かったです
    トーチカ、トーチカ2が自分には
    読みやすかったです

  • そっちはどうですか? あいかわらず最悪ですか?
    こっちはこっちでまぁまぁ最悪かな!

    無責任な暴力、すれ違う意識、のしかかる思い込み――
    8人のきららの8つの人生が照射する
    残酷でかすかにあたたかい世界の物語

    人気モデル兼女優の偽物、痴漢された女子高生、特別な日を撮影するカメラマン、推しの若き死を願う会社員……
    あちこちに現れて 誰かであり 誰でもない
    名前のない私たちみんなが
    「きらら」として生き抜いている



    世界観が分からなすぎて、第1章から読むのに苦労してしまった。そして、第1章で挫折した。もう少し我慢して読めば良かったのか…


    2023.4.9 挫折

  • 『トーチカ』『幸せな女たち』の近未来な感じが面白かった。

    作中のジェンダー観については、今読むから感じられるものがあるだろうなと思った。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00632077

    そっちはどうですか? あいかわらず最悪ですか?
    こっちはこっちでまぁまぁ最悪かな!

    無責任な暴力、すれ違う意識、のしかかる思い込み――
    8人のきららの8つの人生が照射する
    残酷でかすかにあたたかい世界の物語  

    人気モデル兼女優の偽物、痴漢された女子高生、特別な日を撮影するカメラマン、推しの若き死を願う会社員……
    あちこちに現れて 誰かであり 誰でもない
    名前のない私たちみんなが
    「きらら」として生き抜いている
    (出版社HPより)

全23件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

藤野可織(ふじの・かおり)
1980年京都府生まれ。2006年「いやしい鳥」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2013年「爪と目」で芥川龍之介賞、2014年『おはなしして子ちゃん』でフラウ文芸大賞を受賞。著書に『ファイナルガール』『ドレス』『ピエタとトランジ』『私は幽霊を見ない』など。

「2022年 『青木きららのちょっとした冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藤野可織の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×